日本広告審査機構(JARO)は2025年4月29日(火)から6月14日(土)まで、吉田秀雄記念事業財団との共催で、企画展「愛と苦情の広告史 〜あなたも広告にひとことを〜」を、東京のカレッタ汐留・アドミュージアム東京で開催している。開館時間は火~土曜の12時~18時、入場は無料。
JAROは広告・表示に関する民間の自主規制団体。広告主、広告会社、新聞社、放送事業者、出版社、インターネット媒体など中心に、消費者に迷惑や被害を及ぼすうそや大げさな表現で、誤解をまねく広告をなくし、消費者から信頼される広告を育てたいという企業が集い、1974年に設立、消費者から寄せられた苦情を、広告表現に活かしてきた。設立50周年を迎えた2024年には、寄せられた苦情を取りまとめた「苦情の50年史」(外部サイトに遷移します)を公開した。
同展は、昨年の「苦情の50年史」を中心に、江戸時代の広告までさかのぼり、広告と消費者が織りなしてきたコミュニケーションの歴史を紹介している。筆者が訪れた5月中旬、会場は校外学習で来訪した中学生の団体や外国人観光客、リクルートスーツの若者など幅広い来場者で賑わっていた。
<昔懐かしいテレビCMをゆったり鑑賞できる>
ゾーンは5つに分かれ、展示の順路と共に時代も進む。ゾーン2「テレビは、にぎやかなる窓だった。 〜電波の時代〜」では、1970~80年代にかけてのテレビCMを鑑賞できる。今ほど規制がなかった時代ということもあり、挑戦的でエネルギッシュなCMが目に付く。映像広告の幕開けを担った当時のクリエイターが、手探りながらも自由なCM制作にチャレンジしてきたからこそ、広告自主規制団体の機運が高まり、のちにJAROが萌芽する。
<壁一面の苦情の年表>
ゾーン3「苦情の50年史〜JARO50th・広告を見つめ続けて〜」は、JAROの活動に加え、発足以来寄せられた50年分の苦情を展示。代表的な苦情となる72件が、壁や天井に飾られている。
<天井には代表的な苦情がバルーンで飾られる>
最後のゾーン5「あなたも広告にひとことを」では、広告に対する思いを来場者が自由にシールにしたためる。来場者の思いは壁いっぱいに広がっていた。
<「広告への思い」を記入する来場者>
展示を巡ると、「苦情」をテーマの一つにしながらも、ハートや黄色いカラーで彩られた空間は非常に明るく前向きに感じられた。「苦情を『愛』と捉えてみよう。本企画展のロゴでも、愛と苦情を=で結んだ」と語るのは、企画発案者であるJAROの松木俊介専務理事。会場全体を見た後、松木氏に話を聞いた。
<会場を案内いただいたJAROの松木俊介専務理事>
――50周年を迎えた昨年の「苦情の50年史」、今回そこに「愛」という要素を加えたねらいは?
マザー・テレサは「愛の反対は、憎しみではなく無関心」と言いました。広告は今、無視され、スルーされ、多くの人は無関心になりつつあります。これは非常に危険な状況です。愛があるからこそ、苦情は生まれます。「もっと良くなってほしい」という広告への苦情を大切にしたい。この思いから、苦情=愛と捉えるテーマが決まりました。
<広告は苦情によって改善してきた>
――本企画展開催のきっかけは?
最近はインターネットの中で、悪質な広告が目立っており、ここ10年で広告に対する消費者の態度が悪化していることが如実です。通常、展示では受賞作品などの華やかで楽しい広告が並べられることが多いです。しかし、足元の広告がどれだけ関心を持たれていないかに目を向けるべきではないでしょうか。広告業界に対する信頼性が問われている今、広告に真摯に向き合い、襟を正したい。そこで、今までネガティブに受け止められていた苦情を主人公に、本企画を提案しました。そして、業界内だけでなく、もっとたくさんの人に見てもらいたいと思い、一般にも公開する展示という形で開催しました。
――最後に読者の方に向けてコメントを。
良い広告とは、いろいろな考え方がありますが、透明でうそのないことは前提条件です。適正な表現をしたうえで、面白い・インパクトのある・感動するものを考えなくてはいけません。広告に携わる夢を持つ若い方々にも、今後は、この意識をもって広告制作に携わってほしいです。
いただいた苦情があって、広告は良くなっていきます。エネルギーの要る大変なことかもしれませんが、広告への苦情がありましたら、JAROへご連絡ください。
「愛と苦情の広告史 〜あなたも広告にひとことを〜」
主催:公益財団法人 吉田秀雄記念事業財団
公益社団法人 日本広告審査機構
会期:2025年4月29日(火)~6月14日(土)
会場:アドミュージアム東京 企画展示室(Hall B)
東京都港区東新橋1-8-2カレッタ汐留
開館時間:火~土、12:00~18:00
*状況により開館時間、曜日が変更になることがあります
休館日:日曜、月曜(ほか不定休あり)
入場料:無料