民放連研究所「テレビの広告効果に関する研究」第3回調査結果を公表

井川 智宏
民放連研究所「テレビの広告効果に関する研究」第3回調査結果を公表

民放連・研究所では、テレビの広告効果を主にインターネット広告との関係性において、可能な限り定量的に分析し、明らかにするため、2019年度より「テレビの広告効果に関する研究」に取り組んでいる。

2019年度に実施した第1回調査では、関東1都6県の1569歳の男女(ビデオリサーチのVR Cubicのパネル)に実施した調査をもとに、ブランディングや購買プロセスへのテレビの大きな影響力が明らかとなった。

さらに研究を推し進め、具体的な広告キャンペーンの効果検証や客観性の一層の向上を図るべく、2020年度に実施した第2回調査では、日本アドバタイザーズ協会を通じて募集した広告主の協力を得て、3社(5商品)の広告キャンペーンの効果測定を実施。テレビCMCGMConsumer Generated Media)動画広告を中心に、広告主が通常行っているマーケティングリサーチの手法に沿った検証を実現した。

このたび2023年度に実施した第3回調査の結果がまとまったため、717日に日本アドバタイザーズ協会メディア委員会セミナーで報告した後、同25日に民放連会員社役職員を対象としたオンライン形式の報告会で調査結果を報告し、翌26日に民放連ウェブサイトで調査結果を公表した。

3回調査の概要と結果のポイント

3回調査は、日本アドバタイザーズ協会を通じて協力を得た広告主と広告会社を通じて協力を得た広告主をあわせ、計5社の7商品(キャンペーン)を対象とし、全国の1569歳の男女に対して、202310月から12月に、それぞれの商品のキャンペーン実施時期にあわせて3回に分けて調査を行った。

テレビCM接触はビデオリサーチ社の全国テレビCMデータ、動画広告(CGMSNSAVOD)についてはニールセン社のDAR(デジタル広告視聴率データを使用し、両者のデータをもとに統合リーチを算出。広告接触者の広告認知率は、統合リーチとアンケート調査による推定認知者数から算出している。

対象となる商品カテゴリーについては、第2回調査では、食品や飲料など、主として"日常的に買うもの"に該当する商品を対象としたが、第3回調査では、"日常的に買うもの"に加えて、比較的高額で購買前にじっくり吟味・検討する傾向のある耐久財(自動車)、サービス(不動産サービス)も1商品ずつ対象とした。具体的には、食品2商品、日用品1商品、医薬品2商品、自動車1商品、不動産サービス1商品である。

調査結果の概要を以下で紹介したい。

【広告リーチ】
テレビCMのリーチ(調査対象者全体に対する7商品の平均リーチ)は約67%であった一方、インターネット動画広告は約23%。両者の重複接触は平均約14%で、動画広告のみに接触している割合は平均して9%程度。動画広告接触者の多くはテレビCMにも接触していることがわかる。

図表1_広告リーチ.jpg

<図表1.広告リーチ(7商品平均)>

【認知効率と購買率】
広告の認知効率(広告がリーチしたと判定された人のうち、その広告を実際に認知していた人の比率、7商品の平均)は、テレビCMは約18%、動画広告は約10%。広告に接触した際の広告認知効率は、テレビCMの方が良い。ただし、7商品のうち2商品においては、動画広告接触者の方が広告認知効率が高い。なお、今回の調査では当該広告を「確かに見た」と回答した者を広告認知者と定義している。

購買率(広告がリーチしたと判定された人のうち、その広告の商品を購買した人の比率、5商品の平均)は、テレビCM1.1%、インターネット動画広告は2.5%であるが、両方がリーチした人は7.8%となり、両者を組み合わせることで、相乗効果を発揮し、より高い効果が示されている。

なお、7商品のうち、耐久財(自動車)とサービス(不動産サービス)については、購買者が出現する可能性が低いため、購買に関しては、耐久財・サービスを除き、5商品の平均となっていることに留意いただきたい。

図表2_広告認知率 購買ファネル効率.jpg

<図表2.広告認知効率/購買ファネル効率>

【役割の違い】
テレビCMは「認知」「興味関心」に加え、「購買意思決定」のプロセスへも大きく寄与。さらに商品を店頭で確認する行動を促す役割を果たしている。一方、インターネット動画広告は、情報検索など「検討プロセス」に貢献していることが認められた。ただし、商品カテゴリーなどによって、効果性の強弱がみられた。

【コスト効率】
今回の各商品のキャンペーンにおける実際の出稿金額をもとに、購買プロセスの接触(リーチ)から購買に至る各プロセスでの1人あたり(ユニークユーザー・ベース〔実人数〕)のCM単価を試算した。広告リーチにかかる単価は、テレビCMが3.3円に対して、 インターネット動画広告は4.4円。広告認知では、テレビCM18.4円に対して、インターネット動画広告は53.8円。テレビCMはインターネット動画広告に比べ、リーチから購買意向に至るプロセスで割安であるという結果が得られた。

図表3_コスト効率試算.jpg

<図表3.コスト効率試算>

今回の調査結果の詳細は、過去に実施した第1回調査と第2回調査の結果とあわせて、民放連ウェブサイトで公表しているのでご覧いただきたい。

最新記事