民放連の取り組み【放送の自主・自律を守る―番組審議会の目線から】③

松山 圭子、中西 正之
民放連の取り組み【放送の自主・自律を守る―番組審議会の目線から】③

各放送局がそれぞれ設置している番組審議会。その役割や意義について連載企画を通じてお伝えしています(まとめページはこちら)。 第3回目は、「民放連の取り組み」を、日本民間放送連盟「番組審議会検討部会」の松山圭子・幹事(テレビ朝日番組審査室長兼SDGs推進室)、中西正之・副幹事(毎日放送コンプライアンス局番組審議会事務局長)から紹介します。


番組審議会は「放送番組の適正を図る」という目的のため、1959年の放送法改正で各放送事業者に設置が義務づけられました。ただ、その運営方法は各局に委ねられ、誰を番組審議会の委員にするか、どういった議題を取り上げるかなどは、それぞれの局が自主・自律的に判断しています。その結果、他局の番組審議会の模様について、各局のウェブサイトで公表されている議事の概要から、どのような内容が話されたかという大筋は分かりますが、意見交換の形式や、会議進行の行い方、雰囲気などまでは想像できません。おそらく番組審議会は各社各様で、「独自に進化をとげてきた」というのが実感です。

画一的な運営をする必要はありませんが、例えば、他局の運用上の良い取り組みや反省点を共有できれば、番組審議会の運営担当者の負担軽減などが図られ、番組審議会のさらなる活性化につながり、結果として、番組の適正化がより図られるのではないかと思います。こうした考え方に基づき、民放連は業界全体の情報共有の取り組みを進めるため、2024年7月に在京テレビキー局、ローカル局、ラジオ局の委員で構成する「番組審議会検討部会」を恒常的な組織として設置しました。

設置以降、部会で取り組んだことは、以下の3点です。

① 番組審議会の運営担当者へのアプローチとしての「部会での意見交換と結果概要の共有」
② 視聴者・リスナーへのアプローチとしての「放送の自主・自律の仕組みの周知」
③ 番組審議会の委員へのアプローチとしての「番組審議会委員向け資料の作成」

①の「部会での意見交換と結果概要の共有」は、上述した部会設置の趣旨を形にしたもので、まず、各局から自社の番組審議会における運営の課題などを伺い、その課題への対応のアイデアなどについて、番組審議会検討部会の委員間で意見交換を実施。意見交換の結果概要を民放連会員社で共有する取り組みです。特に、いわゆる「番組問題」などが起こった際、運営担当者は、番組審議会でしっかりとした議論がなされるよう対応しなければなりません。今後、担当者のスキルアップにつながる情報、取り組みのアイデアなども共有できればと考えています。

次に、②の「放送の自主・自律の仕組みの周知」については、まさに、この連載企画を検討し、本年4月から掲載を開始しました。民主主義にとって最も重要な「表現の自由」を守るため、自主・自律的に番組の適正化を図る番組審議会の仕組みなどを、広く視聴者・リスナーの皆さまにお伝えし、少しでも理解醸成につながればと考えています。実は放送局の中でも、きちんと番組審議会の役割が浸透していないようにも感じています。局内においても、あらためて考えてもらう契機になればと思います。

最後に、③の「番組審議会委員向け資料の作成」は、新たに番組審議会の委員になった方を念頭に、番組審議会の意義や、法律上の位置づけなどをまとめた資料を作成し、各局で配付できるようにする取り組みです。資料を手にした委員の方々が、放送局から何を求められ、何をするのかを一目で確認できるようにすることで、スムーズに審議会に参加できたり、目的を常に意識いただくことで、より有意義な審議結果につながればと思っています。

番組審議会検討部会を設置して、まもなく1年となります。引き続き、各局の番組審議会を下支えするような取り組みを継続していきたいと思います。

次回の第4回以降、番組審議会検討部会の委員から、実際の番組審議会の模様などをお伝えします。


【執筆者紹介】

テレビ朝日 番組審査室長兼SDGs推進室
  松山 圭子(まつやま・けいこ) 
1965年生まれ。1989年テレビ朝日入社。報道局で社会部・外報部・ニューヨーク支局・映像伝送、編集資料センター長などを担当。2024年から現職。


毎日放送 コンプライアンス局番組審議会事務局長
  中西 正之(なかにし・まさゆき)
1963年生まれ。87年毎日放送入社。報道局で社会部、ドキュメンタリー制作、経済部を担当後、制作局で夕方のワイド番組、美術・CG部門のセンター長などを経て現職。新「毎日放送 放送基準」プロジェクト事務局員を務めた

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