米国でビデオポッドキャストがテレビ放送にも進出 昼帯のトーク番組の脅威に

編集広報部
米国でビデオポッドキャストがテレビ放送にも進出 昼帯のトーク番組の脅威に

米国でいまビデオポッドキャストが音声配信の枠を超え、YouTubeやNetflixなどを通じてテレビ画面上で視聴されるコンテンツへと進化している(既報)。そして、この潮流が従来のリニア放送、とりわけ昼帯のトーク番組に新たな脅威となっているという。

米オンラインメディア「Variety」が2月半ばに報じたところによると、全米のローカル局で放送されている『The Kelly Clarkson Show』と『Sherri』が2026年末までに終了すると発表された(冒頭画像は『The Kelly Clarkson Show』と『Sherri』/各番組の公式サイトから)。高額な制作費と視聴者の減少が要因とされ、これに代わる新たなトーク番組の企画は浮上していないという。長いこと一定の存在感を示してきた2番組の相次ぐ打ち切りは、ビデオポッドキャストの台頭と無関係ではないとエンタメ情報メディアの「Hollywood Reporter」は指摘している。

背景にあるのが視聴行動の変化だ。ニールセンによると2021年春から2025年にかけてケーブル視聴は4割近く減少し、総視聴に占める割合は24%。一方、米市場調査会社「Edison Research」の調査によると2015年以降、ユーザーがポッドキャストの視聴に費やした時間は355%増加し、現在は週7億7,300万時間に達している。ビデオポッドキャストの主戦場であるYouTubeでは月間で7億時間超が視聴されている。

ビデオポッドキャストは大がかりなセットや大人数のスタッフを必要としない。しかしテレビ番組は依然として高コスト構造だ。広告単価が下落するなか、番組を購入・編成するローカル局にとって大きな負担となっており、放送局は昼帯のトーク番組を減らし、コストを抑えられる生ニュースやローカル制作番組へとシフトしていると「Variety」は伝えている。

また、ポッドキャストはテレビに劣らぬ大物ゲストを呼び込んでいる。人気ポッドキャスターのアレックス・クーパーがホストを務める『Call Her Daddy』には元ファーストレディのミシェル・オバマ氏が出演し、NFLのトラビス&ジェイソン・ケルシー兄弟の『New Heights』には俳優レオナルド・ディカプリオが出演している。また、ゲストの出演時間に制約があるテレビ番組に対してポッドキャストは長時間じっくりと対話形式で語ることができる点が出演者から評価されており、新作映画のプロモーションの場としてビデオポッドキャストを選ぶ俳優も増えている。2024年の大統領選挙では選挙運動でもポッドキャストが活用された。

加えて注目されるのが、ポッドキャストがテレビに進出する動きだ。CNNはすでに外部のポッドキャストを自社アプリで配信し、低コストの対話型番組で編成上の空白を補完している。そして2月半ばには、ケーブルテレビMS NOW(旧MSNBC)が政治系ポッドキャスト企業「Crooked Media」と契約し、『Pod Save America』などのハイライトを毎週土曜の21時枠で放送すると発表した。外部ポッドキャストをリニア編成に組み込む新たな動きで、分社後の新会社「Versant」(関連既報)による低コストIP活用戦略の一環とみられる。

ローカル局グループも動いている。Sinclair Broadcast Groupが2月半ば、凶悪犯罪事件を扱う「トゥルークライム」系のビデオポッドキャスト「Criminally Obsessed」の開始を発表。Sinclairのニュース資源を基盤に、デジタル主導の対話型番組を拡充する動きだと、業界メディアの「TVTech」は報じている。「Criminally Obsessed」ではSinclairの取材網を駆使して全米で実際に起こった事件を取り上げ、毎週月〜木曜、YouTube、Spotify、Apple Podcastsなどで配信されるという。

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