ローカル局が制作し、地元で放送しているドラマの事例を紹介する第2弾。今回は、テレビ西日本、福井放送、山梨放送の3局を取り上げる。
(前回のHTB、NCC、TSKはこちら)
テレビ西日本(TNC)は、福岡ソフトバンクホークスと共同制作した『1回表のウラ』(土、17・00―17・30)(=写真㊤)を3月4日(土)から4週連続で放送している。
元ホークス選手の主人公が球団職員となって、2023年の開幕戦セレモニーを立ち上げようと奮闘する物語。開幕戦1回表の"裏側"で、どんなことが起きているのか? スタッフやその家族の想いなど、球団を支える人々の"ウラ側"を描くという意味合いをタイトルに込めた。
今年、球団創設85周年と福岡ドーム開業30周年を迎えるホークスから、周年記念事業としてドラマ制作の打診があり、同じく開局65周年を迎えるTNCも企画を提案して、制作に至った。TNCからは、編成部、制作部、メディア推進部などから10人ほどが制作に携わっている。4週にわたるホークスのオープン戦中継の直後にドラマを放送し、"プロ野球中継・スポーツ中継に強い放送局"というイメージアップに期待を寄せる。
『めんたいぴりり』(2013)をはじめとして、継続的にドラマ制作を続けているTNC。本ドラマで企画・原案を務めたTNC事業開発部長の瀬戸島正治氏は、「放送エリアの視聴者に共感・納得してもらえる題材で、方言や言い回しなど細やかな工夫をした制作ができる」とローカル局がドラマを制作するメリットを語った。
各話放送終了直後からTVerで見逃し配信を行った後、ホークス公式動画配信サービス「ホークスTV」でも配信する。
福井放送(FBC)は、福井県と共同制作した『はじめてのかがやき~北陸新幹線福井・敦賀開業1年前記念ドラマ』を、『おじゃまっテレワイド&ニュース』(月―金、15・50―19・00)内で3月13―24日にかけて17・40頃から放送している。
鉄道会社の職員と、自分を北陸新幹線と名乗る不思議な少女「かがやき」が県内各地を訪れ、県民と触れ合う中で同県が好きになり、開業への期待をふくらませていくという脱力系ハートフルコメディ。1話につき6―7分の全10話で、全話放送終了後にTVer、Huluで配信も行う。
2024年春に同新幹線の金沢―福井・敦賀間の開業を控える福井県。20年に同県から機運醸成に向けた企画の実施を持ちかけられ、FBCが連続ドラマの制作を提案して実現した。FBC制作の連続テレビドラマとしては初作品で、ビジネス企画部を中心に制作会社のスタッフも含めて、総勢約30人で手がけた。
「同新幹線をモチーフにしたキャラクターの認知度が上がれば、ドラマの世界のみならず他の番組に登場することも考えられ、コンテンツ力向上にもつながる」とプロデューサーを務めたFBCビジネス企画部の久嶋紳吾氏。「北陸新幹線延伸という福井にとって大きな転換期をテレビとローカル局の力で盛り上げたい」と抱負を述べた。
山梨放送(YBS)は、3月18日(土)の12・00―13・25に映画24区と共同で制作した『メンドウな人々』を放送する。
男子高校生と飲食店経営者のおじさんとの世代を超えた友情物語。そこに高校うどん部の活動も絡み合う。うどんをこねたり、理屈をこねたりする様子を"メンドウ"(麺道・面倒)とダジャレを交えたタイトルで表現した。同部は、山梨県立ひばりが丘高校に実在するうどん部をモデルにしている。
YBSが制作するテレビドラマとしては、『事故専務』(2011)、『カミナリワイナリー』(2014)、『セブンティーン 北杜 夏』(2017)に続いて4作目となる。
うどん部という全国的にも珍しい部活動をドラマ化して、富士吉田市の名物「吉田のうどん」を全国に発信する企画を温めていたYBS。「映画24区」社は地域と一緒に作りあげる映画「ぼくらのレシピ図鑑」をシリーズ展開しており、この中で地元食材を使った料理を毎回取りあげている。YBSは『セブンティーン――』を制作した際に同社とつながりがあったことから、今回の企画を相談し、ドラマ化が実現した。YBSからは、東京支社や本社営業企画部、編成部から11人が制作や宣伝に携わっている。
プロデューサーを務めたYBS東京支社営業部の安井一貴氏は、「人間関係が希薄になってきていると言われる昨今、人との関わりを見つめ直すきっかけになってくれたら」と期待を語るとともに、「このドラマを皮切りに他の市町村でも、映像作品を通じて一緒に地元を盛り上げる取り組みをしていきたい」と今後の展開に意欲を示した。
なお、本ドラマは2023年度中に東京、大阪、名古屋での劇場公開も予定している。