「放送人グランプリ2025」決まる

編集広報部
「放送人グランプリ2025」決まる

「放送人の会」が主催する「放送人グランプリ2025」の贈賞式が5月24日に東京都内で開かれた。「放送人による、放送人のための賞」をモットーに、同会の会員が推薦した番組を審査し顕彰するもの。24回目となる今回は民放連会員社から、優秀賞を文化放送とNRN加盟33局の『ニュースパレード』、福井テレビジョン放送の開局55周年記念ドキュメンタリー『罪の壁 危険運転致死傷罪の23年』がそれぞれ受賞。特別賞に「阪神・淡路大震災30年関西民放NHK連携プロジェクト」と、信越放送の手塚孝典さん(情報センター制作部主幹)が選ばれた。

このほかの受賞は次のとおり。
【大 賞】NHK大河ドラマ『光る君へ』
【優秀賞】NHKスペシャル『封じられた"第四の被曝"-なぜ夫は死んだのか-』
【特別賞】落合恵子さん

『ニュースパレード』は昭和、平成、令和を通じてラジオ報道の王道である「録音構成」を守り続け、ラジオ記者の育成にも貢献したことが評価された。プロデューサーの首藤淳哉さん(文化放送・報道スポーツセンター部長)は「映像では伝わらない人の心の機微も音だけのラジオだからこそ伝わることがある。AI音声などでは絶対にできない、人の思いがこもった言葉をラジオを通じてこれからも伝え続けていきたい」と喜びを語った。

『罪の壁』は福井市内で起きた交通事故の裁判結果を契機に「危険運転致死傷罪」が適用されにくい壁がなぜあるのかに迫った。2025年2月には適用要件見直しに向けた法改正の検討が法制審議会に諮問されるなど、放送の公共的な役割を再認識させた。ディレクターの武澤貴之さん(現 営業部副参事補)は「難しいテーマをいかに分かりやすく視聴者に伝えられるかに腐心した。番組に携わった3人は完成と前後して他部署に異動となったが、ここでの経験を活かして地域放送の意義を考えていきたい」と述べた。

「阪神・淡路大震災30年関西民放NHK連携プロジェクト」は、震災の記憶と経験を継承するために関西の民放6社とNHK大阪が連携して若手の勉強会やフィールドワークを重ねている。若手代表として登壇した読売テレビ放送報道局の佐藤翔平さんは「一人でも多くの命を救いたい。そんな思いで、これまで各局レベルで伝承されてきた知見なども共有しながら、今年も訓練などの活動を続けていきたい」と意欲を語った。

信越放送の手塚さんは20年以上にわたる満蒙開拓の当事者へのインタビューなどを通じて、被害と加害の問題に向き合ってきた。24年に放送された『沈黙の奥底~河野村分村が問いかけるもの』では集団自決を遂げた開拓団の送出責任に苦しみ、自害した村長の心の軌跡に迫った。手塚氏は「歴史の教科書でも取り上げられることのないテーマですでに12本の作品をつくってきたが、いま13本目と14本目にとりかかっている。語ることは当事者にとってつらいことだが、それを受け取った立場としてその責任を果たして伝え続けていきたい」と話した。

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<左上から優秀賞を受賞した『ニュースパレード』『罪の壁』(上段)、『阪神・淡路大震災30年関西民放NHK連携プロジェクト』の各スタッフと、特別賞の手塚孝典さん(下段)>

また、ドラマの若いクリエーターを表彰する「大山勝美賞」も同日表彰され、TBSテレビの『アンチヒーロー』『御上先生』などを手がけた飯田和孝さん(プロデューサー)と、日本テレビ放送網の『ブラッシュアップライフ』『ホットスポット』などを制作した水野格さん(ディレクター)がそれぞれに喜びを語った(写真㊦/左から飯田さん、水野さん)。

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受賞一覧や選考理由の詳細は同会のウェブサイト(放送人グランプリ大山勝美賞/外部サイトに遷移します)にて。

なお、放送人の会は5月24日の理事会で今野勉会長が退任し、新会長に矢島良彰氏(制作会社テムジン創業者・プロデューサー)を選任した。

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