2024年度に放送されたテレビドラマの脚本を対象に、優れた作品を執筆した作家を表彰する第43回向田邦子賞が4月23日に決まり、朝日放送テレビの連続ドラマ『マイダイアリー』(24年10~12月、テレビ朝日系で放送)の兵藤るりさんが受賞した。『マイダイアリー』は社会人1年目の主人公・恩村優希(清原果耶)が些細なきっかけで過去の大切な思い出を振り返るという構成。大学時代をともに過ごした仲間たちとの何気ない日々とそのつながりを細やかに描いた。
この日、東京都内で行われた記者発表では選考委員を務めた同賞の歴代受賞者でもある先輩脚本家から、
「日記を書くような自然な文体は本当に実力がある人にしかできない。替えのきかない作家性がある」(大森寿美男氏)
「丁寧に描き込まれた日常。一見小さな作品に見えるが、そこには作家としての大きな意志と決意を感じる」(岡田惠和氏)
「ひとつひとつの言葉からは役者やスタッフへの信頼を感じる。台本を受け取った作り手たちはうれしかったに違いない」(大森美香氏)
「台本力に深く心を動かされた。小さい世界の、大きなシナリオだ」(井上由美子氏)
「審査中、あの場面やこの場面を思い出しながら、『最近の若者は...』と選考委員一同で大いに会話が弾んだ。これがテレビドラマ本来の役割ではないか」(坂元裕二氏)
――と賛辞が相次いだ。選考委員の満場一致で決まったという(冒頭写真は左から大森寿美男、岡田、受賞した兵藤、大森美香、井上、坂元の各氏)。
兵藤さんは東京都出身の28歳。お茶の水女子大学理学部数学科を4年生で中退し、東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻脚本領域に進む。最も影響を受けたドラマは『Mother』(日本テレビ、2010年、坂元裕二脚本)、『すいか』(日本テレビ、2003年、木皿泉脚本)。2020年に『就活生日記』(NHK)で脚本家デビュー、主な作品に『それでも愛を誓いますか?』(朝日放送テレビ、2021年)、『恋に無駄口』(同、2022年)、『わたしの一番最悪なともだち』(NHK、2023年)がある。『マイダイアリー』はオリジナルの連続ドラマとしては2作目。
歴代最年少で受賞した兵藤さんは「実績のある方が受賞すべきで、私のような若僧が......と思う方が自分も含めて(笑)、いらっしゃるはず。でも、今日だけは胸を張ろうと思います」とあいさつ。「私自身に、というより、放送後にSNSで温かい励ましを寄せくださったり、脚本を信じて演じきっていただいた役者さんやスタッフ全員が受け取るべきもの」と喜ぶとともに、「少子化や小中学生の自殺......何かと理不尽な世の中だからこそ、それに抗うような作品をつくり続けたい。これからの子どもたちに何ができるかを考えるのが、社会の一員としての役割」と抱負を語った。
同賞は、故 向田邦子さんの脚本家としての功績を称え、テレビ界を支える優秀な脚本家を称揚する目的で1982年に制定。向田邦子賞委員会と東京ニュース通信社が共催している。これまでの歴代受賞者などの情報はこちら(外部サイトに遷移します)。