米公共放送公社CPBが58年の歴史に幕 政府助成金打ち切りで

編集広報部
米公共放送公社CPBが58年の歴史に幕 政府助成金打ち切りで

米公共放送公社(Corporation for Public Broadcasting=CPB)が解散する。1月5日のCPB理事会で決まり、58年の歴史に幕を下ろすとになった。2025年からトランプ政権下で進められた政府助成金の打ち切りに伴うものだ。CPBのパトリシア・ハリソンCEOは「資金が途絶えたまま組織を存続させ、さらなる政治的な攻撃や悪用にさらされるより、解散することで公共メディアの健全性を守ることにした」との声明を発表。理事会のルビー・カルバート議長は「理事会には組織を存続させる手段が残されていなかった」と無念をにじませた(冒頭画像は解散を伝えるCPBのウェブサイトから)。

共和党主導の連邦議会が2025年、会計年度で向こう2年分が確保されていたCPB向け助成金約11億ドル(約1,750億円)を撤回した(既報)。復活の見通しが立たないなか、CPBは2025年8月に業務停止を表明し、会計年度末(9月30日)以降は移行チームによる整理作業を進めてきた(既報)。職員数は約100人規模とされる。

CPBは1967年に制定された公共放送法に基づいて連邦議会によって設立。公共放送への政府助成金を、政治から一定の距離を保った形で受託・配分する中核機関と位置づけられ、全国ネットワークとしてのPBSやNPRをはじめ1,500を超える各地の公共ラジオ・テレビ局の独立性と財政的な基盤を支えてきた。世界で人気の『セサミストリート』もCPBの資金援助で成り立ってきた(現在はNetflixで継続中)。政府助成金の約70%は全国ネットワークではなくローカル局に直接配分されてきた。助成金を失ったことで財政基盤の弱い一部のローカル局では閉鎖や独立に踏み切る動きも出ているという。

今回の解散で米国の公共放送制度そのものが岐路に立たされることになった。CPBは今後、解散までに残余資金を分配するとともに、米国公共放送アーカイブ(American Archive of Public Broadcasting)のコンテンツデジタル保存事業を支援する。CPB独自のアーカイブはメリーランド大学で保存され、一般公開される予定だ。また、CPBはPBS向けに番組を供給している大手シンジケーターのAPT(American Public Television)に290万㌦(約4億6,000万円)の助成金を交付し、APTが基金を設立してローカル各局における番組制作や配信を支援する。

ハリソンCEOは声明で「健全な民主主義に公共メディアは不可欠」と述べ、「その価値を将来の指導者やその世代が認識し、独立性を守り、信頼できる公共メディアを引き継いでほしい」と語っている。カルバート議長も「それでも公共メディアは生き残る。新たな議会がその役割に向き合っていくと確信している」と将来への希望をつないだ。

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