米国でFASTチャンネルが続々と 配信とリニアの接近さらに

編集広報部

米国で近年、メディアグループがFAST(Free Ad-Supported StreamingTV)チャンネルを続々と新設している。この広告付き無料ストリーミングサービスのチャンネル群の充実で、配信経由の視聴がリニアのそれに近づいていると米各メディアが報じている。コムキャストとチャーター・コミュニケーションズが共同開発した、リニアと配信のハイブリッドデバイス「Xumo (ズーモ)Stream Box」も、チャーター社のインターネット/ケーブルテレビ部門「スペクトラム」がこの夏に正式導入して*¹以来、その市場を広げている。コムキャストのインターネット/ケーブルテレビ部門「Xfinity」も12月から同様に、自社のインターネット契約者向けにXumo Stream Boxを無料で提供を始めた。 

米オンラインメディアのバラエティ誌によると、今年の夏時点でFASTサービスのうち400チャンネル以上を擁するのはLocal Now、Plex、Rokuチャンネルの3つ。わずか18カ月前にゼロから始めたサービス群だ。これに、Sling Freestreamが398チャンネルで迫り、さらにPluto TV、Samsung TV Plus、Xumo Playが300以上と続く。Amazon FreeveeとVizio WatchFree+も急速に追い上げている。 Amazon Freeveeは、12月5日にワーナー・ブラザーズ・ディスカバリー(WBD)から16のFASTチャンネルを追加し、さらに21チャンネルを年明け早々に追加する予定だ*²。 

また、COXメディアグループは12月1日からローカルニュースのFASTチャンネル「Neighborhood TV(NTV)」の配信をXumo Playで開始した。NTVはCOXが今年8月リニアチャンネルの延長線上との位置づけで開設したFASTチャンネルで、現在ジョージア州アトランタとノースカロライナ州シャーロットのニュース配信を行っている。Xumo Playに搭載することで、今後カバーエリアを徐々に全米に広げる計画とのことだ。

Xumoサイドも、これでさらに勢いがつく。「全米・ローカルのニュースチャンネルはXumoのプラットフォーム上でアクセス数のトップを誇る。ローカルコミュニティに徹したNTVのニュース報道はXumoのニュースチャンネルの重要なコンテンツになるだろう」とコメントしている。

さらに、アレン・メディアグループの無料ニュース配信サービス「Local Now」にも11月28日、新たに立ち上げた「Time FASTチャンネル」が追加された。同チャンネルはタイム誌のデジタルビデオ部門による全米ニュースとエンタメを配信するもの。ローカルニュース、天気、スポーツ、交通情報、映画などに加え、タイム誌によるインタビューやドキュメンタリーも配信するという。

Local NowはFASTサービスのトップ3の一つで、全米225以上のテレビ市場で各市場のテレビ局が制作するローカルニュースを無料配信している。カバーする全テレビ市場で、独自のLocal Nowチャンネルを提供し、全部で450以上の無料チャンネルを提供している。

こうした動きを米メディアは、有料TV事業者がネット経由でのテレビ視聴サービスにシフトしていることを示すものだと伝え、今後も増えるとの見方を示している。


【「民放online」関連記事】

*¹【消費者からみた米テレビ視聴の現実】 コードカットとコードネバーってなんだ? それに拍車をかけるディズニーとチャーターのすったもんだ(佐々木香奈、2023年9月26日掲載)

*² 活気が戻りつつあるMIPCOM 2023①~コンテンツビジネスの再編を実感
(稲木せつ子、2023年12月22日掲載)

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