【最優秀受賞のことば】CBCテレビ 評価不能γ ワクチンの影(2025年民放連賞テレビ報道番組)

有本 整
【最優秀受賞のことば】CBCテレビ 評価不能γ ワクチンの影(2025年民放連賞テレビ報道番組)

このたびは「評価不能γ(ガンマ) ワクチンの影」で、テレビ報道番組最優秀という栄えある賞をいただき、感謝申しあげます。報道に携わる者として、これ以上ない喜びであり、同時に身の引き締まる思いです。

是非が定まっていない事柄で、あえて少数派の側に立ち掘り下げていく。今回の一連の取材と、そのまとめである拙作はまさにその作業でした。パンデミックの中、救世主として登場した新型コロナワクチン。「打って、打って、打ちまくれ」(ある自治体首長の発言)の大号令の下で、過去最大規模の集団接種が進められました。接種なしでは行けない場所、できない仕事も増え、私たちマスコミも連日、いつ追加が入る、どこでなら並ばずに打てる、と接種を後押しする報道をしていたのも事実です。しかし内心「本当に安全なのか」と疑っていた人も少なからずいたのではないでしょうか。

特にこの新しいワクチンに対しては、ウイルスの遺伝情報=メッセンジャーRNA(mRNA)を体内に入れる技術そのものに一抹の疑念を持っていました。過去の研究で、過剰免疫などの課題が指摘されていたからです。果たしてチームで取材を始めると、ワクチン接種後の体調不良や、家族を亡くしたことに苦しむ大勢の人々と出会うことになりました。取材したのは、これまでに60人以上。それは接種を是とする影に埋もれていた「声」を、一つ一つ拾い上げていく作業でした。国を信頼して接種を受け、その後おきた体の不調を「心の病」だと診断された人、「後遺症など起きるはずがない」と医師から拒絶された人。海外にも多数の患者会が存在し、国がすぐに消えるとしていた、ワクチンの作り出すスパイクタンパクが、数年たっても体内に見つかった医師の研究もありました。

こうした中、現場で取材にあたった夕方ニュースのアンカー、大石邦彦の寄り添う姿勢は患者や遺族の深い信頼も受け、全国から新たな情報が寄せられることにつながりました。一方で国は、ワクチンと症状との因果関係についてほとんどを「評価不能」と結論づけ、接種した方が感染防止につながると印象付けるようなデータの修正も行っていました。こうした「さまざまな事実の可視化」が、報道の意義の一つだったと考えています。

自分たちに偏りはないか、常に自問しながら「ファクト」を積み上げ、足かけ4年の取材は夕方ニュース内の特集およそ90本と長編ドキュメンタリー2本の制作につながりました。大石のウェブ解説は、再生回数9,000万回を数えます。これらはこの問題について伝えることの多さと、社会の関心の高さを表しているといえます。

症状とワクチンとの因果関係はいまだ解明されていませんが、日本ではメッセンジャーRNAワクチンの技術が、インフルエンザなど他の感染症予防への転用が進められる一方、他ならぬ開発国である米国では、トランプ政権がこのワクチンを検証する方針を打ち出しています。いずれにせよ先行きは不透明で、「評価不能」は残されたままです。

この新ワクチンで何が起きているのか、患者は救われるのか、結論が出るまで追い続けることが、報道を始めた私たちの責務と考えています。

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