オピニオン

電波を遠くに届けるためには、途中で「増幅」しなければならない。弱くなった波をはっきりさせて再発信する。そうしなければ、せっかく作った番組も視聴者に届く前に空中で消えてしまう。放送には欠かせない手順だ。戦争や災害など歴史の教訓を未来に伝える行為は、それに似ていると思う。 今年の9月1日は、関東大震災か

民放連では、民間放送の価値を高め、それを内外に広く伝えることに力点を置いた「民間放送の価値を最大限に高め、社会に伝える施策」を策定し、2022-2023年度の2年間にわたり取り組んでいる。その具体的取り組みとして、報道委員会(委員長=大橋善光・読売テレビ放送社長)は、報道現場を熟知する担当者によるシ

地震や台風だけでなく線状降水帯による大雨など、新たな災害が日本列島を襲うようになった。災害の混乱に乗じた生成AIによる偽情報や影響工作もソーシャルメディアでは拡散しており、人々の情報環境は複雑さを増している。テレビ受信機を持たない世代も増えている中で、テレビ局には情報を届ける力が求められている。 状

日本列島を音でつづるラジオ番組『録音風物誌』が、1953年4月の放送開始から70年を迎えた。制作は東京、大阪以外の民放AMラジオ37社が加盟する「地方民間放送共同制作協議会」(火曜会)で、週1回の10分番組を各局持ち回りで制作して、全国33局で放送している。 1958年からは、放送された番組のコンク

KDDIは2023年7月、ケーブルテレビ(以下、CATV)関連事業を24年1月1日付で、グループ会社のJCOM株式会社(以下、J:COMと表記)に承継することを発表した。両社で別々に展開されていたサービスやソリューションを一本化することで、事業の効率化が見込まれている。 J:COMは言わずと知れた、
横断的な視野でラジオ文化をつなぐ山崎怜奈 TOKYO FMの昼時間帯の顔としてすっかり定着した『山崎怜奈の誰かに話したかったこと。』(月―木、13・00―14・55)が、来たる10月で放送4年目に入る。パーソナリティを務める山崎怜奈は、そのスムーズな語り口はもちろんのこと、他局番組にも広く目を配りな

8月24日、政府と東京電力は、福島第一原子力発電所から放射性物質トリチウムを含んだ処理水を福島県沖の海に放出した。放出開始は午後1時3分。放出に先立ち、処理水は海水で希釈され、計画で定める1リットルあたり1,500ベクレル以下(国の基準の40分の1)であることが確認された。放出は少なくとも30年は続

2023年9月1日、関東大震災が起きてから100年を迎えた。「民放online」では、災害とメディアの関係に着目し、災害時のメディアの役割や災害時に広がるうわさやデマ、関東大震災時の手記から見えるもの――などについて取り上げる。今回は、災害時のメディアの役割について、専修大学の武田徹教授に寄稿いただ

民放連では、民間放送の価値を高め、それを内外に広く伝えることに力点を置いた「民間放送の価値を最大限に高め、社会に伝える施策」を策定し、2022-2023年度の2年間にわたり取り組んでいる。その具体的取り組みとして、報道委員会(委員長=大橋善光・読売テレビ放送社長)は、報道現場を熟知する担当者によるシ
2015年に国連サミットでSDGsが採択され、2030年という目標達成期限までちょうど折り返し点を迎えました。SDGsについての世の中の認知度も高まり、企業としてのサステナビリティに対する取り組みもどんどん加速しています。 サステナビリティ活動事例集の作成 民放連でも、これまで総務委員会(委員長=林

民放連研究所は「ラジオの特性・広告効果に関する研究」の報告会を2023年8月2日に開催し(会員社対象、ウェビナー)、翌3日に報告書を民放連公開サイトで公表した。同研究は民放連研究所が22年度から取り組んでいた研究テーマであり、23年3月に日本全国を対象とする調査を実施。報告ではその調査結果とそこから

本稿は、BBC3の初代チャンネルエグゼクティブを務めたキャサリン・パーソンズ氏に民放連研究所が依頼して執筆していただいた論考("Live Sports Broadcasting - How UK Rights Are Negotiated")を、筆者(佐野泰裕)が翻訳し、必要な情報を補ったものです。

2022年11月から12月にかけてカタールで開催されたFIFAワールドカップは、日本が決勝トーナメントに進出し、普段サッカーに関心がなくとも、その行方に注目した人が多かったのではないでしょうか。日本での男子サッカーワールドカップの放送は、これまで民放連とNHKがジャパンコンソーシアム(JC)を組んで

英政府が3月28日に公表した新メディア法の草案は、書面による意見募集に続いて文化・メディア・スポーツ省(DCMS)の特別委員会による公開ヒアリングが終了した(=冒頭写真は6月20日。BBC、商業ラジオ連盟などからのヒアリング風景)。委員の1人が「予想外に、法案で最も議論を巻き起こしている」としたのが

現代版『尋ね人』が映し出す埋めきれない空白 敗戦の翌年から始まったラジオ番組に『尋ね人』というものがあった。私は世代的に聴くことはなかったが、戦争で別れ別れになった親族や友人知人の消息を、電波を通して探るというもので、1962年まで続いた。6月24日に放送されたETV特集『置き去りにされた子どもたち

2023年春クールのドラマは傑作ぞろいだったが、最後まで夢中で観ていたのが、岡田惠和が脚本を担当した『日曜の夜ぐらいは...』だ。 朝日放送テレビ制作の新設枠 本作はテレビ朝日が新設した朝日放送テレビ制作ドラマを放送するドラマ枠(日曜22時)の第一作。 車椅子生活の母親と暮らしながらファミレスでアル

2018年5月から民放連が発行する機関紙「民間放送」で続いてきた、放送の未来を第一線の放送人に語っていただくリレー連載「提言!放送の未来」。今回登場するのは、2022年民放連賞テレビ教養で優秀に、2023年ニューヨークフェスティバル普遍的関心部門でファイナリストに選ばれた『大きくなった赤ちゃん~ゆり

日本を代表する小説家・脚本家、平岩弓枝さんが亡くなった(2023年6月9日、91歳)。作品の大ファンのひとりとして、残念でならない。 1932年(昭和7)、東京・代々木八幡宮宮司の一人娘として生まれた平岩さんは、大学卒業後、戸川幸夫に師事し、後に『瞼の母』などで知られる長谷川伸主宰の新鷹会に参加。5

アメリカの政治・社会の特徴ともいえる地方メディアの影響力の強さが大きく揺らいでいる。インターネットの普及とともに、政治情報の「全国化」の流れの中、地域密着型のメディアの活力が大きくそがれてしまったためだ。民主主義社会を成立させるうえでの地方メディアが果たす役割の重要性を考えると、先行きは明るいとはい

2022年7月8日、安倍晋三元首相が演説中に銃撃され死亡した。殺人罪などで起訴された山上徹也被告の供述をきっかけに、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)について指摘されている不当な布教活動などの問題があらためて注目され、政治家とのつながりや被害の実態が明るみになった。 事件からまもなく1年。放送局はど

「BPO発足20年 連載企画」の番外編として、『民間放送70年史』に掲載された「放送倫理~BPOの活動と民放連放送基準改正」を抜粋して、2回にわけて転載する。筆者は、本橋春紀・民放連事務局長。2007年4月から2010年3月までBPO理事・事務局長を務め、放送倫理検証委員会の設置にかかわった。 BP

「BPO発足20年 連載企画」の番外編として、『民間放送70年史』に掲載された「放送倫理~BPOの活動と民放連放送基準改正」を抜粋して、2回にわけて転載する。筆者は、本橋春紀・民放連事務局長。2007年4月から2010年3月までBPO理事・事務局長を務め、放送倫理検証委員会の設置にかかわった。 BP

英政府が3月28日に提出した新メディア法の草案に対する意見募集で、BBCの配信サービス「iPlayer」専用のボタンをテレビのリモコンに設けることを法律で義務づけるようBBC自身が求めて話題を呼んだ。法案はおよそ20年ぶりの大幅な改正で、昨2022年に政府が発表した「放送白書」に基づき動画配信事業者

「ローカル」は普遍的なニュース価値 「何がニュースなのか」。 これは、放送を含めメディア全般にとって古典的、かつ今日的な問いで、今後も永遠に向きあっていく課題だろう。学問の世界でも同じで、世界中でさまざまに検討されてきたが、なかでも「ローカル」は古くから指摘される、普遍的なニュース価値のひとつだ。

2003年の発足から7月1日で20年となるBPO(放送倫理・番組向上機構)。放送倫理検証委員会、放送と人権等権利に関する委員会、放送と青少年に関する委員会の3委員会が、放送界の自律と放送の質の向上を促している。 「民放online」では、BPOの設立の経緯や果たしてきた役割、その成果などを振り返り、

ラジオに投稿するリスナーの中で、よく読まれる投稿者を「職人」と呼ぶようになったのは、いつの頃からだろうか。おそらく深夜ラジオのパーソナリティ番組の出演者が、アナウンサーからミュージシャンに、そしてテレビや舞台で活躍する芸人などに変わっていくあたりの時代からだと思う。常連であり他のリスナーも認める投稿

2003年の発足から7月1日で20年となるBPO(放送倫理・番組向上機構)。放送倫理検証委員会、放送と人権等権利に関する委員会、放送と青少年に関する委員会の3委員会が、放送界の自律と放送の質の向上を促している。 「民放online」では、BPOの設立の経緯や果たしてきた役割、その成果などを振り返り、

オーストリアで7月初旬にも公共放送ORF(オーストリア放送協会)の事業財源モデル(放送受信料制度)の廃止が確定する見通しとなった。2024年1月からは「国民が公共放送を支える」という概念のもと、ドイツに倣った「負担金徴収制度」に切り替わる。4月27日に政府が国会に提出した「ORF法」を含む関連法の改

2019年12月初旬、中国・武漢市で新型コロナウイルスの感染者が報告され、翌年3月にWHOがパンデミックを宣言するに至った。感染症対策として「マスク」「リモート」「アクリル板」などが日常的なものとなり、放送の現場でも対応を余儀なくされた。そして、2023年5月8日、新型コロナウイルス感染症は感染症法

NAB(全米放送事業者連盟)の年次大会と世界最大の放送機器展である「NAB Show」が4月15―19日、ラスベガス・コンベンションセンター(LVCC)で開催されました。1923年にニューヨークで第1回大会が開かれ、今回は「CELEBRATING 100 Years of Innovation」と題

SNSで自信なくす若者 「インスタグラムは10代女性に有害 フェイスブック社も把握」。米有力紙『ウォールストリート・ジャーナル』(WSJ)による、2021年9月にはじまったキャンペーン報道の第一弾の見出しである。日本を含め世界中のメディアに波及し、大きな反響をよんだ。 記事は、元社員が持ち出したフェ

60周年を迎えたテレビ番組(コンテンツ)の国際見本市「MIPTV2023」。主催者発表によると、イベントにリアル参加したのは世界86カ国・地域から5,510人に達し、昨2022年より22%増となったが、バイヤーの数は1,600人にとどまった。コロナ以前(2019年)の入場者は、9,500人。イベント

今春の改編も昨年春と同様に新しいパーソナリティが務める帯のワイド番組やユニークな企画の番組が目立った。まずは新たなパーソナリティによるワイド番組から紹介する。在京局では、俳優・文筆家・電線愛好家として活動する石山蓮華をメインに迎えたTBSラジオのワイド番組『こねくと』(月―木、13・00―15・30

2018年5月から民放連が刊行する機関紙「民間放送」で続いてきた、放送の未来を第一線の放送人に語っていただくリレー連載「提言!放送の未来」。今回登場するのは、石川テレビを休職し、JICA海外協力隊員としてベトナムのテレビ局で番組アドバイザーを務めている山本岳人さん(=写真㊤※ベトナムの農村地帯で撮影
テレビ番組の国際見本市として最も歴史のある「MIPTV」が今年60年を迎えた。しかし、4月17―19日に南仏カンヌで開催された「MIPTV 2023」で60周年が強調されたのは、オープニングパーティーでのささやかなバースデーケーキの演出くらい(写真㊤=©S.d'HALLOY /IMAGE &

手元に白い一冊の小冊子があります。「毎日放送 放送基準」。制定されたのは1958(昭和33)年で、民放連放送基準にほぼ準じた「一般基準」「広告基準」はたびたび改正されてきましたが、憲法にあたる「前文」と「綱領」は64年間ほぼ変わっていません。「放送法」が守らなければならない法律なら、「放送基準」は自

保守派とリベラル派の間で議論すらも成立しないアメリカ社会の激しい分断が広がる中で、メディアが加担した責任は極めて重い。現在のアメリカのメディアは自分たちが進んで左右に分かれ、「報道」そのものに色が付けているものも少なくない。客観性を失いつつあるメディアに対する信頼度は地に落ちた。 民主主義と社会変革

「メディアの分極化」の背景 アメリカの「メディアの分極化」の背景は国民の分断以外の理由もある。 例えば、1980年代の規制緩和以降、「市場」拡大のため、メディア側が意図的に政治的な立場をとる番組を許したことも大きい。 地上波のテレビやラジオでは連邦通信委員会(FCC)が長年、運用していた「公平原則

2003年の発足から7月1日で20年となるBPO(放送倫理・番組向上機構)。放送倫理検証委員会、放送と人権等権利に関する委員会、放送と青少年に関する委員会の3委員会が、放送界の自律と放送の質の向上を促している。 「民放online」では、BPOの設立の経緯や果たしてきた役割、その成果などを振り返り、
今年の香港フィルマートでは世界各国のメディア・コンテンツ専門家が集まり、カンファレンス、フォーラム、ショーケース・プレゼンテーションなど20以上にわたって実施された。4年ぶりのリアル開催だったこともあり、登壇スピーカーによる議論・情報発信も自ずと熱気を帯びていた。今回はいくつかのセッションにフォーカ

2003年の発足から7月1日で20年となるBPO(放送倫理・番組向上機構)。放送倫理検証委員会、放送と人権等権利に関する委員会、放送と青少年に関する委員会の3委員会が、放送界の自律と放送の質の向上を促している。 「民放online」では、BPOの設立の経緯や果たしてきた役割、その成果などを振り返り、

いきなり唐突な質問をすみません。ローカル局の置かれている現状は厳しく、日々の業務に追われる中でこんな問いに答えている場合ではない、そうお感じになる方もいらっしゃるかもしれません。また、ビジネスを知らないNHKの職員はこれだから困るよね、というため息も聞こえてきそうです。でも、だからこそ敢えていま問い

2003年の発足から7月1日で20年となるBPO(放送倫理・番組向上機構)。放送倫理検証委員会、放送と人権等権利に関する委員会、放送と青少年に関する委員会の3委員会が、放送界の自律と放送の質の向上を促している。 「民放online」では、BPOの設立の経緯や果たしてきた役割、その成果などを振り返り、
4年ぶりにリアル開催された香港フィルマート アジア最大級の映像コンテンツ見本市「香港フィルマート」が3月13日から16日にかけて香港コンベンション&エキシビションセンターで開催された。香港貿易発展局が1997年から開催している映画・テレビなどの見本市で、フランスのMIPTV/MIPCOMや米国AFM

2023年冬クール(1~3月)のテレビドラマは、ファンタジーやSFのアイデアを用いて日常を描く作品に光るものが多かった。 バカリズムドラマの総決算『ブラッシュアップライフ』 その筆頭が、お笑い芸人のバカリズムが脚本を担当した『ブラッシュアップライフ』だ。 日本テレビ系で日曜22時30分から放送されて

放送業界にようこそ。この春、新しく仲間入りされる新入社員の皆さんに「放送局の営業は面白い!」をテーマに、その業務内容や仕事の魅力などをご紹介させていただきます。私は皆さんがこの世に生を受けるずっと前の1994年に北日本放送に入社、おもにラジオ・テレビの渉外営業と営業企画を中心に営業畑を歩んで30年目

この春から新しく放送業界に入られた皆さん、ご入社おめでとうございます。"アドバイス"というようなたいしたことを言える立場にはありませんが、私の経験を少しだけお伝えできればと思います。 私は幼い頃から日常の中にラジオがある生活を送っていました。番組で音楽ランキングをチェックしてCDを借りたり、買ったり

20代は仙台放送で主にニュース番組を担当していた。18時台のニュース番組のアンカーをしながら、毎日取材に出かけ、企画や特集も制作していた。そうした発信に対する反響や手ごたえを感じる中で、ローカル局の役割とは地域に暮らし地域を愛する人々に光を当て、その人々と手を携えながらより良い地域社会を創っていくこ
自ら取材し自分の言葉で 入社以来、報道畑で記者歴15年。今は福岡の夕方ニュース番組『報道ワイド 記者のチカラ』でメインMCを務めています。記者として毎朝取材に行き、放送開始ギリギリまで原稿執筆やスタジオ展開の調整、そして夕方からはキャスターとして取材実感を伝え続ける日々です。 他局の多くが、情報やグ

2003年の発足から7月1日で20年となるBPO(放送倫理・番組向上機構)。放送倫理検証委員会、放送と人権等権利に関する委員会、放送と青少年に関する委員会の3委員会が、放送界の自律と放送の質の向上を促している。 「民放online」では、BPOの設立の経緯や果たしてきた役割、その成果などを振り返り、

2003年の発足から7月1日で20年となるBPO(放送倫理・番組向上機構)。放送倫理検証委員会、放送と人権等権利に関する委員会、放送と青少年に関する委員会の3委員会が、放送界の自律と放送の質の向上を促している。 「民放online」では、BPOの設立の経緯や果たしてきた役割、その成果などを振り返り、

はじめに、放送業界に入ったみなさん、おめでとうございます。私は2022年に30年働いたテレビ局を退社し、大学教員に転身してから1年が経ちました。若者と向き合う日々を過ごすなかで、あらためて放送業界で働くことがどれだけ重要であるかを実感しています。それは、視聴者の心を動かし、社会を形づくる力があるから

2023年の春、放送業界に新たに仲間入りする新放送人に向けて、経営者や先輩たちからのメッセージなどを連続企画でお届けします。1回目は新放送人への期待やアドバイスを、毎日放送の虫明社長にご自身の経験を踏まえて寄稿いただきました。(編集広報部) 「放送人」に仲間入りしてくれた皆さん、入社おめでとう。また
在京民放キー5局が中心となって、2015年にサービスを開始したTVer。テレビ番組の見逃し配信だけでなく、昨年からはリアルタイム配信やTVer IDによるログイン機能等を開始したほか、この1月にはZホールディングスグループとの業務連携も発表し、事業は継続して成長している。このほど、TVerの「今」と

昨年末から、コミュニティFMの明暗を物語るニュースが飛び交っている。 「明」は、すぐにピンと来た方もおられよう。1992年12月24日にコミュニティFM第1号として開局した「FMいるか」(函館市)が、めでたく30周年を迎えたことだ。同時に日本のコミュニティFMが、30歳になったことになる。 FMいる

2003年の発足から7月1日で20年となるBPO(放送倫理・番組向上機構)。放送倫理検証委員会、放送と人権等権利に関する委員会、放送と青少年に関する委員会の3委員会が、放送界の自律と放送の質の向上を促している。 「民放online」では、BPOの設立の経緯や果たしてきた役割、その成果などを振り返り、
「テレビ」と私たちが呼ぶようになって久しい電気家電は、いま、その立ち位置を急速に変えつつある。「テレビ離れ」という言葉をよく耳にするが、テレビ放送事業は奇しくも2月1日に70周年を迎えた。立派なオールドメディアである。 だが、テレビが積み重ねた膨大な時間の始まりは、もう少し前に求める方が正確である。

(上)編では、検察の発表に依拠せざるを得ない実態と、改正施行からしばらくの報道ぶりを振り返った。後編では、実質的な第一号事案であった甲府の事件を振り返りつつ、実名・匿名報道の境界線を考え、さらに今後の課題を探っていきたい。 3.甲府事件が1つの基準か 時計を2021年秋まで一気に戻す。いわゆる甲府放

本稿は、2022年4月に施行された改正少年法によって、18・19歳の「特定少年」に関する報道の何が変わり変わらなかったのかを確認するものである。そもそも、特定少年は大人なのか子どもなのかという法そのものにかかる課題も念頭に置きつつ、加害者である少年の保護とその事件による被害者の可罰感情等の狭間(はざ

『週刊TVガイド』が創刊して60年という月日が経ちました。プロダクトライフサイクルが30年と言われ、移り変わりの早い昨今のビジネス環境の中でここまで続けて来られたのは、ひとえに読者の皆さまと出版界ならびに放送局や芸能事務所の方々の助力のおかげだと感謝しております。 1962年の創刊時は、日本でテレビ

(①はこちら) "従来型展示"の韓国LG・中国勢転換したパナソニック・韓国サムスン 毎回、会場の一番目立つところに陣取り巨大画面に曲面映像を映し出してきた韓国LG。昨年はその広いスペースを「公開空地」状態にしてイスと二次元コードのパネルを置いて、「製品情報はスマホで見て!」に方針転換し、ある意味、意

世界最大のエレクトロニクスショーCESが、1月5日から8日(現地時間)までアメリカ・ラスベガスで開催されました。"コロナ明けスグ"で"おっかなびっくり"開かれた昨年に比べると、はるかに多くの人々がCESに帰ってきました。主催者発表では来場登録者は11万5,000人超。昨年が4万5,000人、コロナ前

その言葉から「哲学」を感じさせてくれる取材対象には、滅多にお目にかかれるものではない。「グラウンドで死にたい」「90歳までに甲子園に行く」「YouTubeを始めました」 83歳の現役高校野球監督・迫田穆成(さこだ・よしあき)。1939年、戦前の広島に生まれ、被爆もしている。戦後は広島で野球に興じ、5

民放連研究所では、毎年1月末に次年度の会員社の営業収入予測を公表している。本年は1月31日に「2023年度のテレビ、ラジオ営業収入見通し」報告会をオンラインで開催した。本稿ではテレビ、ラジオの全体状況を中心に、その概要について紹介する。 なお、地区別の予測値などを掲載している見通しの全文および報告会

北海道遠軽(えんがる)町。札幌から車で4時間かかる、オホーツク海側の小さなまちで生まれ育ったぼくは、テレビを通していつも「テレビの向こうの世界」を見ていた。 毎朝見る『めざましテレビ』では、今日の渋谷スクランブル交差点の模様。家で夕食を食べながら見る『どさんこワイド』では、建て変わってピカピカになっ

2023年も年明けのCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)から米国のテレビ業界は幕を開けた。今年のCESはほぼコロナ前の規模に戻り、テレビ業界関係者や広告関連ベンダーが顔をそろえ、広告関連企業が集まる"C Space"では多くの商談が持たれた。今年のCESではNielsen Oneを始め

2022年の秋クール(10―12月)のドラマは意欲作が話題となった。 一番の話題作は、やはり『silent』(フジテレビ系)だろう。聴覚障害を題材にした恋愛ドラマで、物語は青羽紬(川口春奈)が高校の時に恋人で、現在は「若年発症型両側性感音難聴」を患っている佐倉想(目黒蓮)と再会する場面から始まる。本

名脚本家として知られた市川森一(1941-2011)の名を冠して、新進の脚本家に賞を贈る「市川森一脚本賞財団」が、10年を区切りとして1月末に解散する。10回を数えた市川森一脚本賞では9人が本賞、2人が奨励賞を受賞した。その後、バカリズムと金子茂樹、野木亜紀子の3人が向田邦子賞に輝いたように、受賞者

2018年5月から「民間放送」紙上で続いてきた、放送の未来を第一線の放送人に語っていただく当リレー連載。今回登場するのは、ディレクター、プロデューサーとして数多くのドキュメンタリー番組を手掛けてきた関西テレビの柴谷真理子さん。 子どもの頃、大好きな番組がありました。異国情緒あふれる喜多郎さんのテーマ

「人災になりますよ、あれは。今手を打たなければ」。2014年に録音された音声は、まさにこの災害を"予言"していた。 2021年7月3日、降り続いた雨で何かが起こるかもしれないと私は県庁の記者クラブに詰めていた。静岡県内では冠水や橋げたが崩れるなどの被害が確認されていた中、昼前に届いたSNSの動画に衝

2022年4月、日本メディア学会に「ジェンダー研究部会」が発足した。同学会には研究者、実務家などが参加しており、春と秋、年間2回の大会開催に加え、さまざまな研究部会が主体となり、年間15回程度の研究会を開いている。研究部会には、理論、放送、メディア史などがあり、8つ目の研究部会として作られたのがジェ

広告会社から独立し、2014年にCreativity for local, social, globalを掲げてPOPS社を設立して8年が過ぎました。現在、仕事をしている地域は40都道府県に及びます。認知度向上、観光、移住定住などを目的とした自治体のシティプロモーションや地域企業のブランディングや商

2022年10月29日、韓国ソウルの繁華街・梨泰院(イテウォン)で158人が死亡、196人が負傷する事故が起きた。外交部(部は日本の省に当たる)の発表によると、外国人犠牲者も14カ国26人いる(執筆時点)。12月2日、韓国政府は事故発生後設置した「梨泰院雑踏事故中央災難(災害)安全対策本部」の運営を

後編ではMIPCOMのコンテンツトレンドや日本勢の活躍ぶりについて触れたい。イベント終了直近に日本からのベテラン参加者から質問を受けた。「かつてなら北欧の暗い雰囲気のドラマ(ノルディック・ノアール)や、完成度が高まったトルコドラマなど、分かりやすい傾向があったが、コンテンツに関する講演を聞いても、何

3年ぶりに"フル対面"での開催が実現した世界最大級の動画コンテンツ見本市「MIPCOM 2022(10月17―20日)」は、南仏のカンヌに再び1万1,000人を集めことに成功した。主催者(RX France)側トップのルーシー・スミス氏は、「近年オンライン開催をせざるを得なかった状況の中で、見本市の

今秋の改編でラジオ関係者やラジオファンをとりわけ驚かせたのが、開局63年目を迎えて大きな改編を行った東海ラジオだ。その改編率は59%にも上る。コンセプトは「オトナのミュージックステーション」。これまでのトーク中心のプログラムからエッジの効いたトーク&ミュージックプログラムへと進化するというもの。今春

2018年5月から「民間放送」紙上で続いてきた、放送の未来を第一線の放送人に語っていただく当リレー連載。今回登場するのは、自身の趣味を起点とした番組を新人時代に立ち上げ、テレビ東京に出向した経験も持つテレビせとうちの宮田絵利さん。 私はテレビが好きです。朝起きて、帰宅して、一番にテレビを点けます。目

安倍晋三元首相の「国葬」を生中継した各局の番組は、世論の分断に配慮する(翻弄された?)かのように、それぞれ独自の工夫や試行がみられ、視聴者に与える印象も大きく異なるものだった。そこで本稿では、NHKおよび民放各局の特徴をごく簡潔に比較してみたい。 通常のテレビ放送の編成が変更され、特別枠で中継される

いつもの長話を何度も聞かされ、うんざりする。ついには、その人を避けるようになる......。誰にでも思いあたる、ごくありふれた経験だが、マス・メディアでも似た現象が起こる。典型例は、以前に筆者が紹介した、ロイター・ジャーナリズム研究所による『デジタル・ニュース・レポート』に見られる。2022年初頭に

今年の夏は、7月8日の参議院選挙期間中に起きた山上徹也容疑者による安倍晋三元首相射殺事件の影響によって、大きく浮上した宗教の問題や国葬の話題が日本中を席巻した。その影響は現在も続いており、どこか殺伐とした空気が漂っている。そのため、夏クールのドラマも、追い詰められた個人の鬱屈やいらだちと向き合う誠実

「一人放送局」として動いてみる 2015年に独立し、地元・福島県いわき市で場づくりや情報発信に関わって、今年で8年目になる。地方の民放テレビ局員だった時代は20代のたった3年間だけだったと思うと、民放連のコラムにぼくなんぞが文章を寄せていいのだろうかとも思うけれど、なぜだかどうして、雑多な仕事を請け
3年ぶりのリアル開催となった欧州の放送「機器展」IBC。9月9日から4日間、オランダのアムステルダムで開催されました。コロナ前より少し小ぶりでしたが、170の国・地域からの3万7,000人の参加者があったと発表され、そのほとんどはマスクなしで久々の再会を喜び合っていました。 駆け足で見て回りましたが

9月28日、民放連研究所は、本年1月28日に発表した「2022年度のテレビ、ラジオ営業収入見通し」を改訂し、新たに現時点での23年度の予測値も加えた「2022~2023年度のテレビ、ラジオ営業収入見通し」を発表した。22年度については、テレビ、ラジオともに年初の予測をかなり下方修正しており、特にテレ

2022年北京オリンピックでの実況が終わった後、私がよく聞かれたのは、「かなり大変な準備だったのでしょう?」というフレーズ。この言葉にいつも戸惑ってしまいます。「えぇ、まぁ」と苦笑いをしながら答えてしまうのが常です。でも今回正直に答えるなら、振り返ってみると確かに大変だったかもしれないけれど、それ以

2022年春クールのドラマは、新しい試みに挑戦した意欲作が印象に残った。 その筆頭が、NHKの土曜ドラマ(土曜22時枠)で放送されていた『17才の帝国』だろう。本作は政治AIによって統治された実験都市ウーアの総理大臣に就任した17才の高校生・真木亜蘭(神尾楓珠)が主人公のSF青春ドラマだ。制作統括は

世界的な感染症の流行(パンデミック)が始まって丸2年以上がたち、ようやく疫病をめぐる人々の情報摂取に関し、質の高い実証的な研究が発表されはじめてきた。 今回紹介する論文、「なぜ、COVID-19について知らない人々ほど知った気になるのか」は、その1つである。放送を含む伝統メディアとSNSの利用が新型

「今回も主要先進国で最下位」(朝日新聞デジタル)、「韓国に大差をつけられ116位」(プレジデントオンライン)――。これらの見出しを見ただけで何の記事かピンとくる人は、多いのではないだろうか。7月に世界経済フォーラム(WEF)が発表した2022年度版の「ジェンダーギャップ指数」について、日本の順位を伝

規模と収益を誇る巨大プラットフォームとメディアとの関係が、大きく変わり始めている。焦点はニュースの使用料だ。 巨大プラットフォームは、メディアに対して圧倒的な交渉力を持つ。プラットフォームに掲載されるニュースの使用料交渉では、メディア側の劣勢が続いてきた。だが、その巨大プラットフォームに対し、各国で

「日本にとって〈沖縄復帰〉とは何だったのか」という総括をせずに、「沖縄にとって〈日本復帰〉とは何だったのか」との質問を沖縄の人々に投げかけ、時折思い出したかのように「沖縄問題」として扱う。これが基本的な中央メディアのありようであることは、「復帰50年」を迎えた今日でもほとんど変わらないように感じる。

2018年5月から「民間放送」紙上で続いてきた、放送の未来を第一線の放送人に語っていただく当リレー連載。今回登場するのは、第59回ギャラクシー賞ラジオ部門でDJパーソナリティ賞を受賞した山陰放送の森谷佳奈アナウンサー。 BSSラジオで『森谷佳奈のはきださNight!』(月、20・00-22・00)が

ニュース離れ、マスコミ離れが止まらない。SNS全盛の時代、とくに若者は見むきもしてくれない。放送・活字を問わず、こうした嘆きをよく耳にするが、印象論ではなく、実際はどうなのか。 今回紹介する『デジタル・ニュース・レポート』は、この問題を現時点でもっとも大規模、かつ実証的に確かめようとした調査報告書で

「10歳のロヘリオ・トレスは非常に知性的で勤勉で周囲を助ける人だった」「やはり10歳のマイテ・ロドリゲスは、母親のアナによると海洋生物学者になるのが夢で、テキサスA&M大学に行きたかった......」。 米テキサス州の小学校で今年5月24日、男が児童19人、教師2人を射殺した。米CNNテレビ

今年1月28日、民放連研究所は、「2022年度のテレビ、ラジオ営業収入見通し」を発表した。そこで示した22年度営業収入の予測値は図表1、2のようなものであった。経済のコロナ禍からの回復基調継続などを受けて、テレビ、ラジオとも21年度に続いて増収になることを予測している(民放連ウェブサイトに要約版、同

(①はこちらから) 英政府は「公共サービス放送局」を守る 英仏政府の目指す方向は同じように見えて、違いもある。例えば「公共サービス放送局」の存在だ。イギリスではBBC(公共放送)に加え、公社のチャンネル4とウェールズ語放送(S4C)、大手民放(ITVとチャンネル5)とスコットランドの民放(STV)の

4月28日に英政府がBBCの受信料撤廃を念頭に入れた制度改革を発表したが、仏政府も5月11日、フランス・テレビジョン(FTV)への負担金(いわゆる受信料)を年内に撤廃すると発表して波紋を呼んでいる。 ロシアとウクライナの戦争が激しい情報戦になっているなかで、信頼できるニュース報道を行う公共放送の重要

OECD Digital Economy Outlookによると、韓国は加盟国中FTTH普及率が最も高く、モバイルデータ使用量も1位。世界初のスマートフォン向け5Gサービスを開始するなどICT利活用が進んでいる。放送分野も世界に先駆け、1990年代後半から"オンエア"(同時配信)や"ダシボギ"(番組

今春もさまざまなジャンルの番組が各地でスタートした。今回はそのなかでも初めてレギュラーを担当する人を中心に注目した。まずは音楽番組から。沖縄には開始早々「すごい番組が始まった」とSNSで話題となった番組がある。ラジオ沖縄「にちようびのグルーヴ」(日、23・30―24・00)は浦添にあるライブハウスG

今国会には、受信料引き下げを意図した還元目的積立金の創設などNHK改革に関する放送法改正案が提出されている。民放事業者としては、この法案の中に、放送対象地域内においてあまねく受信できるようにする責務にのっとって講ずる措置の円滑な実施について、NHKが「必要な協力をするよう努めなければならない」という

2022年冬クールは「他者との関わり方」について、あらためて考えさせられるドラマが多かった。 その筆頭は、遊川和彦脚本の「となりのチカラ」(テレビ朝日系)だろう。中越家の父・チカラ(松本潤)は困っている人を見つけると放っておけない性格。マンションの住人たちを心配しては、よその家族の問題に踏み込んでい

NABショーが2019年以来3年ぶりにラスベガスで開催された。昨年10月に開催を模索していたものの出展企業のキャンセルなどで急きょ中止となり、今年は念願の再開となった。コロナの影響から完全復活とはならず、参加者は約5万2,500人と19年の半分強となり、出展数も940社と19年比6割程度にとどまった

最近、スポーツ中継をめぐる放送のあり方についてある意味の"事件"が続いた。FIFAワールドカップカタール2022・アジア最終予選の日本代表アウェー戦をスポーツ専門の動画配信サービスDAZNが独占配信。ABEMAによる同大会の全試合生中継の発表。4月9日のボクシング村田諒太×ゴロフキン戦のアマゾンプラ

日本マス・コミュニケーション学会は今年1月、「日本メディア学会」に名称変更するとともに、学会規約を大幅に改正した。新聞業界の強い後押しによって、日本新聞学会として設立されたのが1951年。放送学やマス・コミュニケーション研究の隆盛を経て、日本マス・コミュニケーション学会になったのは91年である。この

2020年春、私が所属する大妻女子大学をはじめとする大学は、新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)の感染拡大に翻弄された。当時、私は学科の教務委員をしていたこともあり、新入生に大学での履修方法を教える立場にあった。高校までの履修と異なり、大学では自分で受ける科目を決めなくてはならない。一方で、語学や

2022年3月16日の深夜、東日本を大きな揺れが襲った。震源地は福島県沖でマグニチュード7.4、最大震度6強を記録した。内陸では11年の東日本大震災に匹敵する体感であったという人もいる。実際SNSには、めちゃめちゃになった本棚や商品陳列の写真が並び、東北新幹線は一部でおよそひと月不通となった。 この

取材・報道の現場で何が起きていたのか、何に悩んでいたのかを知りたい――「コロナ時代の民放報道研究 Ⅱ.民放テレビ・ラジオ実態調査」のうち、テレビ社の報道デスクへのインタビュー調査は、そんな動機から思い立ったものだ。アンケートでは分からない本当の声を残したいと、なるべく言葉を端折らないよう腐心し、それ

吉田戦車のマンガ「伝染るんです。」に印象的なネタがある。メインキャラクターの一人、「かわうそ君」――某新聞社の広告キャラクターなのが示唆的だ――が、「約束」に代わり「憶測」を売る、というおはなしだ。おじさんが代金を払うと、根も葉もない「憶測」を吹き込むかわうそ君。これを聞いたおじさんが「憶測で物を言

2019年春ごろ、WOWOWでは初めてリモートプロダクションという取り組みを実施した。TBSテレビと共同で開発・運用している低遅延マルチアングル配信アプリ「Live Multi Viewing」を制作に応用できないかと考えたことが始まりである。 ソフトウエア化で遠隔制御が可能に 通常の番組制作で遠隔

この3月で45年目となるはずだったABCラジオ「おはようパーソナリティ 道上洋三(どうじょうようぞう)です」。月~金曜朝6時半開始の生ワイド番組は「いつもの朝」という道上のキャッチフレーズとともに、阪神・淡路大震災のときもリスナーの心の支えとなった、同局の金字塔のような番組だ。 しかし昨年9月11日

バリアフリーに関する世界唯一の国際賞で、「バリアフリー界のアカデミー賞」ともいわれる「ゼロ・プロジェクト・アワード」の受賞が内定してからの社内の動きは非常にスピード感に溢れていました。当社の中静敬一郎社長の号令のもと、社内にコンテンツ戦略プロジェクトが発足。各部署から横断的に集ったメンバーは柔軟な発

国家による自由か、国家からの自由か。3つのばらばらの話題に"通奏低音"のように流れる問題を「上」「中」と論じてきた。この回を締めくくりとしたい。 「上」は、(1)衆院憲法審査会による憲法改正国民投票法のCM規制論議について、「中」は、(2)総務省の有識者会議によるデジタル時代の放送制度の在り方に関す

「ネット上の言論空間の歪み」は問題だが 国家による自由か、国家からの自由か。3つのばらばらの話題に"通奏低音"のように流れる問題を引き続き論じてみたい。 「上」では、(1)衆院憲法審査会による憲法改正国民投票法のCM規制論議を取り上げた。「中」では、(2)総務省の有識者会議によるデジタル時代の放送制

3つの話題に流れる"通奏低音" 国家による自由か、国家からの自由か――。それが問題だ。ハムレットを気取るつもりはないが、最近とみにそう思う場面が増えてきた。 (1)衆院憲法審査会による憲法改正国民投票法のCM規制論議 (2)総務省の有識者会議によるデジタル時代の放送制度の在り方に関する検討 (3)自

日本には昔から「三方よし」と呼ばれる、近江商人の精神があります。自身の利益を追求するだけでなく、相手や社会の幸せも同時に目指し願う考え方です。実はSDGsが提唱された根底にも同じものが流れています。SDGsのコンセプトは「経済価値を至高とするやり方により金と力がごく一部に偏ってしまった社会を終わらせ

大きな事件が起こると、米国ではケーブルニュース局が真価を発揮する。新型コロナウイルスが猛威を振るい始めた2020年もそうだった。自宅待機中、情報に飢える国民は1日中テレビのニュースにかじりついた。 そして今、ウクライナでの戦争という大惨事。筆者が住むニューヨーク市にはウクライナ人も多く住んでおり、母

11回目の「3・11」が終わった。新聞やテレビの震災報道を見ていて感じたことがある。それは「次世代」の登場が目立ったことだ。昨年までは、まさに「直接的に被災したその人」を取り上げたものが多かったが、今年は、被災当時は子どもだった世代や、震災後に生まれた世代にも光が当たっていた印象がある。10年という

いま放送界に飛び込んで、歩き始める。何と幸せなことだろう。私は68歳の老ジャーナリスト。35歳から今日に至るまで、ラジオやテレビの世界を取材してきた。「放送って面白い」と心から思える。番組に励まされたり慰められたりしている人が、いかにたくさんいることか。目の当たりにしてきたのが、私の記者人生だった。

入社以来、10年以上報道部で記者やディレクターを経験してきました。記者としては、これまで、行政や医療・教育を主に担当し、記者としての仕事をしながら、公共キャンペーンCMのプロデューサーやドキュメンタリードラマのディレクターなどを務めてきました。私生活では、2歳の息子を育てる母です。 この春で、社会人

この春、放送業界に仲間入りされる新放送人たちに向けて、先輩からのメッセージなどを連続企画でお届けします。1回目は、放送に関する業務の基本となる放送倫理について、TBSテレビの秋山浩之さんにやさしく説明してもらいました。(編集部) もしあなたが作った番組が原因で誰かが傷ついたとしたら? あなたの良心は

今年で「クレヨンしんちゃん」はテレビアニメ放送開始30周年になります。毎週土曜日の夕方に放送しているテレビ放送以外にも、年に1回公開している映画や雑誌で連載されている漫画などがあり、それらがDVDや配信、コミックスなどになって日本のみならず海を越えて世界中の人に楽しんでいただいています。このように本

米国の報道分野で、全国的に成長を見せている数少ない領域の一つがスポーツである。当然、求人も比較的多く、近年はスポーツ報道に特化した科目やカリキュラムを設ける大学が増えている。インターンシップも同様だ。しかし、勢いのある業界ゆえ、参入には厳しい競争が伴う。だからこそ、有望な学生を獲得・育成すべく、大学

2021年4月から理工系の大学で文系教養科目を教えている。私が担当しているのは「未来社会論」と題した授業だ。学年によって、子ども、ジェンダー、企業やリーダーシップなどの切り口を設定し、「望ましい未来の社会」を考える。自分が本気で望む未来について思い描き言語化することは、簡単ではない。年齢を問わず多く

2020年、自殺者数がリーマン・ショック後の09年以来11年ぶりに増加した。とりわけ女性と若者の増加が顕著で、前年比で女性が約15%、未成年が約20%の増加であった。未成年女性に至っては約44%の増加となり、リーマン・ショック後とは自殺の実態が明らかに異なっている。コロナ禍の感染への不安や自粛生活な

現在、BBCの受信許可料モデルの将来が英国で論議を呼んでいる。これまでも似たような話は時々報道されていたが、今回は現職閣僚の発言が発端となっており、しばらく論議は続きそうである。 大臣のツイートが契機 同発言は、1月16日にツイッターに投稿された。このツイートは、1月15日付のデイリーメール紙の記事

2021年秋(10~12月)クールのドラマは、社会的なテーマをミステリーなど独自の切り口で描こうとする硬派な作品が多かった。 日曜劇場(TBS系日曜21時枠)の「日本沈没―希望のひと」(以下「日本沈没」)はその筆頭だ。本作は日本列島沈没を前にした混乱と選択を描いた壮大な物語。過去に何度もリメイクされ

2021年の米広告費は、コロナ禍からの脱却が意識され、広告主が消費に関して強気に転じたこともあり、20年比で大幅に改善した。特にデジタルは大きな伸びを記録し、20年に苦戦したテレビも広告需要が復活。調査会社のeMarketerによれば、春に行われるテレビ広告の一括事前取引であるアップフロントの取引額

COVID-19(新型コロナウイルス感染症)は、情報社会のゆがみと、そこで理想的なコミュニケーションを実現することの困難を浮き彫りにした。例えばこれまでの期間、SNSやニュースサイトのコメント欄は負の感情に覆われ、とても冷静な議論ができる状況とはいえなかった。また、公権力と人々の、あるいはマスメディ
土曜日の夜9時、岡山刑務所だけで放送されている「受刑者のためのリクエスト番組」が始まる。DJを担当するのも受刑者だ。彼らが聴きたい曲を、添えられたメッセージとともに紹介する30分間は、まさにラジオ番組。消灯後、眠りに就くまでのささやかな癒やしは、1980年から40年以上続く独自の取り組みだ。 主に初

ローカル局の良さというと、地域に密着した情報や映像をきめ細かく集めることができること。東日本大震災のような大災害に際しては、地元局に加えて系列局の応援も入るので発生当初は膨大な量の映像が集まった。また、その後も日常的に被災地の取材を続けることができた。今回の番組では、テレビ岩手が続けてきた定点観測の

「世界最大のテクノロジーの祭典」と言われるCES(元々はコンシューマー・エレクトロニクス・ショー)。年初にアメリカ・ラスベガスで20万人近くを集める巨大イベントだが、昨年はコロナ禍でオンライン開催に。今年はオンラインと並行してリアル開催を復活させるというので、プライベートで「エィ、ヤッ!」と行ってみ

※第1回、第2回、第3回、第4回に続く論考です。 最終回となる今回は、2020年春に民放に先駆けて開始された常時同時配信"NHKプラス"へのニーズを見てみよう。 ご承知のようにNHKプラスでは、NHKの受信契約者を対象として、総合と教育(Eテレ)の番組の大部分がリアルタイムと1週間の見逃し配信のセッ

※第1回、第2回、第3回に続く論考です。 在京キー局の多くは、2022年春ごろより、プライムタイム限定で全国を対象としたネット同時配信を開始する予定とされている。言うまでもなく、プライムタイムの番組のほとんどはキー局から送られるネットワーク番組であり、全国で同じ時間にほぼ同じ番組が放送されている。従

「前へ進め!」。刑務官の威勢のいい声が塀の中に響く。岡山市中心部から車で30分ほど離れた場所にある岡山刑務所。受刑者の数は400人余りだ。初犯で刑期10年以上の男性受刑者が収容されていて、半数以上が無期懲役。人命を奪った生命・身体犯が大半を占める。 岡山放送では2005年に受刑者の過剰収容問題、刑務

今回は、同時配信がどのような状況でどんなデバイスを使って見られるのかについての調査結果を紹介する。テレビをスマホで視聴可能な同時配信は、もっぱら外出先などで利用されるのだろうか? テレビのない部屋ではスマホ、リビングではテレビで 図表8に"地上波民放テレビの同時配信/見逃し視聴サービスをどのように利

今回は、本題であるネット同時配信のニーズについて見ていく。なお、前回の冒頭でも触れたように、インターネット調査では、一般的にテレビ視聴時間が長い70代以上が含まれないだけでなく、ネットのヘビーユーザーの含有率が世の中の平均的な水準よりも高くなるため、メディアへの接触・利用に関しては、一般的にネットに

『午後のロードショー』(毎週月~金、13・40~15・40)は、1996年4月1日にスタートし、2021年1月22日に放送5,000回、同年4月1日に放送25周年を迎えることができました。ここまで番組が続いてきたのは、ひとえに『午後のロードショー』をご覧いただいている視聴者の皆さまのおかげです。あら

2020年3月、NHKは地上波テレビ放送の常時ネット同時配信サービスと見逃し視聴(キャッチ・アップ)サービスを組み合わせた"NHKプラス"を開始した。それまで日本では、一部の衛星放送の有料チャンネル以外では、インターネット上での放送の常時同時配信は行われていなかった。NHKプラスは日本における初めて

年の瀬を迎えると、その年に亡くなった人々に思いをはせる。放送界では、文化功労者や文化勲章に選ばれた名脚本家の橋田壽賀子をはじめ、優れた演出家や俳優たちの死が相次いだ。 大正末期に生まれ、「激動の昭和」と平成、令和の4代を生き抜いた橋田は4月4日、95歳で死去した。常に大衆の身近な題材を取り上げ、半世

「SDGメディア・コンパクト」は、SDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)の達成を後押しするうえで「メディアとエンターテインメント業界の果たす役割が不可欠」という認識のもと、国連のグテーレス事務総長が2018年に発足させたイニシアチブ。加盟したメディ

昨年1月、中国放送、RCCフロンティアを卒業して、サンフレッチェ広島社長に就任しました。この年2月23日の開幕戦、難敵鹿島アントラーズをホームに迎え3対0で打ち破り、最高のスタートを切りました。しかし、これがコロナの影響を受けない唯一の試合だったのです。 この開幕戦には、放送で培ったノウハウをつぎ込

「なんか、モヤモヤするね......」。きっかけは報道フロアでの同僚との何気ない立ち話だった。時は今年2月、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗前会長の「わきまえている女性」発言が、私たちの働く日本テレビを含め、あらゆるテレビニュースで連日大きく報道されていた。 私自身、職場で耳にする

3期目突入を確実にした習近平指導部による管理統制強化がエスカレートする一方だ。その矛先はメディア・エンターテインメント分野、とりわけ巨大ネット企業に向けられている。昨年末に独占禁止法の改正・運用強化が宣言され、今年はアリババ、テンセント、バイドゥなど主要ネット企業が巨額の罰金を徴収されたほか、テンセ

東日本大震災から10年、この間にメディア界に新しい言葉が生まれた。「3月ジャーナリズム」である。同じような言葉として、「原爆の日」や「終戦記念日」に合わせるように、戦争や平和についての報道が8月に目立つことを表現した「8月ジャーナリズム」がある。これには、戦争や平和について考える番組や記事が8月に集

2021年は「ジェンダー」をめぐるニュースが大きな注目を浴びた。2月の森喜朗元首相の「女性蔑視発言」に始まり、6月の「LGBT法案」見送り、恒例の「新語・流行語大賞」に「ジェンダー平等」がノミネートされた。 新聞社のデータベースを利用して「ジェンダー」に関連する記事件数の変化を調べてみると、この10

10月後半のある午後、私は自宅近くのカフェでいつものように原稿書きの仕事をしていた。すると隣の席に、70~80代と思しき3人のご婦人が座った。恐らく一番年長と思われる方が口火を切った。「私はね、絶対だめだと思うの」――それからほぼ1時間、私が席を立つまでずっと同じ話が続いていた。例の「眞子さま」の一

1932年生まれの飯島敏宏(2021年10月17日没、89歳)の生涯は、民放ドラマ史そのものであったと言えるだろう。戦前戦中の多くの子どもたちがそうであったように、飯島は雑誌「少年倶楽部」に描かれる大陸雄飛譚や時代劇のファンタジーに夢中な"軍国少年"であったが、願書を出していた陸軍幼年学校で教育を受

2021総選挙が終わって少し落ち込んでいる。理由は結果、ではない。ちなみに自民「完勝」はおおよそ想定どおりで、すでに投開票前に公言していたところだ。傷心の理由は、筆者周辺の学生の投票率の伸び悩みにある。学科名がジャーナリズム学科であることとも関係し、少し口幅ったく言えば「賢い市民」を育てることが使命

ツイッターやインスタグラムのほか、SNSで動画を公開したり、音声配信アプリで自分の思いを自由に配信できる時代、受け手側も魅力的な人を発掘しやすくなった。今秋は、地域にゆかりのある人が専門分野を活かした番組が続々と登場している。 中でも音楽家の番組が目立つ。今改編に先立って、話題のピアニスト・ハラミち

2021年夏(7~9月)クールのテレビドラマは、東京オリンピック・パラリンピックの開催期間と重なっていたこともあってか、話題作が少なく全体的に低調だった。だが、不作だったかというと決してそんなことはなく、意外な良作・怪作が多かった。 中でも一番楽しめたのが「ハコヅメ~たたかう!交番女子」(日本テレビ

先日、ある学生から、「地元のテレビ局が大好きな友人がいて、将来、そこで働きたいがどうしたらいいかわならないと言っている。先生、一度会ってもらえますか?」との相談を受けた。近年テレビを全く見ないという学生が多いというのに、いったいどんな学生だろうという興味もあって早速会って話を聞いた。 その学生は、子

「誰が参加しなかったかを報じるのではなく、成果に注目してほしい」と切り出したのは、世界最大級のコンテンツ見本市・MIPCOMを主催するRXグローバルの新ディレクター、ルーシー・スミス氏だ。今月11日から4日間、仏カンヌで開催された同見本市の総括記者会見での発言である。スミス氏は「5,000人の参加を

2021年10月11日(月)より22年1月23日(日)まで、早稲田大学演劇博物館において特別展「家族の肖像―石井ふく子のホームドラマ」を開催している。 ホームドラマは、アメリカのシットコム(シチュエーションコメディ)の影響を受けつつも、独自のジャンルとして日本のテレビ史の中で大きな役割を果たしてきた

超・短期決戦の選挙戦が始まった。いつもだと筆者のもとにも選挙取材・報道のための学生アルバイト要請があるのだが、今年はゼロ。コロナ禍の影響もあるだろうが、悠長に「ド素人」を集め説明会を開いて対応するといった、時間的・精神的な余裕がないことも一因ではないかと想像される。もちろん以前よりこの時期に総選挙が

6月18日。筆者ら「新型コロナ専門家有志の会」は日本民間放送連盟に「オリンピック・パラリンピックの際の感染対策を涵養する報道様式についての要望書」を送付した。この文書は次のように結ばれていた。 「皆さまにおかれましては、この1年以上のコロナ禍のなかでメディアの皆さんが培ってきた伝えかたの工夫や、これ

個人的な体験で恐縮だが、少し前に参加したオンライントーク番組に寄せられたコメントから、メディアの持つ「強者性」について考えてみたい。先日、フリーランスの論者が語り合うイベントに参加した。配信画面のモニターには視聴者からの和やかなコメントが表示されていたのが、突如、思いもよらぬコメントが流れた。「小松

フェイクニュースを入手するのはテレビ......。総務省が発行する「令和3年版情報通信白書」に掲載された調査結果は、テレビ業界でほとんど話題になっていないようだ。フェイクニュースはソーシャルメディアの問題として語られることが多いためだろうか。しかしながら、テレビは決してフェイクニュースに無関係ではな

「わが国の放送事業者は、アナログのルールの下で運営されている間は、デジタル世界で競争をすることができない。(中略)今年秋に、21世紀に適合するような放送の将来に関する白書を提示する。(中略)まずは、競争環境の同等性を確保する必要がある。放送事業者は明らかな格差により、不利な状態で競争している。すべて

8月15日、今年も平和を祈念し、尊い命を戦争によって奪われた方々を慰霊する日が訪れた。各局では、10日ほど前からニュース番組内の特集コーナーを中心に、戦争に関する話題を取り上げていた。終戦から76年の今年は、戦争の記憶が薄らいでいく中、どのように語り伝えていくことができるのか、どのようにすれば視聴者

民放ジャーナリズムの「危機」が指摘されて久しい。とはいえ、その起源、あるいは原因を特定のものに絞ることは難しい。メディア環境の変化、ライフスタイルの変化、あるいは政治的、経済的文脈など、複雑な諸要因が結びつきつつ徐々に進展してきたと見なすべきである。 ただし、「危機」の進展の背後に存在するいくつかの

情報の伝え方、呼びかけ方の見直しを 最近、市町村が住民に対して出す避難情報のうち「避難勧告」が廃止されたことは多くの方がご存知と思う。災害対策基本法(災対法)の一部が改正され、今年5月20日に施行されたことによるものだ。「避難勧告」と「避難指示」は災対法が昭和36(1961)年に制定されて以来60