【審査講評】テレビマンの矜持と熱情で逆境を照らす(2025年民放連賞テレビバラエティ番組)

影山 貴彦
【審査講評】テレビマンの矜持と熱情で逆境を照らす(2025年民放連賞テレビバラエティ番組)

8月22日中央審査【参加/101社=101作品】
審査委員長=影山貴彦(同志社女子大学教授)
審査員=桧山珠美(フリーライター)、テリー伊藤(演出家)、ラリー遠田(作家、お笑い評論家)

※下線はグランプリ候補番組


昨年に続き審査委員長の任を仰せつかりましたが、今年も昨年に勝るとも劣らない秀作が集った感があります。ひとえに各局制作者の方々の努力のたまものに他ならないところでしょう。テレビが置かれた厳しい現状・将来をネガティブに報じるニュースが目立ちがちな昨今、テレビマンたちの矜持や熱情が大きなパワーとなったことが、素晴らしい結果を生んだのだと確信しています。

テレビの未来を明るくするためには、いかに素晴らしい番組を視聴者に提供できるかにかかっていることは明白です。最優秀受賞作品をはじめとして、力溢れるバラエティ番組に今回数多く触れられたことは、テレビの世界にとって大いなる収穫となったに違いないと感じているところです。各番組の講評を以下につづります。

最優秀=朝日放送テレビ/ちょいバラ 濱田祐太郎のブラリモウドク(=写真)
とりわけ関西で濱田祐太郎人気は高く、5月30日には吉本新喜劇とコラボした舞台『盲目のお蕎麦剣士が巻き起こす新喜劇』が、濱田さん主演によりなんばグランド花月で上演され、大成功を収めました。一方で、テレビメディアへの露出は決して多いとは言えない濱田さん。そんな彼のこのたびの冠番組は、偽善に走ることなく等身大の姿を見事に表出させていました。障害のある人がテレビに登場することは、まだまだ当たり前とは言えません。そんなテレビの現状に軽やかな風穴を開けてくれたことに対し、すべての審査員から高い評価が集まりました。

優秀=山形放送/勝手にタイムスリップテレビ 昭和小僧3 今世紀最後の!?昭和100年直前SP
とっておきの昭和秘蔵映像とラジオ的なトーク。出演者たちの楽しさが見る者に十二分に伝わってきました。地元の皆さんに愛され続けている理由もよく分かります。昭和を礼賛し切っていないバランス感覚もお見事でした。今後ローカル的な盛り上がりを全国の視聴者により受け入れさせる、その可能性にも挑戦いただけたら、さらに素晴らしいものが生まれるかと思います。

優秀=テレビ東京/出没!アド街ック天国 祝!放送1500回 アド街の30年 BEST30
単なる周年ものの「総集編番組」に留まることなく、しっかりと現在へとつなげた作りに仕上げているあたり、さすがテレビ東京の看板番組との思いを強くいたしました。30年、1,500回の歴史が培った歴史の重みは他に代えがたいものです。40年、2,000回へと歩み続けてほしいと強く願っています。関東圏以外のエリア特集についてもさらなる充実を望みたいところです。

優秀=静岡放送/アナタは知らない・・・ギョーカイ知名度100%?さん
既視感だらけのバラエティ番組が目立つ中、企画・アイデアにおいて当番組は群を抜いていました。ディレクターのセンスに「技あり!」と申しあげたいところ。深海魚専門漁師、パンダをこよなく愛す男性。自動車ドレスアップの女帝、K-POPのMC、いずれのVTRも人間愛に満ちた仕上がりになっていました。スタジオの過不足ないトーク展開にも好感を持ちました。

優秀=中京テレビ放送/ヒューマングルメンタリー オモウマい店
今回の出品作品は、全国的な人気番組であることに決して甘んじることなく、番組タイトルがまさに示すとおり、人間味あふれたグルメドキュメンタリー要素に満ちたバラエティとして、多くの審査員から高評価を得ました。能登半島地震で被害に遭った寿司店を経営する父とその息子への丁寧な取材。親子の絆の物語が深く心を揺さぶります。これ見よがしなカメラワークや過剰演出を抑えた手法も功を奏しました。最優秀に匹敵する魅力があります。

優秀=テレビ新広島/TSS開局50周年記念特別番組「クイズ!正解はこども」
子どもの自由な発想をメインに据えた番組作りを評価するという審査員の声が集まりました。とりわけ「熱々のラーメンを氷の箸で食べる」という発想・企画に対しては、「面白い!」と絶賛を受けました。他の企画についても賞賛の類が多かったのですが、最終的に子どもが主役になり切れていない部分が若干あることや、類似バラエティ番組の存在を指摘する意見も見られました。

優秀=RKB毎日放送/ハカタの王様 福岡センバツしんどい通学路選手権2025
通学路、しかも「坂道のきつさ」を比べるという企画自体がとても面白かったです。自由な発想から、若者に訴求する番組を生み出している番組スタッフに敬意を表します。ローカル企画に収まることなく、他県へのひろがりが生まれているのも素晴らしいところ。校長先生がきつい坂を歩くことなく「クルマです......」と正直に答えていたシーンは笑えました。


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