8月21日中央審査【参加/56社=56作品】
審査委員長=山本康一(三省堂辞書出版部部長兼大辞林編集部編集長)
審査員=青木江梨花(脚本家、日本脚本家連盟理事)、やきそばかおる(コラムニスト)、やすみりえ(川柳作家)
※下線はグランプリ候補番組
起床から就寝まで、一日の生活時間、生活場面に寄り添うのがラジオの特質だとすれば、リスナーと同じ時間を共有して進行する生ワイド番組は最もラジオらしいジャンルと言えるかもしれない。しかし、リスナーと同じ時間を共有するという共通項のみで、その内容はバラエティに富む。今回、地区審査を勝ち抜いてきた番組も、社会課題を取り上げるものから、公開生中継まで幅広く、それぞれに生ワイド番組の枠を活かしきった優れた番組であり、甲乙つけがたく、最優秀の選出は難渋を極めた。
最優秀=九州朝日放送/MANDAN(=写真)
きょんちゃんのオープニングトークを受けて、突如、プロデューサーが高級炊飯器を買いに家電量販店に走るという予定外の行動に端を発し、次々に先の読めないハプニング的展開が続く。その間、炊飯器の梱包を解き、お米の購入から、実際に米を炊き、実食するまで、きょんちゃんとハニーさんがひとつひとつ丁寧に言葉で伝えていくその描写力とトーク力の素晴らしさに聞き入ってしまう。ハニーさんが「人生の大先輩」と呼びかけるリスナーとのやりとりもなんともほほ笑ましい。生番組でありながら、想定外の進行もものともせずに好機にできるのは、パーソナリティとスタッフの普段からのコミュニケーションとチームワークの賜物であり、それこそ最優秀に値すると評価された。
優秀=エフエム青森/ラジmoTT!
「令和に残したい津軽弁・南部弁」をテーマに、リスナーから募った方言を紹介し、解説するd-iZe(ダイズ)さんと里村好美アナウンサーがまさに方言でしゃべりまくり、笑いまくる楽しく痛快な番組。「残さないと残らない方言を紹介したい」と明確にしたことで、投稿の方向性もはっきりし、興味深い方言とエピソードが次々に紹介されてテンションが上がる。県外の者からすると、青森の方言そのものに関する解説などが欲しくなるが、地元の方々が、一日の仕事を終えて自分の生活に帰っていく金曜夕方にリラックスして聞けることを大事にしているのだと思い返された。
優秀=TBSラジオ/土曜ワイドラジオTOKYO ナイツのちゃきちゃき大放送
「王道の生ワイド」と自称するに値する番組の500回記念回。毎回新作の漫才で始まり、多彩なゲストも加えたメリハリの利いた構成はさすが。特に、前身番組の永六輔さんの墓前に、孫である岡﨑育之介さんと外山惠理アナウンサーが参る中継では外山さんによる愛あふれる逸話、岡﨑さんによる知られざる永さんのエピソードなど実に聞けて良かったと思える内容。サンドウイッチマンをゲストに迎えた公開生放送もあり会場の盛り上がりが伝わってくるが、ここはもうひと展開あってほしかったという感想も出た。
優秀=山梨放送/はみだし しゃべくりラジオ キックス
山田ルイ53世さんをパーソナリティに、夏休みが明けて不登校が顕在化する9月の金曜午後、3時間半にわたって小児神経科の医師、親の会、フリースクール運営者、そして当事者の子どもたちに不登校について語ってもらい、解決を探る番組。リスナーとの交流がもっと欲しかったという意見も出たが、子ども・家族・地域それぞれの問題をしっかりとらえ、考える機会を作る構成に制作者の問題解決への情熱と意気込みが感じられた。
優秀=東海ラジオ放送/Saturday Flavor Special 「東海」は誰のもの?
当たり前に思っている「東海」という地域が、3県なのか、静岡も入れて4県なのか、4時間にわたる追求が展開する。古代から現代に至るまで、歴史上の「東海」をひもとき、果ては大学名や自治体の名称など、さらには局の名称の由来までも深掘り。もっと意見を戦わせてもらいたかったという感想も出たが、答えをあえて決めずに、わいわいがやがやと交わされる話を楽しみながら知識・教養も深まり、まさに土曜日午後にふさわしい良企画との評価。
優秀=FM802/on-air with TACTY IN THE MORNING
早朝から5時間、TACTY(大抜卓人)さんの軽やかで落ち着いた語りで音楽、生活情報、メール紹介などさまざまな話題が入れ替わり立ち替わりし、進行する。リスナーの朝の生活時間に溶け込むような番組であるが、毎日これだけの話題を仕込むのは並大抵のことではなく、制作者の力量の厚みが感じられる。
優秀=広島エフエム放送/Mash The Radio
三次市からの公開生放送。冒頭、江戸時代から交通の要衝として栄えた歴史の紹介後、市長の話に続き、DA PUMP のYORIさんが生まれ育った町の記憶を語ると会場は大盛り上がり。こちらもその場にいるような臨場感と一体感に、いつしか三次を訪れたくなり、なるほど、こういう地方の盛り上げ方もあるのだと制作者の取り組みに感心した。