米ディズニーのアイガーCEO リニアテレビ部門売却の可能性を示唆 業界に波紋

編集広報部

WGA(米脚本家組合)とSAG-AFTRA(米映画俳優組合)のダブルストライキで業界が大きく揺れている米国で、ディズニーのボブ・アイガーCEOの発言がさらに波紋を広げている。

アイガー氏は7月13日、CNBCのインタビューに応じ、「ディズニーにとってリニアテレビ事業はもはや中核とはみなされない」「これまでディズニーの主たる収益源として事業の根幹だったビジネスモデルは間違いなく崩壊している」と発言。そのうえで、ABCを含むリニアテレビ事業の売却も視野に入れていることを示唆した。

リニアテレビ(タイムテーブルに沿ってリアルタイムで視聴する従来型のテレビ放送)はメディア企業にとって長年にわたる事業の根幹だ。その主たる収入源はライセンス収入(ケーブルプロバイダーからテレビ局に支払われるチャンネルの再送信同意料)と広告収入だった。ところがコードカットによる視聴者のテレビ離れと、配信モデルの台頭でライセンス収入も広告収入も減っている。「われわれは今、市場の変化に応じて対策を講じようとしているところだ」とアイガー氏は話している。ただし、スポーツ専門のケーブルチャンネルESPNだけは手放さない意向のようだ。スポーツ中継はテレビに残された唯一と言っていいドル箱であることが理由だという。

アイガー氏のこの発言は、傘下のABCだけでなくCBS、NBC、CNNなど競合他社の心理にも大きく影響するとアドウィーク誌が伝えている。同誌は、あくまでも分析のひとつとしながらも、ディズニーほどの巨大な複合企業体がリニア事業を売却すれば、テレビ業界に与えるインパクトは計り知れないと指摘。特にニュース報道に携わるジャーナリストにとって、待遇の悪化はもとより、報道活動の経費削減、さらには職場と仕事そのものの存続まで危うくするという。大手ネットワークの衰退は関連のローカルニュース局にまで波及する。

アイガー氏は同じCNBCのインタビューで、現在進行中のダブルストライキについても、「きわめて不愉快。業界全体にネガティブな影響を及ぼす。(ライターと俳優側の)要求は実に非現実的だ」と発言し、WGAとSAG-AFTRAの怒りを煽った。このインタビューの翌日、SAG-AFTRAがストライキ突入を決めている。

アイガー氏は2022年11月にディズニーのCEOに電撃復帰し、当初は24年末までだった契約を26年末まで延長することが発表された。復帰後すぐに大型レイオフやコンテンツ投資の見直しに着手 したアイガー氏だが、今後はさらに経営レベルでの抜本的テコ入れが始まりそうだ。その動きに業界全体が注目している。

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