勢いづく地域連携事業 地元に根差した多彩な展開①

編集広報部
勢いづく地域連携事業 地元に根差した多彩な展開①

ローカル各局が地元の自治体や企業などと協力し、地域の活性化や課題解決に取り組む連携事業。ここでは民放onlineが地上テレビ社に行ったアンケートに基づき、いくつかの事例を紹介していく。


航空機が翼に人工衛星を搭載したロケットを吊り下げ、空中でロケットを打ち上げる水平打ち上げ方式。大分県は2020年4月、アメリカの宇宙開発企業、ヴァージン・オービット社と連携し、一般的なロケット打ち上げ施設が不要な"水平型宇宙港"として大分空港を活用することを目指している。運用開始5年の経済効果は、人工衛星の部品や燃料のサプライチェーン構築、新ビジネス創出、観光などで102億円を見込む。県は20年9月に政府の宇宙ビジネス創出推進自治体に採択され、21年には地元企業を中心に一般社団法人おおいたスペースフューチャーセンターが民間主体で設立された。宇宙ビジネス推進のための情報提供や人材育成に取り組んでいる。

同センターの正会員に大分の民放テレビ3局が名を連ねる中、大分朝日放送は「宇宙(そら)プロジェクト」(=写真㊤)を展開している。県の宇宙関連事業を番組で紹介するほか、15秒のステーションメッセージを放送。この7月には、大分市のデパート・トキハ本店で開催された「宇宙を体感しよう!TOKIWA SPACE PARK」に出展しパネル展示などを行った。県の動画制作業務などプロポーザルの獲得なども通じて、一定の収益につながっているという。

プロジェクトには部署横断型で7人が参加。ビジネス戦略局ビジネス戦略部の橋本英子部長をリーダーに、営業、編成、技術、東京支社などからメンバーが集まる。今後は教育事業なども視野に入れており、「県の動向をみながら可能な限り発展的に捉えていきたい」(橋本氏)としている。

山形県沿岸部の庄内エリアに着目した番組制作を続けるのはさくらんぼテレビだ。内陸の山形市に所在する同社は、19年度から庄内エリアの鶴岡市と酒田市に特化した番組を年に1回放送している。地域に根差した県域局として、県内各地から番組テーマを拾い上げて全県向けに発信することには意義があるとの考えから企画を立ち上げた。2市の人口を合計すると山形市(約24万5000人)にほぼ並ぶため、通常の番組よりも地元での"引き"の強い番組を制作することで、同エリアを商圏とするスポンサーのさらなる取り込みも狙いとしている。

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<『伝統を未来へ~酒田の文化をつなぐ担い手たち~』(2022年2月27日)のロゴ>

初回の19年度は文化の交流地としての酒田にフォーカスし、農村歌舞伎である「黒森歌舞伎」などの伝統文化とその守り手の活動を描いた。20年度は、地元の食材と伝統工芸という切り口からそれらを継承する若い世代をテーマに。コロナ禍の影響を受けた21年度は、衰退しつつある「酒田舞娘」を取り上げ、奮闘するベテランや若手の姿に迫った。

こうした"酒田特番"を放送したことで、「酒田の伝統文化の周知につながり、伝統の継承に取り組む人々への励みにもなった」と、営業編成局編成業務部の柳澤浩ゼネラルプロデューサー。営業面での成果も順調で、同特番は今後も継続する予定だという。さらに、庄内全エリアを対象にした食に関する番組企画も進行している。海の幸、山の幸、農作物などに恵まれた土地であることから、「エリアの豊かな食文化を紹介する"庄内特番"を秋頃に放送し、"酒田特番"に並ぶ柱に育てたい」と柳澤氏は意気込む。

放送エリア内を対象に、一つひとつの自治体をめぐってその魅力や見どころを番組で内外に発信する――。近年、いくつかのローカル局で見られるこうした取り組みを、19年5月から継続しているのが新潟テレビ21。その名も「探県プロジェクト」だ。全国5位の広大な面積に、東西300㎞の海岸線、平野や山間部といった特徴的な地理・気候を擁する新潟県。まだ掘り起こしていない地域の魅力を「探」り、地域の活性化につなげるべく、県内37の全市区町村(新潟市は8区としてカウント)をひと月に一カ所ずつ取り上げている。コロナ禍での休止も経ながら、この8月に一巡目を終えた。

各地のロケの模様は、「まるどりっ!UP」(土、9・30―11・15)や「スーパーJにいがた」(月―金、18・15―18・52)などの自社制作番組で放送するだけでなく、特設サイトでこれまでの動画を掲載している。企画の立ち上げ当初は、同社の桒原美樹社長が自ら全自治体の首長を訪ねて趣旨を説明。プロジェクトは19年3月発足のバーチャル部署"探県部"が担い、自治体側の要望を踏まえながら取り上げる内容をフラットに決めているという。

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<プロジェクトの15秒告知には、桒原社長らも探検隊の衣装で出演した>

20年からは「探県」ブランドを冠に、新潟ふるさとCM大賞をスタート。イベントや特番を通じた各市町村の30秒CMコンテストを展開しており、ここでも"ふるさとの魅力再発見"に貢献している。「県内の魅力を探る営みはローカル局の基本の基」と、報道制作局の小山裕久探県部長は語る。今後もプロジェクト名を冠したコーナーは継続する方向。桒原社長も首長を再訪しており、自治体との関係をより密にするとともに、防災・減災をテーマとした協業の取り組みを探っていくという。

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