齊藤裕弘・JCOM BS社長「J:COMグループの総力を結集した視聴体験の提供」

齊藤 裕弘
齊藤裕弘・JCOM BS社長「J:COMグループの総力を結集した視聴体験の提供」

早いもので、BS松竹東急さまから20257月に事業を継承し、J:COM BSとして半年が経ちました。20252月の撤退発表から、わずか4カ月という短い期間で、放送を中断することなく7月を迎えられたのは、正直に言えば奇跡と言わざるを得ません。放送継続を発表したのが6月中旬ですから、放送継続できる確証を得られたのが、いかにギリギリだったか、ご想像いただけることと思います。
業界の皆さまからは「J:COMさんじゃなければ到底できませんね」と称賛半分、「無茶苦茶なスケジュールでよくやりましたね」と半分呆れられながら、何とかスタートを切ることができました。

J:COMグループの多彩なアセット

J:COMグループは1995年創業、全国5大都市圏(札幌、仙台、関東、関西、九州・山口)で基幹となるケーブル・プラットフォーム事業を展開、2024年度末で約573万世帯にご加入いただいています。また、メディア・エンタテインメント事業としては、放送・配信事業4社(株式会社ジェイ・スポーツ、ジュピターゴルフネットワーク株式会社、ゴルフネットワークプラス株式会社、チャンネル銀河株式会社)、映画事業1社(アスミック・エース株式会社)、音楽ライブ・イベント事業1社(株式会社エニー)などをグループ会社として運営しています。

これらのグループアセット活用として、筆頭に挙がるのは「放送・通信事業」の各社。コンテンツ調達、番組制作、放送設備および運用など、当社の事業運営と共通するアセット、ファンクション、人材を有しており、定量面、定性面でシナジーを発揮することができます。J:COM BSが短期間で放送継続を実現できたのは、各社のリソースによるところが大きいのです。

次に挙げるグループアセットは「ケーブル・プラットフォームご加入世帯」。約573万のご加入世帯とは、STBを介した地上波・BSCS放送の提供のみならず、動画配信、インターネット、電話、電力などの複数のサービス提供により、強固なリレーションシップを築いています。
お客さまとは、STB経由のテレビ受像機、自社提供アプリ、マガジン(ウェブ・冊子)などなどの多様なコンタクトポイントでコミュニケーションが可能です。当社の認知向上、番組視聴促進といった訴求面での活用のみならず、これら複数のコンタクトポイントを広告媒体として活用し、BS放送のCMと地域セグメント、属性セグメントで組み合わせ、効果的な広告訴求効果を実現します。

三番目は「視聴ログ分析」。J:COM TVサービス(ケーブルテレビ)をご利用の多くのお客さまからパーミッション(許諾)をいただいた約260万世帯について、STBによる膨大な視聴ログを収集、さまざまな分析を行っています。202510月に初めて行った改編リニューアルに際しても、当社が掲げるチャンネルコンセプト「J:COM BS。大人の毎日に、ワクワクを。」の体現に挑戦。
視聴ログ分析に基づき、視聴者のニーズに沿った「韓国・中国ドラマ」「昭和の名作ドラマ」「歌謡番組」などを編成しました。これにより、7月から9月の暫定編成期に落ち込んだ視聴率が、10月以降は事業継承前とほぼ同水準にまで回復することができました。

今後、当社の視聴ログの蓄積が進むことで、さらにユーザーニーズに即した番組編成の実現、さらには未視聴世帯の中から視聴可能性の高い世帯を抽出、ピンポイントアプローチによる新規視聴世帯拡大の可能性にも期待しています。
また、視聴ログ分析に基づくメディアプラン策定は、各グループチャンネルで既に行っており、クライアントさまの効率的な広告出稿に貢献しています。当社チャンネルにおいても、同様のプラン策定に視聴ログ分析を役立ててまいります。

主要なJ:COMグループのアセットに触れましたが、現在は限られた体制であるため、まだ十分な活用には至っていません。多彩なアセットを使い倒して、魅力的な番組編成、有益な広告媒体、両面の向上を続けてまいります。

放送コンテンツの可能性を追求

現在のJ:COM BSはメディアとしてのファンダメンタルズ向上に注力するべき局面であることは重々承知しており、ひたむきに足腰の強靭化を進め、視聴者さま、クライアントさまの期待にかなうチャンネルとなるべく努力いたします。ただ、人口減少が進む中、成長もどこかで止まり、縮退することは必定。成長領域を早く定め、挑戦を開始したいと思います。

コンテンツビジネスに関わる誰もが指向する海外市場は、当然ながら可能性の一つと考えています。先に挙げた、アスミック・エースは劇場映画だけでなく、テレビアニメシリーズの企画、製作、海外配信事業者向けのライツセールスを拡大してまいりました。昨年は、湯浅政明監督設立の新スタジオ「ame pippin」へ参画、さらなる事業成長を目指しています。
海外向けアニメ事業は製作リソースの枯渇という課題はあるものの、成長領域であることに変わりはなく、BS放送事業者として展開する有力候補の一つと考えます。

また、J:COMとして、海外FAST事業者向けの番組供給を予定しています。日本の放送コンテンツのダイレクト輸出の可能性を検証します。市場性が見出せれば、放送コンテンツのマネタイズ施策の一つとなると同時に、海外視聴者のニーズの把握につながります。日本の視聴者ニーズを前提に、海外視聴者ニーズも踏まえた番組制作が見出せれば、自社制作番組の可能性を拡げられるかもしれません。

いずれにしても、事業の健全化を果たしたうえでの話、民放連の一員として、放送の価値を次世代につなぐ挑戦を続けてまいります。

最新記事