6月22日にカナダで成立した「オンラインニュース法」への対抗措置として、米Meta社は8月1日、同社がカナダ国内で運営するFacebookとInstagram上からニュース配信の停止(投稿の削除とブロック)を開始した。オンラインニュース法 は大手オンライン・プラットフォーム(実質的にはGoogleとMetaの2社が対象といわれる)に、ニュースを提供する報道機関との間で記事使用料の支払いに関する交渉をするよう義務づけている。現在、カナダのラジオテレビ通信委員会(CRTC)が6カ月後の施行に向けて、対象となる報道機関や交渉プロセスなどの詳細を詰めているところだ。
カナダの文化遺産省によると、同国のオンライン広告の売り上げは2社で8割以上を占め、2008年から現在までに多くの地元報道機関が閉鎖に追い込まれているという。それを打開し、オンライン・プラットフォームと報道機関の間で公正な収益配分を可能にしようというのが新法の狙いだ。
Metaが停止するのは報道機関によるニュース配信や記事投稿だけでなく、ユーザーがシェアするそれらのリンクも対象となる。例えば、米国内のFacebookやInstagramのユーザーが、あるニュースリンクを投稿・シェアした場合、カナダのユーザーはそのリンクを開いて記事を読むことができなくなる。この措置に対して、すでにカナダ国内のジャーナリストらが一斉にX(旧Twitter)上で苦言を呈している。
同社は「新法に従うためには、カナダでのニュース配信を止めるしかない」と判断、「ビジネスとしての決断」で今回の措置に踏み切ったとしている。同社はかねて、「ニュース投稿で利益を得ているのはMetaではなく、提供しているニュース媒体」「Facebookのニュース投稿やリンクシェアから各報道機関のサイトへのユーザー流入は推定1億7,300万ドルの無料マーケティングに値する」と主張し、法案に反対している。
Googleを擁する米アルファベット社も6月末、新法の施行から180日以内にカナダのGoogleプラットフォーム上でニュースを表示しない方針を明らかにしている。
同様の法案は他国でも提起されている。すでにオーストラリアでは21年に法律として制定された 。米国では「ジャーナリズム競争・保護法案」(Journalism Competition and Preservation Act :JCPA)」が今年6月、連邦上院司法委員会を通過。カリフォルニア州議会でも「カリフォルニア・ジャーナリズム保護法」が今年6月に州下院を通過している。米国内では連邦・州レベルいずれも法律として成立するまでの道のりは遠いが、これらが新法として成立した場合、Metaはカナダと同様の措置をとるものとみられている。