米パラマウントとスカイダンスの合併が完了 新会社「Paramount Skydance Corporation」発足

編集広報部
米パラマウントとスカイダンスの合併が完了 新会社「Paramount Skydance Corporation」発足

米国のパラマウント・グローバル(以下、パラマウント)とスカイダンス・メディアは8月7日、総額84億㌦規模(約1兆2,453億円)の合併を完了し、新会社「Paramount Skydance Corporation」が発足した。長らくパラマウントの支配株主だったシャリ・レッドストーン氏は新会社の取締役会入りの提案を断り、合併による17億5,000万㌦(2,590億円)の現金を受け取り経営から完全に退いた。

パラマウントはCBSやMTVなどのテレビブランドと、映画『ゴッドファーザー』『トップガン』などを生んだパラマウント・ピクチャーズを傘下に持つ老舗メディア。しかし、この10年はストリーミング戦争で後れを取っており、今回の合併で強固な財務基盤を得る。新会社の会長兼CEOデヴィッド・エリソン氏はIT大手オラクルの創業者ラリー・エリソン氏の長男で、映画『ミッション:インポッシブル』シリーズをプロデュースするなど制作会社スカイダンスを率いてきた。

2社の合併は1年以上にわたって難航した。特に、トランプ大統領の対パラマウント訴訟が最後の壁となった。しかし、パラマウントが1,600万㌦(約23億5,000万円)を支払うことで7月2日に和解が成立すると(既報) 、直後の7月25日に米連邦通信委員会(FCC)が合併を承認。その後、わずか2週間で合併に至った。

新会社の社長にはNBCユニバーサル(NBCU)のジェフ・シェル前CEOが就任、ストリーミング部門はNetflixでコンテンツ戦略を担ったシンディ・ホランド氏が率いる。パラマウントの共同CEOだったジョージ・チークス氏はテレビ部門の会長として残留。一方、パラマウントのケーブル部門を率いたクリス・マッカーシー氏とパラマウント・ピクチャーズとニコロデオンを統括したブライアン・ロビンズ氏は退任した。

エリソン会長兼CEOは「今後数カ月で経営体制とコンテンツ制作、事業展開を再構築する」と表明。事業を「スタジオ」「ダイレクト・トゥ・コンシューマー」「テレビメディア」の3つに再編し、全社単一のテクノロジープラットフォーム導入による意思決定と制作効率の向上、ストリーミング事業の拡大、キャッシュフローの最大化を最優先課題に据えるとした。詳細な戦略は11月初旬の最初の決算発表時を予定している。

今回の合併が業界に大きな波紋を広げたのも事実だ。訴訟におけるパラマウントとトランプ大統領の和解は「合併承認を引き出すための"政治的取引"」と批判され、その後スカイダンスが承認を得るためにFCCに提出した条件も「政権への迎合」と非難された。その条件とは、▶CBSのニュース部門における偏向報道の排除▶ニュース部門に公平性に関する苦情を審査するオンブズマンを最低2年間設置▶多様性プログラム(DEI)の廃止――だ。FCCのブレンダン・カー委員長はこれらを「事実に基づく報道と公正なジャーナリズムを確保するために必要」と擁護したが、民主党のアナ・ゴメス委員は「ニュース編集への政府の統制を容認し、憲法修正第1条に反する」と批判し、評決で反対票を投じた。

新会社の先行きに対する投資家や業界の懸念も指摘されている。まずCBS内部の士気低下だ。訴訟が和解した直後、トランプ批判のジョークで知られる人気深夜番組『The Late Show with Stephen Colbert』が「財務的な理由」で打ち切られ、CBS内外で反発が広がった。また、パラマウントは依然としてケーブルネットワークへの依存度が高いが、この分野は急速に縮小している。新経営陣は20億㌦以上のコスト削減を掲げるが、過去数年で繰り返された人員削減や予算縮小を踏まえると、実現性を疑問視する見方も強い。最大の関心事は有料配信サービス「Paramount+」の扱いで、加入者は7,700万人と増加しているものの3億人超のNetflixには大きく水をあけられ、競争力の強化も急務となる。新会社が今後どのような戦略で変革を進め、ハリウッドの勢力図に影響を与えるのかが注目される。

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