米MLB(メジャーリーグベースボール)は11月19日、ESPN、NBCユニバーサル(NBCU)、Netflixとテレビ放送権を含む新たな3年間(2026~28年シーズン)のメディア権契約を締結した。同日、MLBが発表した(冒頭画像はMLB公式アカウントのXへの投稿画像)。地上波、ケーブル、配信を横断する複数プラットフォーム型の契約で、総額は年間約8億㌦(約1,240億円)とされる。
⚾ESPN
新たな契約の柱となるのは、これまでMLBの公式配信サービス「MLB.TV」が担ってきた年間数百試合規模の市場外(アウト・オブ・マーケット)試合の取り扱いだ* 。この権利はディズニー傘下のESPNが包括的に掌握することになった。ファンは市場外の試合を2026年からESPNで視聴できるようになり(ただし有料)、ESPNアプリ(関連既報)も年間150試合超を配信する。また、ESPNは今年初めまで権利を持っていた30試合の全国放送権を維持するとともに、メモリアルデーの試合やオールスター後半戦初戦の放送権も得た。加えて、6球団(サンディエゴ・パドレス、クリーブランド・ガーディアンズ、シアトル・マリナーズ、ミネソタ・ツインズ、アリゾナ・ダイヤモンドバックス、コロラド・ロッキーズ)の市場内独占配信権も獲得し、ローカルの権益にも踏み込む内容となった。ESPNの年間契約料は約5億5,000万㌦(約850億円)とされる(以下、権料額はウォール・ストリート・ジャーナルの報道による)。なお、ESPNはNFL(ナショナル・フットボール・リーグ)のメディア資産を取得することも合意している(既報)。
⚾NBCU
NBCUは年間約2億㌦(約311億円)を支払い、ESPNから承継した『Sunday Night Baseball』を新設する。地上波NBCでMLBの全国中継が26年ぶりに復活し、NFL(アメフト)やNBA(バスケ)とあわせて日曜の夜に年間を通じてスポーツを編成する。さらにポストシーズンのワイルドカード全4シリーズの権利も獲得し、NBC、配信サービスのPeacock、新設のスポーツ専門ケーブルチャンネル「NBCSN」で中継する。また、2026年から日曜の正午前後に始まる18試合をパッケージで取得し、MLBドラフトの一部と、マイナーリーグのトップ選手が集う「Futures Game」もNBCとPeacockで放送・配信する。
⚾Netflix
Netflixは年間約5,000万㌦(約78億円)を支払い、シーズン開幕前夜の試合と、オールスターでのホームラン・ダービー、2026年の「Field of Dreams Game」の試合を配信する。これは映画『フィールド・オブ・ドリームス』(1989年)の舞台となったアイオワ州ダイアーズビルの撮影地に隣接する特設球場で行われるイベント型試合で、2021年の初開催では選手がトウモロコシ畑から登場する演出が話題となり、高視聴者数を記録した。翌年の2回目以降開催されていなかったが、2026年に復活する。Netflixにとっては2026年の「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」の日本国内における独占配信権獲得(既報)に続いてのMLBとの年間契約だけに、ライブスポーツ領域での存在感をアピールする。
このほか主要局の既存権利は継続する。Fox Sportsは毎週土曜の全国中継、ワールドシリーズ、オールスターゲーム、ポストシーズンの権利を維持し、ワーナー・ブラザース・ディスカバリー(WBD)傘下のTBSは火曜夜のパッケージとポストシーズン中継を続ける。Apple TVも金曜夜のダブルヘッダーを配信する。
⚾ワールドシリーズの記録的な視聴者数も追い風に
今回の複数契約は、今年初めにMLBとESPNが30年続いた契約を2025年シーズン終了後に終了することを発表したのを受け、MLBがメディア権の抜本的な見直しを迫られたことが背景にある。今年のワールドシリーズ最終戦は世界中で5,100万人以上が視聴したことを筆頭に、ポストシーズン、レギュラーシーズンともに近年まれにみる高視聴を獲得したこと(既報)も追い風となったようだ。
* 米国では地元チームの試合は地元のテレビ局がメディア権を持つため、ライブ配信には対応していない。ただし、MLB公式の「MLB.TV」は市場外(アウト・オブ・マーケット)の試合も配信している。このほかMLB.TVは全試合のライブ配信だけでなく過去の試合も見逃し視聴できるなどさまざまなプランがある。
