【最優秀受賞のことば】朝日放送テレビ ちょいバラ 濱田祐太郎のブラリモウドク(2025年民放連賞テレビバラエティ番組)

児玉 裕佳
【最優秀受賞のことば】朝日放送テレビ ちょいバラ 濱田祐太郎のブラリモウドク(2025年民放連賞テレビバラエティ番組)

盲目のピン芸人・濱田祐太郎さん。白杖を持ち、スーツ姿で披露する正統派しゃべくり漫談は高く評価され、『R-1ぐらんぷり2018』で優勝。SNSやネットラジオ番組では、彼ならではの自虐エピソードがさく裂。独特な表現で世間を斬る姿は私にとって刺激的で衝撃的。いつかバラエティ番組のお仕事でご一緒したいと思っていました。

 濱田さんはどんな世界を見ているんだろう――

見慣れたはずのこの街も、濱田祐太郎さんが歩くことで、違う表情を見せてくれるかもしれない。街の人とのやりとりを通じて、私たちが気づかなかった"景色"や"思い"が浮かび上がってくるかもしれない。そして、彼がネタやSNSでしか発信していない 「モウドク」(=盲毒)を、地上波バラエティ番組で思う存分発揮していただきたい――。そういった思いで、「盲目のピン芸人による街ブラバラエティ」を企画しました。

街ブラロケをお供してくださったのは、濱田さんを「お笑い座頭市」と称する仲良しの先輩芸人、藤崎マーケットのトキさん。以前ユニバーサル・スタジオ・ジャパンにプライベートで一緒に遊びに行かれたそうですが、アトラクションで必ず 3D眼鏡を装着し、さらに遠くにそびえるホグワーツ城を前に、ハッキリと「本格的ですね」とつぶやく濱田さんを目撃されたそう。その逸話を聞き、このお二人なら絶妙なコンビになるのでは、と確信し、出演をお願いしました。

初回のロケでは「大阪・堀江」というオシャレタウンに伺ったわけですが、「こんだけ歩いても点字ブロック1個もない」「オシャレなだけの街」などと濱田さんならではのモウドクが冴えわたります。そして、どうやって飲食店で商品を注文するのか? どうやって服を買ってるのか? など、濱田さんの生きる世界が垣間見える街ブラバラエティとなりました。

濱田さんのナレーションで解説放送

また、放送にあたり、目の不自由な方のための「解説放送」を実施。バラエティ番組では解説放送のある番組は少ないのですが、「せっかくやるなら濱田さんらしい"ドク"のある解説を」ということで、ロケの思い出や出しきれなかった「モウドク」を濱田さん自身にナレーションをお願いし、語っていただきました。

ナレーション収録方法も独特です。映像を見ることがない濱田さんに対し、事前に簡単な原稿を作成し、iPadの読み上げ機能で聞いて覚えてもらいます。収録現場で、一度私が読み上げ、映像の内容を音で確認。そして、ナレーションを読み上げるタイミングになれば横にいる私が肩にタッチして、読んでいただきました。当たり前だと思っていたナレーション収録という工程を一つずつ分解し、「どうすれば濱田さんにとって自然な環境になるか」を考えることで、私自身の"思い込み"にも気づかされました。

果たして濱田祐太郎さんの目に、関西の街はどう映ったのか? そして、この番組を通じて、あなたの心の中にあるハンディキャップへの偏見=「モウドク」(猛毒)に気づいていただけるものになっていれば、うれしいです。

最後になりましたが、ご出演いただきました濱田祐太郎さん、いつも優しくロケを支えていただきました藤崎マーケットのトキさん、ゲストの皆さま、ご協力いただいたロケ先の皆さま、そしていつも私の番組を温かく見守ってくださる朝日放送テレビの先輩方に心から感謝申しあげます。本当にありがとうございました。

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