民間放送教育協会(民教協)の「民教協スペシャル」が加盟するテレビ33局で2月5日(土)から順次放送される。36回目の今回は、テレビ朝日制作の「ハマのドン"最後の闘い"─博打は許さない」。横浜市のカジノ誘致に真っ向から反対した"ハマのドン"こと藤木幸夫氏の闘いを描いた。
歴代の総理経験者や地元政財界に影響力を持つ保守の重鎮、藤木氏。菅義偉官房長官(当時)や横浜市が山下ふ頭へのカジノ誘致を進める中、菅氏を支援してきた身でありながら反旗を翻した。「権力側にいながらその中枢に闘いを挑む。おかしなことに声を上げる姿勢に強烈な印象を持った」と、ディレクターを務めた松原文枝・ビジネスプロデュース局イベント戦略担当部長は取材の経緯を明かす。
<山下ふ頭>
藤木氏の抵抗の理由は、かつて港湾にはびこった博打が労働者や家族を崩壊させるのを見てきたから。番組は終盤、昨年夏の横浜市長選での誘致反対派の勝利を描く。「言うべきことを言い行動する。人心とは、選挙とは何か。番組を通じて社会のあり方を問いたかった」と松原氏は振り返る。
<横浜市長選での藤木氏>
民教協スペシャルは加盟局の企画を審査し、毎年1作品を番組化している。放送日時の詳細は民教協のウェブサイトを参照。
審査委員コメント
崔洋一さん(日本映画監督協会理事長)
今どきのテレビにおける時事性を持ったドキュメンタリー、なおかつ、全国的に話題になっていることに関しては、スリリングでサスペンスフルなエンタメ的要素も求められる。そして港湾労働は、いろんな意味での人間の根源を象徴しており、思想の変化、時代の変化の中で労働形態も変わってくる。
藤木さんを通して描き出された、生きる意味、男の矜持をぜひ感じ取って頂きたい。
森達也さん(映画監督・ドキュメンタリー作家)
僕も2年前、政治をテーマにしたドキュメンタリーを撮りましたが、腕章がないと記者会見も撮れないし、本当に悔しい思いを散々しました。それで、見ながら思いました。
テレビが本気になれば、こんなスゴいもの作れるじゃないかと。
編集も見事です。微妙なコメントも非常に丁寧に、そして丹念に拾ってくれているのが全体の完成度の高さにつながっている。一言で言えば、とても面白かったです。ずっと面白かったです。
星野博美さん(ノンフィクション作家)
発信される情報がどんどんパーソナル向けのものになっていくなかで、久しぶりに「マスコミの仕事」を見させていただきました。
企画段階ではハマのドンの、カリスマ性と政治力だけで横浜市長選を乗り切るのかと思っていたら、横浜市民、カジノ反対の人たちがあんなに動いていたとは。一視聴者として、非常にストンと胸に落ちる感のある作品でした。