【最優秀受賞のことば】文化放送 自社媒体PRスポット/広告のホンネ 篇(2025年民放連賞ラジオCM第2種)

南 理子
【最優秀受賞のことば】文化放送 自社媒体PRスポット/広告のホンネ 篇(2025年民放連賞ラジオCM第2種)

皆さまご存じのとおり、民放テレビ・ラジオ局には、広告主の広告をチェックする考査部門があります。広告主の業態、商材、そして広告表現について、果たして自社の媒体で放送してよいかどうかを、考査担当者はさまざまな基準にのっとって審査します。景品表示法、薬機法、健康増進法、金融商品取引法等の関係法令、最新の社会情勢、媒体各社独自の内規、そして民放全体の基準の拠り所である「日本民間放送連盟 放送基準」。最近は新しい業態やサービスが続々誕生し、CMとして放送して問題がないのかどうか、判断に苦慮するケースが多くなってきました。全国各局の考査担当者は同じ悩みを抱えています。

さて、テレビCMやウェブ、チラシなどの広告を見ていると、その広告内で表示することが不可欠とされる重要な文言(注意喚起文言、打ち消し文言、啓発文言など)が、非常に小さな文字で表記されていて見づらいことがよくあります。ラジオCMにいたっては、初稿の段階でそういった文言がまるごと省略されていることもしばしば。きちんと原稿の中に入れるように、と改稿要請をするのですが、たいてい、広告主と局との間で「入れたくない」「いや入れてください」の不毛な攻防戦となります。そうした小さな文字にこそ、その企業のコンプライアンスの濃度や、さまざまな諸事情、つまり「ホンネ」が詰まっているともいえるのです。

音声広告の場合、そういった小さな文言もちゃんと人間の声で音声化されるので、可聴化できるという法令順守的なアドバンテージがあります。今回のCMでは、広告によくある威勢の良いうたい文句がどんどん登場しますが、付帯する小さな文字もはっきりしたナレーションとしてセットで付いてきます。本来こうあるべきなのですが、広告の作り手側からすると、その分尺も使うし、クリエーティビティ的に悩むところです。特に自分はCM制作と考査を両方兼任しているので、毎回心の中で板挟み状態。そこを逆手にとって構成してみました。

今回の作品は、フェイクや誤情報が蔓延する昨今、広告媒体のはしくれとして、視聴者やリスナーに少しでも適正な広告を届けたいという考査担当者の怨念(!)を詰め込んで制作しました。「広告の適正化」をテーマにしたこの作品が、今回「最優秀」という高い評価をいただけたことで、全国の民放局の考査担当者も報われるのではないかと考えます。今回のCM制作に関わった全ての皆さまに感謝いたします。本当にありがとうございました。


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