8月25日中央審査【参加/14社=14件】
審査委員長=音 好宏(上智大学教授)
審査員=石澤靖治(学習院女子大学教授・元学長)、草野満代(フリーアナウンサー)、田家秀樹(音楽評論家、ノンフィクション作家)、水島久光(東海大学教授)
今年の応募は、ローカル民放局が地域社会から期待されている公共性、信頼性を背景に、放送サービスを越えて地域の人たちが抱える悩みや課題をともに考え、また、地域の人々の生活に分け入ることで、地域社会に貢献する魅力的な事例が多く集まった。
最優秀=岡山放送/OHKアナウンサー出張朗読会~地域と紡いだ10年の歩み(=写真) 今回、本部門に岡山放送(OHK)が応募したアナウンサーによる出張朗読会の活動は、この10年間に、岡山放送アナウンサーが、その放送エリアである岡山・香川県の全市町村を訪問。136回の朗読会を開催し、約2万5,000の人たちに読み聞かせを行ったという活動を中心としたものだが、このOHK出張朗読会の歴史は古く、今回の応募が対象とする以前からOHKが行ってきた歴史のある地域貢献活動だ。特に2018年に起きた西日本豪雨によって甚大な被害を受けた真備町でも、図書館の再建に向け、被災した小学校で出張朗読会を開催するなど、被災からの復興支援に地元民放局として一役買っての活動は、注目される。
この出張朗読会にあたって、OHKのアナウンサーは自ら手話を学んでの手話付きの朗読を行う一方で、視覚障害者への生活情報誌の音訳なども手がけるなど、社会の多様性を大切にする取り組みもあり、今後の展開に期待を持たせるものとして高く評価したい。
優秀=北海道テレビ放送/ピンクリボン活動の18年 おっぱい2つとってみたその前と後 北海道での乳がん患者と「ピンクリボン活動」とを取材し、その啓発運動にもかかわり続けてきたディレクター自身が乳がんに罹患。自らを被写体として「もし乳がんとなったら」をテーマに、ローカルニュースのキャンペーン企画を展開する一方で、自身の乳がん治療の現場を題材にしたドキュメンタリー『おっぱい2つとってみた~46歳の両側乳がん』を制作・放送した。その大きな反響をステップに、社を挙げてのメディア横断型の取り組みは、地域社会に根ざしたローカル放送局らしい取り組みとして評価したい。
優秀=福井テレビジョン放送/県民の〝いのち〟と〝こころ〟を守る~新型コロナ下での取り組み 新型コロナウイルス感染症が猛威を振るうなか、福井県が進めた感染者の早期発見、早期治療による感染拡大や重症化を防止する施策、いわゆる福井モデルが感染拡大の抑制に効果を上げているとして注目された。福井テレビジョン放送は、県庁などと連携して県内の感染情報や対応策、行政が発表する情報などを継続的に提供する一方で、コロナ下での暮らしのヒントの提供に務めた。長期化するコロナ禍にあって、県民に寄り添い、県民の「いのち」と「こころ」を守ることを掲げた一連のキャンペーン活動は、ローカル民放らしい県民目線の活動として高く評価したい。
優秀=山口朝日放送/中高年のひきこもりへの理解を進める報道活動 ひきこもりが社会問題となって久しいが、80代の親が50代のひきこもりの面倒を見る「8050問題」など、特に近年注目を集めている中高年のひきこもり問題に焦点をあて、ローカルニュース枠やドキュメンタリー枠で集中的にこの問題を取り上げることで、地域社会におけるひきこもりへの偏見をなくし、正しい認識を広めようとする取り組みは評価できる。
山口県下の中高年のひきこもりの実情を丁寧、かつ、粘り強く報道することで、当事者の社会復帰や家族への社会的な偏見を解消しようとする試みは清々しい。やや報道局の1人のディレクターが牽引する活動の色彩が強いが、地域に寄り添うローカル民放らしい活動である。
優秀=南海放送/故郷と生きる。南海放送36本のラジオドラマが伝えてきたもの 往年に比べて、民放ラジオ局は、何かと手間のかかるドラマ制作を敬遠する傾向が広がっているとの声もあるなかにあって、南海放送は、44年間にわたり36本の地元を題材にしたオリジナルラジオドラマを作り続けてきた。それらの作品群は、地域を見つめ直し、地域文化の再創造を促すものが多いことに驚かされる。ラジオドラマの創作を基点に、地域イベントや映画への展開など、新たな地域文化の創造を刺激させる地域貢献活動といえる。制作スタンスが一貫しており、それを自ら「愛媛主義」を標榜しているところも頷ける。
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