第59回ギャラクシー賞 民放3番組が大賞獲得

編集広報部
第59回ギャラクシー賞 民放3番組が大賞獲得

放送批評懇談会が主催する第59回ギャラクシー賞の贈賞式が6月1日、都内で開催された。昨年度に続き、テレビ、ラジオ、報道活動の3部門の大賞を民放が受賞し、優秀賞には民放から5作品が輝いた。全体としてローカル民放の躍進が目立つ結果となった。

テレビ部門は福島中央テレビの『1Fリアル あの日、原発の傍らにいた人たち』が大賞に選ばれた。東日本大震災から10年が経ち、東京電力福島第一原発での事故当時、暴走を食い止めるために活動した自衛官や消防隊員、地元企業の人々などを取材し、「あの時何が起きていたのか」を浮き彫りにしたドキュメンタリーだ。

ディレクターを務めた岳野高弘氏は「地元メディアとして、長期的・歴史的観点で見ないと分からないことがあることに今回の番組制作で改めて気付いた。福島の人が今何を考えているかという視点を持って今後も取材をしていきたい」と語った。また、プロデューサーの木村良司氏も、「当時あった出来事を10年目に形にして放送でき、それが評価されたことがうれしい。スタッフの中には震災後に入社した者も多い。今後、当時のことを語り継ぎ、日々の取材を積み重ねることが大切だ」と受賞への思いを述べた。

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<福島中央テレビ 岳野高弘氏㊧、木村良司氏

CBCグループからは3作品が選ばれ、賞を席巻した。ラジオ部門大賞はCBCラジオ『ERのオーケストラ』。愛知県豊明市の病院の救急救命室(ER)に密着し、患者を救うことに真摯に向き合う医師たちの熱意と緊迫する現場に音声だけで迫った。ディレクターの森理恵子氏は「長年番組を作ってきたが、初めて涙ぐんでいる」と壇上で明かし、「定点収録も含め200時間以上取材した。並々ならぬ思いと魂を込めた作品で、心から受賞を感謝したい」と喜びを語った。

創設から20年となった報道活動部門の大賞には、CBCテレビ『偽りのアサリ~追跡1000日 産地偽装の闇~』が輝いた。地元愛知の漁師から熊本で大規模なアサリの産地偽装が行われていることを知り、粘り強い交渉や決定的瞬間の撮影を重ねて県や農水省を動かすスクープをものにした。取材にあたった吉田駿平氏は「昨年4月に営業に異動したが、取材先にとって異動は関係ない。地域の役に立てればとの思いで、現在の報道担当の助けも得ながら取材を続けた」と、記者魂を見せた。

さらに、テレビの新境地を開拓する意欲的な取り組みをたたえるテレビ部門フロンティア賞を、CBCテレビ『CBCドキュメンタリー 定期配信型ドキュメンタリー「ピエロと呼ばれた息子」』が受賞した。30万人に1人の難病を抱える男の子とその両親の日常を、毎週水曜に配信するドキュメンタリーで昨年4月から描いている。総再生回数は8,000万回を超えており、ディレクターの原誠氏は「ご両親が『配信のおかげで生きやすくなった』とブログに投稿してくれて、やりがいを感じた」と、新たな発信手法の手応えを語った。

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<CBCラジオ 森理恵子氏㊧ CBCテレビ 吉田駿平氏

ラジオ部門のDJパーソナリティ賞は、山陰放送『森谷佳奈のはきださNight!』の森谷佳奈アナウンサーが選ばれた。満面の笑みでステージに上がり、「番組開始当初は自信がなかったが、失敗してもそれを笑いにできるのがラジオ」「今回の受賞はあくまで通過点。これからも全国に向けて発信し、リスナーとのキャッチボールを続けたい」と、喜びとともに意気込みを語った。今回司会を務めた鬼頭里枝アナウンサーは第56回(2018年度)DJパーソナリティ賞を受賞しており、森谷アナとは特番『ラジオナイトサミット』などで親交が深いことから、互いの親密さを伺える掛け合いを見せる場面も。さらに、森谷アナとは以前から番組を通じて交流がある乃木坂46の山崎怜奈さんによるお祝いコメントの映像がサプライズで上映され、「(山崎さんとは)まだ直接会えていないので、今年はぜひ会いたい」と希望を述べた。なお、森谷アナは翌2日にエフエム東京を訪問し、『山崎怜奈の誰かに話したかったこと。』(13・0014・55)放送前の山崎さんと念願の初対面を果たした。

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<山陰放送 森谷佳奈アナウンサー

放送文化、放送事業に貢献した個人を称える志賀信夫賞は、沖縄放送協会初代会長の川平朝清さんに贈られた。90年前、5歳の頃に台湾でラジオに初めて出演した思い出を皮切りに、沖縄の放送界やNHK、放送文化基金と多岐に渡る業務を振り返るとともに、「(志賀さんは)鋭くて穏やかな番組批評をしてくれた。栄誉ある賞をいただき光栄だ」と述べ、会場に「皆さんも長生きしてください」と語りかけて暖かい笑いを誘った。贈賞式の恒例ともいえるサプライズ演出では、長男のジョン・カビラ氏が登場。朝清さんに花束を渡す際に何と声をかけたかを問われ、「(英語で)I'm so proud」と明かすとともに、「普通は逆ですが、『自慢の父』です」と述べると、会場は拍手喝采となった。2人が出演した『J-WAVE SELECTION GENERATION TO GENERATIONSTORIES OF OKINAWA~』は、第57回(2019年度)のギャラクシー賞でラジオ部門大賞に輝いている。

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<川平朝清さんとジョン・カビラさん

 テレビ番組を対象に視聴者が投票を行うマイベストTV賞のグランプリは毎日放送のドラマ特区『美しい彼』が受賞した。贈賞式の模様はYouTubeでライブ配信を行い、のべ視聴回数は約37,000回、最大同時接続は約8,100アクセスだった。7月7日(木)までアーカイブ配信を行っている。

第59回ギャラクシー賞 優秀賞(選奨・奨励賞は略)
【テレビ部門】
大豆田とわ子と三人の元夫
 (関西テレビ、カズモ)
ETV特集『"玉砕"の島を生きて~テニアン島 日本人移民の記録~』
 (NHK、NHKエンタープライズ、グループ現代)
忠臣蔵狂詩曲No.5 中村仲蔵 出世階段
 (NHK、NHKエンタープライズ、オッティモ)
【ラジオ部門】
SBCラジオスペシャル『Lost and Found~家族と故郷を失った父と娘の10年~』
 (信越放送)
わした島のオーケストラ~琉球交響楽団~スペシャル!
 (琉球放送)
村上RADIO特別版『戦争をやめさせるための音楽』
 (エフエム東京)
【報道活動部門】
『報道特集』東京五輪めぐる調査報道キャンペーン
 (TBSテレビ)
「生理の貧困」に関する報道
 (NHK)

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