放送倫理・番組向上機構(BPO)は10月14日、対面およびオンライン形式併用で、「3委員会合同意見交換会」を開催した。同意見交換会は、放送倫理検証委員会、放送と人権等権利に関する委員会(放送人権委員会)、放送と青少年に関する委員会(青少年委員会)の3委員会が合同で加盟各局の関係者とともに、放送界が直面する共通課題について意見を交わす新たな取り組み。
今回の意見交換会では、「ソーシャルメディア時代の新選挙報道」(第1部)および「放送現場からの人権意識改革」(第2部)の2つのテーマが掲げられ、報道のあり方や人権意識の向上に向けた議論が展開された。
第1部では、TBSテレビ・岩田夏弥報道局政治部長が「質と量の選挙報道改革」をテーマに、NHK・坂本直樹報道局選挙プロジェクト副部長が「ネット空間に信頼できる情報を~2025参院選での取り組み~」をテーマに、基調報告を行った。続いて、放送倫理検証委員会の水谷瑛嗣郎委員(慶應義塾大学准教授)が「デジタルメディア環境における放送局とニュースの役割」として、信頼性の高い報道(ニュース)に人々のアテンションの再配分を行うためには、業界横断的・民間と学術連携による議論が必要と提言した。青少年委員会の池田雅子委員(弁護士)が「局員等への誹謗中傷対策」をテーマに、SNS時代に報道機関の役割を果たすためにも局員等を誹謗中傷から適切に守ることが大切だと提言した。
第2部では、フジテレビジョン・吉田優子コンプライアンス推進局長の基調報告「人権・コンプライアンスのいま~フジテレビの『再生・改革』と人権尊重への取り組み~」に続き、放送人権委員会の斉藤とも子委員(俳優・社会福祉士)が「出演者からみた放送現場のあり方」として出演者の立場に立って制作者は人権について考えてもらいたいと提言。さらに、青少年委員会の飯田豊副委員長(立命館大学教授)が「若者の人権意識と放送現場のあり方」として、中高生モニターの声などを紹介し、放送倫理やコンプライアンスの徹底は表現の幅を狭める弱みになりかねないが、若者の人権意識の高まりを踏まえれば、放送が表現と規制の兼ね合いで試行錯誤してきた歴史は、メディアとしての信頼を維持し、関心や共感を拡大していく強みにもなると提言した。
会場には多くの放送関係者が集まり、活発な質疑応答が行われた。最後に、合同意見交換会を振り返り、青少年委員会の吉永みち子委員長は「1社で対応することが難しい事例が多い時代になったと感じる。知恵や知見を出し合い、メディア同士の上手な連帯が必要だ。今回の意見交換会がそのような連帯の機会のひとつになればうれしい」と発言。放送人権委員会の廣田智子委員長は「放送が伝える事実・情報はあらゆる人権の根源となる自由と民主主義を支え、エンターテインメントは生きることを支えている。どんなときも自分たちの使命・存在意義に自信を持って、取り組んでもらいたい」とエールを送った。最後に放送倫理検証委員会の小町谷育子委員長は「国民にとって政治報道の重要性がより一層増している。これまで以上に豊かな報道を期待している」と締めくくった。