BPO(放送倫理・番組向上機構)の放送人権委員会(曽我部真裕委員長)は2月14日、日本テレビの情報番組『スッキリ』の放送で名誉を侵害されたとペットサロン経営者が申し立てていた事案に対し、人権侵害はなく、放送倫理上の問題もあるとまでは言えないとする見解を公表した。そのうえで、直接取材の重要性をあらためて認識して今後の番組制作にあたるよう同社に要望した。
番組は2021年1月28日に放送。同月12日、申立人が経営するペットサロンで、預かっていた犬がシャンプーを受けた後に死亡したことを取り上げた。これに対し申立人は、自らが犬を虐待死させたかのように印象づけられ、事実に反する放送で名誉を侵害されたと主張していた。
人権委は、申立人の社会的評価を低下させたとする主張について、同社が取材結果から真実と判断したことに相当性が認められるとして、人権侵害にはあたらないとの判断を示した。
また、申立人本人への直接取材が実現しないまま番組が放送されたことについて、放送倫理上の観点からも検討。▷申立人に対して複数回にわたる取材のアプローチを行った▷複数の関係者から確度の高い取材ができていた▷申立人が専門学校のウェブサイトに掲載した謝罪・反論コメントのほぼ全文を放送で紹介した――ことなどを総合的に評価し、「放送倫理上の問題があるとまでは言えない」と結論づけた。ただし、直接取材を実現すべくもう一歩の努力が望まれる事案であったとして、同社に対象者への直接取材の重要性をあらためて認識し、今後の番組制作にあたるよう要望した。
なお、申立人への直接取材の省略は正当化できないとし、放送倫理上問題があったとの少数意見も付記された。