米新政権発足から100日 FCCのカー委員長とゴメス委員が対照的なビジョン示す

編集広報部
米新政権発足から100日 FCCのカー委員長とゴメス委員が対照的なビジョン示す

第2次トランプ政権発足から100日の節目を迎えた4月末、米連邦通信委員会(FCC)のブレンダン・カー委員長(共和党)とアナ・ゴメス委員(民主党)が、それぞれの立場から「報道の自由」と「メディア規制のあり方」についてビジョンを表明した(冒頭画像は左からカー委員長、ゴメス委員=FCCのサイトから)。カー委員長はローカル局の強化策に重点を置くと表明。一方のゴメス委員は権力への監視機能の強化が必須だと主張し、「メディアの公共利益と信頼の再構築」という点は共通するものの、そのアプローチの手法は対照的だ。

▶カー委員長「ローカル局の再強化を」
カー委員長は4月末の記者会見で「ローカル局がハリウッドやニューヨーク発の全国的なコンテンツの単なる中継点にならぬよう、地域社会の利益のために報道できる力を持てるようにしたい」と述べ、就任以来FCCが行ってきた施策の多くはこの目標に向けてのものだと力説した。

1月の就任から3カ月でカー委員長は多くの施策を矢継ぎ早に実行している。サンフランシスコの▷サンフランシスコのラジオ局(KCBS/KFRC)が放送した移民擁護報道に関する調査▷NPR・PBS系列の公共放送局が営利企業のスポンサー告知を放送することが免許の条件に違反していないかの調査(既報)▷政権を批判したABC、CBS、NBC系列のテレビ局に対する免許更新への異議申し立ての再開――などだ。また、人材の雇用方針におけるDEI(多様性・公平性・包括性)プログラムを中止するようメディア企業に圧力をかけている。

これらには賛否あるが、カー委員長は「放送局は公共の利益とならなければならない。連邦政府から与えられた放送免許という特権を考えれば、FCCは放送局に対して公共の利益に沿った報道を強く要求すべき立場にある」として、これらの対メディア政策を正当化している。

▶ゴメス委員「異なる意見を封じてはならない」
こうしたカー委員長の方針はFCC内部でも異論があり、ゴメス委員は「FCCは"検閲と統制"に偏り、放送局の憲法上の権利を侵害している」と批判。そのための具体的なアクションとして、ゴメス委員は「憲法修正1条ツアー(First Amendment Tour)」を4月末から始めると発表した。「報道の自由」が政府に脅かされている危機意識をあらためて参加者と共有することが目的だ。今後全米各地を行脚し、講演や意見交換会を開催する。その第1回目は4月24日、ワシントンD.C.で開催された(その模様はこちらの動画で視聴できる/外部サイトに遷移します)。次回は5月28日にロサンゼルスで開かれる。

さらにゴメス委員は、一連の施策を「政権に都合のいい内容を放送するよう局に圧力をかけるための手段としてFCCが利用されており、由々しき問題だ」とも述べ、「危険な状態が既成事実化される前に、私たちは声を上げ続けなければならない」と訴えた。

またゴメス委員は、FCCが放送メディア企業にDEIプログラムの中止を強要していることにも触れ、これらは放送の公共性と地域社会のニーズに反するものだと主張している。

FCCではジェフリー・スタークス委員(民主党)が引退を表明しており、委員の党派構成は今後、共和党が圧倒的有利になるものとみられる(既報)。報道の自由やローカルメディアの活性化など大きな目標は同じくしながら、複雑に交錯する課題にFCCがどのように舵を取っていくのか目が離せない。

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