総務省は6月28日、「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」(三友仁志座長)の検討結果を「デジタル時代における放送の将来像と制度の在り方に関する取りまとめ(案)」として示し、7月19日まで意見募集を実施している。これは、①放送を取り巻く環境の変化、②デジタル時代における放送の意義・役割、③放送ネットワークインフラの将来像、④放送コンテンツのインターネット配信の在り方、⑤デジタル時代における放送制度の在り方――の5章で構成されている。
情報空間が放送以外にも広がるデジタル時代において、放送が今後果たすべき役割を考察。取材や編集に裏打ちされた信頼性の高い情報発信は放送の重要な価値であり、NHKと民放の二元体制の下、社会基盤としての役割を果たしていると説明する。そのうえで、放送を今後も持続可能なサービスとして長く維持・発展させていくために「放送ネットワークインフラに係るコスト負担の軽減」、「多様な伝送手段を確保し、良質な放送コンテンツを届ける社会的役割の持続的な維持・発展」を目指すべきとした。
放送制度については、放送事業者が中長期的な経営戦略を描くことのできる環境整備のため、経営の選択肢を増やす観点から柔軟な見直しを行うべきと提言。マスメディア集中排除原則の見直し、複数の放送対象地域における放送番組の同一化などが可能となる制度の創設を示している。
放送ネットワークインフラに係るコスト負担の軽減の具体的な経営の選択肢として中継局やマスター設備の「共同利用型モデル」と小規模中継局等のブロードバンド等による代替も提言。今後、総務省も関与しつつ、NHK・民放事業者などの関係者間で検討・協議すべきとした。
なお、ブロードバンド等による代替については、下部組織の作業チームの取りまとめを別添として収録し、経済合理性の期待を示した。ただし、放送アプリケーションの費用や通信の費用の一部が含まれていないため、小規模中継局やミニサテとの単純なコスト比較はできない。
今秋以降、▷「共同利用型モデル」の実現に向けた関係者間での具体的な検討・協議、▷小規模中継局等のブロードバンド等による代替、▷自らの意思により公共的な取組を行う放送同時配信等の取組を後押しする方策、▷NHKのインターネット配信の在り方――を継続検討するとしている。
総務省は意見募集結果を踏まえ、次回7月29日の会合で「取りまとめ」の内容を確定させる。
同検討会は、2021年11月に設置。デジタル化が社会全体で急速に進展する中において、放送の将来像や放送制度のあり方について中長期的な視点から検討を行ってきた。今年3月31日に論点整理を公表、4月以降は「放送ネットワークインフラの将来像」などを集中的に検討してきた。