在京ラジオ秋の改編 マルチ展開で間口広げ新規リスナー獲得目指す

編集広報部
在京ラジオ秋の改編 マルチ展開で間口広げ新規リスナー獲得目指す

在京ラジオ各社の10月新番組が始まった。ポッドキャストやSNSを用いてマルチに展開し、新規層の獲得を目指しつつ、リスナーを掴んで離さないようさまざまな魅力ある新しい番組や試みが並ぶ。

J-WAVEは「TOKYO POP CULTUREを世界へ」というビジョンを具現化すべく、平日の夕方ワイド枠で24年半続いた『GROOVE LINE』を終了し、『GRAND MARQUEE』(=写真㊤、月―木、16・00―19・00)を開始した。クリエーターのタカノシンヤさんと藤原麻里菜さんがナビゲーターを務め、「東京は想像以上に面白い」というコンセプトのもと、東京で活動する人やものをピックアップする。手塚渉コンテンツプロデュース部長は「少しでも新しい取り組みやキレのある選曲を若い世代に届け、新規リスナー獲得を目指す」と語る。今年1月から平日の深夜ワイド『SPARK』の月曜レギュラーを担当していたボーイズグループ・BE:FIRSTが出演する『GYAO! MILLION BILLION』(土、17・00―17・54)では、メンバーがさまざまな音楽と出会いながら、毎週チャレンジ企画を行い、その模様を動画配信サービスGYAO!で配信する。初回放送では「#ミリビリ」がツイッターの世界トレンド2位になるなど注目を集めている。

「好きをつなげる 文化放送」をテーマに、リスナーが新しい「好き」や「推し」に出会える編成を組んだ文化放送。月―木の22時から放送している『レコメン!』を増枠し、金曜に『内田理央のレコメン!FRIDAY』(21・00―23・00)をスタートした。アニメや漫画が好きだという女優の内田理央さんが自身の「好き」を伝えるこの番組では、レコメンリスナーを含む幅広い層に「A&G(アニメ&ゲーム)」の情報に触れてもらうことを目指す。ナイターオフには高校生が週替わりで出演する『おいでよ!青春る(読み:アオハル)』(火―水、19・00―21・00)を編成。今年4月にスタートした『西川あやの おいでよ!クリエイティ部』(月、15・30―17・45、火―金、15・30―18・45)に続く「おいでよ!シリーズ」の第2弾で、高校生がゲストではなくMCとして2時間の生放送に挑戦する。村田武之コミュニケーションデザイン部長は「若い世代に音声体験をしてもらい、『ラジオって面白いんだ』という反響を増やしていきたい」としている。

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<文化放送『おいでよ!青春る』

オールナイトニッポン55周年に際し、今年4月から特番や企画、イベントに取り組んでいるニッポン放送は、10月から土曜に『オールナイトニッポンPremium』(19・00―21・00)をスタートした。パーソナリティ経験者を中心に、週替わりでさまざまなパーソナリティが登場する。桜井達也コンテンツプランニング部長は「昔聴いていたというリスナーの発掘につながれば」と期待を語る。来年2月17日(金)―19日(日)には秋元康氏をエグゼクティブプロデューサーに迎えた55時間におよぶオールナイトニッポンの特別番組を放送予定だ。また、リスナーの声に応えるべく過去に放送した特番のレギュラー化にも取り組み、『古家正亨 K TRACKS』(火・17:30~20:30)では、これまで5回の特番でパーソナリティを務めた古家正亨さんがK-POPアーティストを毎週1組ピックアップし掘り下げていく。

10月から本格的にポッドキャストに参入し、ラインアップを充実させているTBSラジオ。7月に10分枠で5回放送した『脳盗』(日、20・30―20・55)をレギュラー化した。ポッドキャストの人気番組『奇奇怪怪明解事典』に出演するヒップホップユニットDos MonosのTaiTanさんとバンドMONO NO AWAREの玉置周啓さんの2人がパーソナリティを務める。"ポッドキャストは聴くがラジオは聴いたことがない"人にラジオが持つ魅力を味わってもらうことを狙う。長谷川裕事業創造センター長は「ポッドキャスト番組から地上波へ、地上波からポッドキャストへフレキシブルな動きが増えていくと思う。デジタルの世界でもプレゼンスを獲得していきたい」とコメントした。また、今年4月にスタートした平日朝のワイド番組『パンサー向井の#ふらっと』は、イベントでの熱心なリスナーの反応もあり、さまざまな人が自分の良さを発揮できる場になってきていると手応えを感じているという。

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<TBSラジオ『脳盗』

音声サービスAuDeeなどの取り組みに注力しているTOKYO FMは、この秋は大きな改編を行わなかったが、数少ない新番組の中でマルチな展開を図る。『川崎鷹也 MAGIC NOTE』(金、12・30―12・55)は、シンガーソングライターの川崎鷹也さんがリスナーから寄せられた相談に言葉と生演奏で応えていく。AuDeeなどで番組をアーカイブするほか、生演奏部分をTikTokに映像付きで掲載する。タレントの峯岸みなみさんと長井短さんがパーソナリティを務める『みねじか supported by niconico』は、ニコニコ動画でオリジナルコンテンツを配信。今年4月に開始したワイド番組『Roomie Roomie!』内の新コーナー『マイメロディとひみつのお部屋』はYouTubeで公開する。宮野潤一編成局次長兼編成部長は「番組の周知を狙い、引き続きデジタルでの展開に注力していく」とした。

4月にステートメントを「Find Your Colors」に変更したinterfmは、前後の番組のつながりを意識した枠移動を多く行った。特に平日19時台は通勤通学などでリスナーの聴取環境が変わる時間帯のため、じっくり聴いてもらえるようアーティストがパーソナリティを務める番組を編成した。元々その枠に放送していた『sensor』は週1回の放送に変更し、非リスナーの若者に向けて最先端カルチャーを発信していく。新番組では、芸人の永野とDJのミッキーが洋楽ロックを熱く楽しく語る『永野とミッキーのLIVE BUZZ』(金、15・00―16・00)がスタート。高野祐造執行役員は「ダイバーシティの時代、番組はリスナーとともに作るのがベースにある考え方だ」と述べた。

大きな改編を行わなかったラジオNIKKEIは、第2放送で毎月最終金曜日に新番組『農のミライ』(8・01―8・30)をスタート。産業機械メーカーのクボタと日本経済新聞社との共同プロジェクトとして始まった同番組では、農業に関わる人々の声を届け、食料、水、環境に関わる課題解決を視野に入れたコミュニティづくりを目指す。ポッドキャストでの先行配信をはじめ、SNSやウェブサイトなどでマルチ展開を行う。初回放送後、農業を研究する大学院生から「番組に参加したい」という声が寄せられるなど、想定していたよりも広いリスナー層から反響があったという。また、今年4月に開始した『吉崎誠二の5時から"誠"論』(月―水、17・00―17・50)は、木曜に『吉崎誠二の"政"論』(17・20―17・50)を増枠し、国会議員をゲストに迎えて政策を掘り下げる。

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<ラジオNIKKEI『農のミライ』初回放送 出演者

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