今年3月に終了したTBSラジオ『たまむすび』。昨年9月に日本武道館でイベントを開催してから約1年が経過した。そんな折に、X(旧Twitter)で以下の投稿を見かけた。
つきこさんは普段、書籍のデザイナーやイラストレーターをしている。2016年5月に初めて"ラジオ絵"をTwitterに投稿。『たまむすび』のメインパーソナリティの赤江珠緒さんと木曜パートナーのピエール瀧さんが話した内容について確認するために、自分なりの解釈を絵で描き、Twitterにアップした。そこから少しずつ定期的に投稿をスタート。それをきっかけに『たまむすび』のノベルティのイラストを担当することもあった。
約8年間書き続けてきたイラストを展示する「ラジオ絵」展を9月15日―10月9日に、東京・八王子にある「古書むしくい堂」で開催している。今回はTBSラジオは無関係で、つきこさんとむしくい堂が主催しているとのことだ。そんなラジオ愛溢れる展示に行ってみた。
<店頭には「ありがとう たまむすび」のメッセージ>
古書むしくい堂にうかがったのは9月21日。奇しくも『たまむすび』が昨年に日本武道館でイベントを行った日だ。店の奥の一角に絵が大量に並べられていた。普段はラジオのパーソナリティを務めている人たちの書籍などを並べているエリアだそうだ。実際に見るとその数に圧倒されたが、これでも一部とのこと。つきこさんがどれだけラジオ絵を描いてきたかが分かる。番組内での出来事や、赤江さんが話す子どもとのエピソード、赤江さんの「ポンコツ」な様子など、さまざまな場面を切り取った絵が見られる。リスナーは思い出深い出来事やエピソードを思い返せるのではないか。
<たくさん並べられたラジオ絵>
つきこさんは、いつか書き溜めた絵を展示したいと考えていたが、自身の出産や新型コロナの流行などでこれまで実現できなかったとのこと。開催のきっかけをうかがうと「むしくい堂の店主から提案があり開催に至った」と答えた。今年3月30日、『たまむすび』に赤江さんが出演する最後の日、TBSラジオのある赤坂サカスに200人を超えるリスナーが集結。つきこさんも駆けつけ、その際に以前から親交があったむしくい堂の店主・高橋良算さんから提案があり、書店で絵を展示することが決定した。
<さまざまな場面を切り取ったラジオ絵>
高橋さんも言わずもがな、『たまむすび』リスナー。聞くと、店名の「古書むしくい堂」の名づけ親は赤江さんだという。2016年2月18日、同番組のコーナー「ピエール瀧のハガキで悩み相談」に「古書店を始めるので名前を考えてほしい」と投稿。それが読まれ、赤江さん、木曜パートナーだったピエール瀧さん、ゲストの大沢悠里さんがアイデアを出し、赤江さん提案の「むしくい堂」を採用した。高橋さんは当時について「店名を自分でも考えていたが、決めかねていた。以前に別のリスナーが『事務所名を決めてほしい』と相談しており、自分も送ってみた。初めての投稿で、まさか読まれると思っていなかった」と振り返る。番組内で取り上げられたため、リスナーが来店することもよくあるそうで、高橋さんは「今回の展示をきっかけに、来てくれる人もいた」と話す。
<つきこさんのコメントが入った付箋も>
「記念にひとこと、どうぞ!」と書かれたノートが展示エリアに置かれており、「すてきな絵をありがとうございました」「つきこさんの絵を毎回楽しみにしていました」といったメッセージが記されてあった。高橋さんによると展示を見に来た半数ほどがメッセージを残しているという。また、Xでは実際に足を運んだリスナーの投稿も見られる。つきこさんは来場者からの反響を受け、「ただの絵の展示ではなく、絵を介して当時の放送を語り合える場になっていると思う。『たまむすび』は終わってしまったが、リスナーの番組愛は変わらないと実感した」とコメントしている。
<ノートにはメッセージとラジオネームが記されていた>
つきこさんに「あなたにとって『たまむすび』とは」と聞いた。「『たまむすび』は"戦友"。人生の節目にはいつも流れていた。フラフラになりながら仕事する時、結婚式の準備をする時、出産を待つ病室、子どもと過ごす時も......。赤江さんのいつも変わらない明るい声を聴いていると『今日も一緒に頑張れる』と思えた。『たまむすび』は終わったが、朝食を作りながら、子どもの保育園の送り迎えをしながら......毎日変わらず、ラジオは私を励ますBGMとして流れ続けてくれている」と語った。
高橋さんには今後についてうかがうと、「毎年開催できればと思う。博多大吉さんの『10年後にまた、たまむすびやればええやん』の発言のとおり、番組がまた復活するまでは実施したい」と語り、あわせて「大吉さんがTBSラジオのポッドキャストで『大吉ポッドキャスト いったん、ここにいます!』という番組を今年4月からスタートしているので、ぜひ聴いてみてください」と教えていただいた。
<最終回に書いたラジオ絵>
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9月23日にはトークイベントを開き、店内に約20人を招いた。つきこさんのイラストをもとに、番組の思い出を参加者とともに語り合った。番組が終わってもリスナーの記憶に残り続ける限り、その灯は途絶えない。それほどの愛情を持ってもらえるのはリスナーとの距離が近いラジオならではのことだと思う。皆さんにもぜひ足を運んでもらい、その愛に触れてみてほしい。「ラジオ絵」展は10月9日まで開催している。店舗の営業予定などはウェブサイトを参照。
<トークイベントの様子>