【メディアリテラシー】山形テレビ 小学生がナレーション原稿作りに挑戦

編集広報部
【メディアリテラシー】山形テレビ 小学生がナレーション原稿作りに挑戦

民放連は、会員社が実施するメディアリテラシー活動に対して助成を行い、民放各社の同活動のさらなる発展と定着を目指している。詳細は、民放連ウェブサイトに掲載している。

民放onlineでは、通年企画として各社が実施しているメディアリテラシー向上のための活動を随時紹介していく。


今回取り上げる山形テレビ(YTS)の「自治体・大学・放送局による『郷土の遺跡アニメーション復元と番組制作体験』」は、2023年度民放連メディアリテラシー活動助成事業の一つ。1分間のアニメーションにどのようなナレーションをつけるとよいかを小学生が考えた。

民放onlineは、11月24日に山形県遊佐町(ゆざまち)の町立遊佐小学校で行われたメディアリテラシー授業の模様を取材した。

「小山崎遺跡を紹介する番組をつくる」と題した同一内容の授業を同校6年生の3クラスにそれぞれ実施。合わせて72人の児童が受講した。

授業の題材は、同町にある縄文期の小山崎遺跡。縄文中期末から後期を中心とする集落と水辺遺構が国の史跡に指定され、保存されている。そこでの縄文人の暮らしなどを再現した1分間のアニメーションを教材として活用した。YTSからの依頼でアニメーションを制作したのは、山形県内にある東北芸術工科大学デザイン工学部の工藤薫准教授。同大芸術学部の青野友哉准教授が歴史的な部分を監修した。

はじめにYTSの高橋尚毅・経営戦略局ビジネス事業開発部長が、「4000年前の遊佐町で縄文人はどんな暮らしをしていたか」を説明し、アニメーションの静止画を用いて、映像に何が映っているかを確認。児童に山や池の名前を尋ねたほか、「かごの中に何が入っていたと思うか」などと問いかけ、当時の暮らしを想像するよう促した。

DSC_2102.JPG

<高橋尚毅部長>

続いて、児童は5、6人の班に分かれ、配付された絵コンテをもとにして、1分間のアニメーションに付けるナレーションを考えた。時間は15分程度で、YTSの担当者は各班を回り、それぞれのカットはどんなことをしている様子だと思うか児童に尋ね、説明の仕方や着眼点を示すなど、ナレーション原稿をまとめるにあたってのアドバイスを行った。

その後、児童が作成した原稿をもとに、YTSの望月雅人アナウンサーが無音のアニメーションに合わせて"生ナレーション"を実施。説明する内容や文言の違いだけではなく、「たくさん魚が捕れた!」と当時の縄文人のセリフを入れたものや、「今では冷蔵庫を使って保存していますが」と現代との比較を示すなどの表現があった。

続いて、事前にYTSが考えたナレーションと効果音を入れて制作した完成版のアニメーションを上映した。

<完成版のアニメーション>

高橋氏は授業のまとめとして、「同じ映像でもナレーションや音によって、印象が違ってくることを伝えたかった。テレビ番組にも作る人の考え方が現れる。そういうことを意識しながら、テレビを見てほしい」と締めくくった。

最後に児童が授業の感想を発表。「最初は難しいと思っていたけど、自分で原稿を考えてみるのは楽しかった」「他の班の人たちが考えたナレーションを聞くと、アニメの内容が違って見えた」などと振り返った。

授業を終えて、本事業を担当したYTSの吉田祥氏は、「郷土の歴史を学んでいる児童だったので、それぞれ完成度の高いナレーション原稿ができあがった。情景を単に説明するだけでなく現在との違いに触れるなど、児童が表現のバリエーションを増やせるようにアドバイスを工夫した」と振り返った。講師として授業を進行した高橋氏は「45分の授業時間は想像以上に短かった。その中でもメディアリテラシーという意図はわかってくれたと思う」とコメント。児童が作成したナレーションを読んだ望月アナは、「いろいろなバリエーションがあり、感性の違いが表れて面白いと思った。ナレーションの内容で子どもたちへの伝わり方が違うと感じたので、自分自身も日頃から偏って伝わらないように、取材し原稿を書き、ニュースを届けたい」と語った。

YTS2人.jpg

<吉田祥氏㊧と望月雅人アナ㊨>

授業をコーディネートした遊佐町教育委員会教育課の金野史弥氏は、完成版のアニメーションが後日、同町に寄贈されることについて、「大変ありがたい。学校の授業や資料館などで活用していきたい」と述べた。

今回協力のあった東北芸術工科大学とYTSは、2021年に地域活性化包括連携協定を結んでいる。22年7月にYTSが放送した『なるほど!ヒストリー 山形お宝大発見!』に青野准教授が出演し、小山崎遺跡について取り上げたことが縁で、今回の取り組みにつながったという。

完成版のアニメーションは11月28日、同町に寄贈された(=写真㊦)。

贈呈式.JPG

<時田博機・遊佐町長㊧と横沢善則・YTS社長㊨>

最新記事