【2021年民放連賞審査講評(グランプリ審査:ラジオ)】ラジオだからこそ伝わる構成や内容

後藤 洋平
【2021年民放連賞審査講評(グランプリ審査:ラジオ)】ラジオだからこそ伝わる構成や内容

【10月14日審査】
審査委員長=林 和男(ぴあ相談役Co-founder、J-WAVE番組審議会委員長)
審査員=猪岡 慶(時事通信社文化特信部記者)
岩﨑 晃(明治マーケティング・開発統括本部宣伝部長、日本アドバタイザーズ協会テレビ・ラジオメディア委員会委員)
後藤洋平(朝日新聞編集委員(放送担当))
佐々木俊尚(ジャーナリスト、エフエム東京番組審議会委員)
杉浦 修(東急エージェンシー上席執行役員メディア本部長、日本広告業協会メディア委員会委員)
本間英士(産経新聞社文化部記者)
山口 香(筑波大学教授、ニッポン放送番組審議会副委員長)
吉野 隆(元・帝人顧問、文化放送番組審議会委員)
渡邊久哲(上智大学教授、TBSラジオ番組審議会委員長)


今年の民間放送連盟賞グランプリ(ラジオ)の審査は「報道」「教養」「エンターテインメント」「生ワイド」の各部門から優れた8番組が候補となり、最終的には二つの番組が激しく競り合う内容になった。

その結果、頂点に立ったのは報道番組部門の文化放送『文化放送戦後75年スペシャル 封印された真実~軍属ラジオ』だった。平和・原爆に関心のある人であれば誰もが知る詩人のアーサー・ビナードさんを案内人に据え、戦時中のプロパガンダ放送を当時の録音を交えて紹介。NHKが米兵を混乱させるために流した短波放送「RADIO TOKYO」や、米国側が1945年5月から8月まで和平を訴えるなどした「ボイス・オブ・アメリカ」、そして両国のプロパガンダ放送を妨害するために流した電波「ジャミング」などの詳細をひもといた

玉音放送の3時間前に放送された内容 を米国立公文書館から入手するなど、紛れもない一級の調査報道だった。「真実を流すことが効果を発揮していれば、8月6日と9日は、違う結果になっていたかもしれない」という言葉は、広島に住み、被爆者たちと向き合い続けてきたビナードさんだからこその説得力であり、非常に重く感じた。

RD (131) サンドウィッチマンのオールナイトニッポン.jpg

一方、準グランプリに輝いたニッポン放送『サンドウィッチマンのオールナイトニッポン』も、グランプリに等しいといっても過言ではない素晴らしい内容だった。

10年前の東日本大震災時に気仙沼で被災したときの記憶や現在の被災地について、サンドウィッチマンが生々しく、かつ優しく語りかける。2011年の震災直後、2人が生放送で熱く語った放送は間違いなく日本のラジオ史に残る名番組で、多くの人が記憶しているだろう。その10年後、またしても「ならでは」のコントで幕が上がり、彼らでしか成し遂げられない領域に到達した番組だった。

特に、震災直後から地元で被害の状況などを伝え続けた東北放送の藤沢智子アナウンサーをゲストに迎えた際のやりとりには感情が揺さぶられた。「この時のためにアナウンサーになったと思った」という藤沢さんの声は、多くの人に響いただろう。

受賞には至らなかったが、他の6作品もそれぞれの特色に秀で、ラジオだからこそ伝わる構成や内容があふれていた。

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