「見る自由」が広がった10年 TVerはゼロから5億回再生へ
TVerは2025年10月、サービス開始から10周年を迎えました。これまでに累計9,000万件のダウンロード、月間ユニークブラウザ数は4,120万、月間再生数は約5億回に到達しました。10年前はいずれもゼロでしたが、今では多くの皆さまに日常的にご利用いただくサービスとなっています。
この10年で、人々のコンテンツへの接触方法は大きく変化し、今も変わり続けています。特にスマートデバイスの普及により、好きな時間に好きな場所で好きなものを見る時代となりました。テレビ番組は「放送して終わり」ではなく、編成の先に大きく解き放たれ、コンテンツとしてさまざまな場面で人と出合います。最近では、インターネットに接続されたテレビ(CTV)で配信番組を視聴する機会も増えています。TVerはコンテンツ配信サービスとして、その出合いの一翼を担い、「コンテンツを見るならTVer」と言っていただけるよう努めてまいります。
次の成長へ 人々が望むその先を体験で提供する
おかげさまで視聴者の皆さまの認知は上がり、アドバタイザー・広告会社からは、広告出稿の有力候補として想起していただけるようになりました。私たちTVerは、サービスの成長段階から、いかにして売り上げを伸ばしていくかという次の段階に入ったと考えています。動画広告市場全体の成長率を大きく上回る成長を遂げ、シェアを拡大するためには、利用者数を増やすと同時に、1人あたりの再生数・再生時間を伸ばし、その掛け算で広告在庫を増やす必要があります。そのためには、放送局が制作したコンテンツを、いかにして多くの皆さまに届け、より多くの出合いを生み出せるかが重要です。
TVerの大きな役割は、テクノロジーによってUI(ユーザーインターフェース)/UX(ユーザーエクスペリエンス)をさらに向上させ、より使いやすく、よりコンテンツにたどり着きやすくすることです。直近では、優秀な秘書がいるかのように、AIが視聴すべき番組を提案する機能を実装しました。今後、TVerはどのような技術を実装し、どのような出合いを提供していくのか。テレビが常に人々が望むものに応えたいと願ってきたように、TVerも視聴者の期待を上回る体験を提供してまいります。
放送文化をインターネットへ ローカル局とともに築くコンテンツ流通
放送局が主体の経営体制となった5年前には、放送局や広告会社からの出向者が過半数の体制でしたが、今や4分の3以上がプロパー社員となり、社内には放送文化とベンチャー気質が融合した新たな文化が形成されています。その文化には、スピード感を大事にしつつも、放送人としてのDNAも流れています。例えば、放送では考査NGであっても、インターネットでは流通している広告手法について、TVer広告で取り扱うかどうか。新しい市場に新しいメディアで挑むとき、従来とは異なる判断が常に求められます。意見が割れ、議論が白熱するたび、私たちは自身に深く根差した放送倫理を見つめ直し、議論は自然と民放連の放送基準に帰納します。それは、都度ページをめくり項目をたどるということではなく、民間放送の枠組みで大切にしてきた自主自律の精神が、TVerでも大切なこと、当たり前のこととして根付いているということです。
この考え方は、在京局・在阪局だけでなく、系列ローカル局や独立局でも同じだと思っています。ラジオ放送開始から100年、1950年の放送法制定から75年を経て、放送人のDNAはどの局にも根付いていると信じています。配信の世界でコンテンツをマネタイズすることは容易ではありませんが、どのローカル局が制作する番組にも、インターネット由来の動画とは異なる安心感、放送クオリティがあります。アドバタイザーも視聴者も、その安心感を大切に考えてくれているという実感もありますし、趣味嗜好も生活様式も多様化していく現代において、各地域の情報もまた一つの価値あるコンテンツであり、TVerはその流通をお手伝いしたいと思っています。
広告と倫理 三方よしの視点
広告とは、アテンションだけでなく、ターゲティングという側面があります。テレビでは視聴率という統計データを利用しますが、インターネットではさまざまなテクノロジーにより、ウェブサイト上での行動を把握し、個人情報に紐づけることも可能です。集積したデータをAIで分析し、個々人の視聴行動や購買行動を予測する技術もどんどん進化していますし、新しいアドテクノロジーは広告商品としてもてはやされ、華やかな売り文句とともに市場に溢れます。しかし、私たちは常に立ち止まります。それは視聴者が望むことなのか、不快に思うことはないのか。アドバタイザーと視聴者、そして私たちの「三方よし」になっているか。なかでも特に「世間よし」になっているかを、常に意識しています。
TVerの使命 放送クオリティで未来を見通す
スマートデバイスやCTVには、インターネット経由のあらゆるコンテンツが流れます。面白いもの、感動するもの、共感するもの、刺激的なものなどが無尽蔵に溢れる中、視聴者の目線と時間の奪い合いになっています。しかし、「何をやろうが見られれば良い」という姿勢は、TVerには似合いません。公共の福祉に適合し、国民に最大限に普及され、自律を保障することで表現の自由が確保され、健全な民主主義の発達に資する――これら放送局が大切に考え、長い時間をかけて積み上げてきた信頼こそが今、インターネット配信の時代にあってTVerをユニークな存在にしていると思います。
10周年を迎えたTVerの10周年メッセージは「Tele-vision ▶ Next-Vision」です。「Television」は、「遠く」を意味するギリシャ語の「tele」と、「見る」を意味するラテン語の「vision」が語源です。遠くを見る「Television」の先にある「Next Vision」。5年後、10年後に「何が見えるのか」「何を見たいのか」、そのために「何をするのか」「何をなすべきなのか」を思い描きながら、放送局クオリティであることを最大の武器とし、それこそが視聴者やアドバタイザーから期待されている役割であると肝に銘じ、さらにサービス、そして事業を拡充してまいります。

