配信最大手ネットフリックスが、新たな広告入りプラン「Basic with Ads」を世界12カ国で開始する。まずカナダとメキシコで11月1日、続いて米国、イギリス、オーストラリア、ブラジル、フランス、ドイツ、イタリア、日本、韓国で同3日、スペインは同10日からサービスが始まる。その後も随時、国際市場を広げていく方針だという。
毎月の視聴契約料は米国が6ドル99セント、日本は790円。ライバルとなるサービスの広告入りプランの月額は、Paramount+とピーコックが4ドル99セント、HBO Maxは9ドル99セントで、これらの中間をとった価格となっている。
ネットフリックスは米国で現状、3つの広告なしプラン(9ドル99セント、15ドル49セント、19ドル99セント)を提供している。新たに始める安価な広告入りプラン開始後も、これら従来の広告なしプランの値上げはしない。Disney+は12月に新たな広告入りプランを開始した後は、既存の広告なしプランの値上げを計画しており、ネットフリックスはライバルよりユーザーにとってフレンドリーな条件をまず提示して見せた。
導入される広告の量は1時間に4〜5分で、競合他社とほぼ足並みを揃えている。同じ広告が何度も繰り返し流れないよう、頻度の上限を厳しく設けているとしている。コンテンツの開始前と番組途中に15秒または30秒の広告が導入され、新作オリジナル映画のみ作品が始まる前だけに広告を流すが、徐々に映画の途中にも導入していく予定だ。
ただし、広告なしプランの全コンテンツを、広告入りプランで見られるわけではない。外部制作のコンテンツは、ライセンス規制の関係で広告入りプランでは配信できないものもある。国によって規制が異なるため、広告入りプランで見られるコンテンツ、見られないコンテンツは各国で異なる。
広告主にブランドセーフティーを可能な限り保証するため、「ヌード」や「暴力」といったキーワードによってコンテンツを除外できる機能を提供することも発表された。ターゲット機能はしばらくの間は限定的に運用する方針だが、徐々に広げていく予定。将来的にはデモグラフィック情報に基づいたターゲティングを可能にするため、広告入りプラン契約者は契約時に生年月日と性別を入力する必要がある。
広告入りプランの12カ国での開始に当たり、広告主のリストは発表されていないが、大手自動車メーカー、消費財メーカー、旅行関係、小売、高級ブランドなど、世界の数百社が広告契約したということだ。広告視聴データではDoubleVerifyとIntegral Ad Scienceと提携し、2023年第1四半期からデータ提供が始まるほか、全米市場向けにはニールセンのDigital Ad Ratingsを採用することも発表されている。この視聴データは、将来的には「Nielsen ONE」のクロスプラットフォームデータに組み込まれていく。
アドエージ誌によると、ネットフリックス広告枠のCPM(1,000インプレッションあたりの広告単価)は当初60ドル台半ばと報告されていたが、実際には50ドル台後半との報告もあり、まだ様子見段階のブランドも多いと考えられる。
またネットフリックスは、広告入りプラン開始直前となる7ー9月期に、世界で240万人の新規契約者を追加し、予測していた100万人を上回ったと公表した。過去2期連続で契約者が減って以来、久々の復活を果たした。世界の契約者の総数は2億2,309万人となった。広告入りプランの導入を控え、次期(10ー12月)の新規契約者数予測は450万人と見込んでいる。