フランスやイタリア、ドイツなど欧州各国をはじめカナダ、オーストラリア、ニュージーランド、南米の映画・テレビ制作者らが各国ごとに組織する20団体が1月半ば、共同声明を発表した。映像制作分野の文化的・経済的な重要性を強調し、各国の政府にローカルコンテンツ保護のための規制を行うよう提言。具体的には、米国の大手配信事業者が各国でサービスを行う際、それぞれの地域のコンテンツ制作にこれまで以上に投資するよう求めている。国境を超え、これほど広い範囲で業界が団結するのはきわめて異例のことだ。
参加団体の一つであるカナダ・メディア・プロデューサー協会が1月17日に発表した声明文によると、目的は、①各国の文化資産の保護、②その国で制作されたコンテンツの所有権(IP)確保、③ローカルでの制作機会の拡大――の3点。特にIPの所有権を地元の制作スタジオが保持することは、そのIPの成功報酬が正当に制作スタジオにもたらされるためにも重要だとしている。ちなみに、前記のサイトには参加20団体がすべて明記されている。
具体的な方策としては、EUが採択した指針「視聴覚メディアサービス指令」(Audiovisual Media Services Directive= AVMSD)を声明文に賛同した団体の各国で徹底することだという。AVMSDは米配信サービス大手が海外で事業展開する際、その国での売り上げや収益の一部をその国のローカルコンテンツ制作に投資しなければならないと定めている。その一環として最初に国内ルールを導入したのがフランスで、2021年以降、Netflixなど配信大手は、フランス国内の収益の20―25%をローカルコンテンツの制作費として充当するよう義務づけられている。今回の共同声明文にはその趣旨をあらためて明記し、プラットフォーム事業者に、それぞれの国におけるコンテンツ制作への経済的貢献を求めた。
23年の長期におよんだ米国のダブルストライキも、配信サービスの報酬と再放送に対する追加支払いが交渉の軸となった。24年はこうした駆け引きがさらに激しくなりそうだ。