テレビ朝日「出前授業」20年の取り組み 放送局を飛び出し 大人から子どもまで テレビの楽しさ伝える

久慈 省平
テレビ朝日「出前授業」20年の取り組み 放送局を飛び出し 大人から子どもまで テレビの楽しさ伝える

テレビ朝日「出前授業」スタートから20年

テレビ朝日が社会貢献活動の一つとして行っている「出前授業」は2005年2月に在京キー局として初の取り組みをスタート。2025年でちょうど20年、大人向けの「テレ朝出前講座」と合わせると、これまでに約2千回、約20万人に実施してきました。キリが良すぎる数字ですが、本当です。

出前授業は情報学習や職業体験などの「総合的な学習(探究)の時間」支援を目的として、テレビ朝日の社員、スタッフが直接学校に出向き、「テレビ局の仕事」や「ニュースができるまで」などについて分かりやすく説明します、と書くと何だか堅苦しいですね。授業に向かう私たち講師陣の思いはいたってシンプル。「たくさんの子どもたちにテレビの楽しさを伝えて、テレビを好きになってほしい」という一心で、テレビ朝日の放送エリアである関東各地の校門をくぐります。

「ニュース番組で大切なことは?」

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<講師を務める筆者=㊧、菅原知弘アナウンサー=㊨>

1月16日(木)は川崎市立西丸子小学校で5年生の2クラス、約70人の児童に向けて「ニュースができるまで」の授業を実施しました。講師は広報局お客様フロント部で出前班チーフの私と菅原知弘アナウンサーの2人です。

前半はVTR「ニュースができるまで」とパワーポイントの資料をスクリーンに映し、ニュース番組の舞台裏を紹介しました。報道経験が長い私から「ニュースで大切なことは速さ、正確さ、分かりやすさ」であると説明、菅原アナが「ニュース専用スタジオではカメラに原稿が映っている」とアナウンサーがカメラ目線でニュース原稿を読める工夫を話すと、児童からは驚きの声が上がりました。

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<出前授業のために作成したVTR「ニュースができるまで」から>

後半は児童たちがアナウンサーになりきって、ニュース原稿を読むワークショップ。菅原アナは「恥ずかしがらず、口を大きく開けて、ゆっくり読みましょう」とプロならではのアドバイスをしました。

質問コーナーでは「原稿を読み間違えたときはどうするの」「CM中は何をしているの」などと次々に手が上がり、担任の教師からは「子どもたちだけなく、大人の私たちも勉強になりました」との感想をいただきました。

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<真剣に聞く児童たち=㊧、次々と手が上がる質問コーナー=㊨>

「ニュース体験」は定番コンテンツ

1月23日(木)に訪れたのは東京・板橋区立高島第五小学校。講師は出前班メンバーで、元アナウンサーの田邉美樹さん。その柔和な話し方は子どもたちに大人気です。この日は5、6年生の55人にVTRを見せながら「テレビ番組の舞台裏」を紹介しました。「『ミュージックステーション』では何本のマイクを使っている?」「スタジオの照明の数は?」などクイズ形式で楽しい授業を進めていきます。

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<田邉美樹さんの授業のようす>

後半は「ニュース体験」。絶対に盛り上がる〝テッパン〟のコンテンツです。時間通りに原稿を読むアナウンサー、カウントを出すディレクター、正確に時間を計るタイムキーパーの仕事を全員で練習した後、代表チームが同級生の前で発表しました。初めはうまくできなかった児童も再チャレンジで成功すると、クラスメートから大きな拍手を受けていました。テレビ番組はチームワークで作られていることを実感してもらい、児童からは「将来はアナウンサーになりたいです」とうれしい感想がありました。

出前授業を実施した学校からは、児童たちが書いた感謝のお手紙をいただくこともあり、私たち講師陣のヤル気につながっています。

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<児童からの感謝のお手紙>

多士済々の講師、さまざまなカリキュラム

出前授業の第1回は2005年2月1日。東京・文京区の小学校にニュースデスクが出向き、ニュース番組がどのように作られているのか話しました。当時の記録を見ると「小学生には目からうろこの話なのか、〝ぽかーん〟な表情もちらほら」と書かれています。講師も児童も初めてで緊張していたのかもしれませんね。

講師は第一線の記者やディレクター、アナウンサー、カメラマンのほか、報道や制作経験のある他部署の社員まで多士済々。これまでにのべ150人以上が登壇してきました。小学校に加えて、中学校や高校では「職業講話」、大学では「メディアリテラシー」など、レベルに合わせたカリキュラムを準備。日本語学校、海外の学校にも対象を広げ、9年目の2011年9月には受講生がのべ5万人に達しました。

当初は黒板にチョークというスタイルでしたが、その後、ホワイトボードやワッペンを導入したり、カメラやマイクを持ち込んだりするなど、子どもたちが興味を持つように工夫を凝らしました。最近では映像や資料をノートパソコンからスクリーンに出力するなどデジタル化が進み、コロナ禍を経たことでオンライン授業も始めています。

「オーダーメード」が特徴の「テレ朝出前講座」

子ども向けの出前授業から発展するかたちで、大人向けの「テレ朝出前講座」が始まったのは2008年11月。自治体や主催団体の担当者と話し合って講座内容を決め、そのテーマにふさわしい講師を派遣する「オーダーメードの講座」であることが大きな特徴です。ニュースだけでなく、ドラマやバラエティ番組、地デジやビジネスなどテーマは多種多様。元アナウンサーによる「話し方・コミュニケーション講座」は高齢者を中心に不動の人気を誇っています。

 

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<大人に向けた生涯学習を支援する「テレ朝出前講座」>

1月26日(日)には東京都羽村市で、こちらも人気の「災害報道・防災講座」を開催しました。災害報道が専門で防災士でもある私が市内のホールにうかがい、市民約50人が集まりました。前半のテーマは「テレビの災害報道」。地震や津波などの緊急時にテレビ局がどのように対応しているのか、ニュース映像を見ながら紹介。地震訓練や取材現場の安全対策にも触れて「災害報道に勝ち負けなし」という姿勢を伝えました。

後半は地域防災をテーマに、羽村市の特徴から警戒するべき防災情報を解説。地震や水害が起きた時の注意点についてハザードマップを見ながら確認しました。参加者からは「気象庁の災害情報をどのように入手しているのか」「視聴者が撮影した映像はどのように見つけるのか」などの質問が次々に寄せられました。

視聴者に会える「場」として

テレビ業界は転換期を迎えています。テレビを見る人が減少し、信頼が揺らぎ、「オールドメディア」などと表現されることもあります。多様なメディアが存在し、テレビ局の仕事が複雑化しているいまこそ、視聴者に直接会える「場」はとても貴重です。「テレビって面白い」「テレビニュースは信用できる」と知ってもらうにはどう伝えるべきなのか。模索を続けながら、きょうも東京・六本木の本社を飛び出します。


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