ラジオDJ体験教室を続ける意味
FMヨコハマでは、2010年度から、小中学生を対象に「ラジオ・DJ体験教室」(=冒頭写真)に取り組んでいます。スタート当初から放送番組センターが運営する横浜の放送ライブラリーとともに開催しており、子どもたちにラジオを身近に感じ、興味を持ってもらうことを目的としています。情報源が無数にある現代、特にSNSの影響力は絶大です。しかし、だからこそ、「ラジオ」というメディアが持つ独自性や可能性を感じる機会も増えていると思います。若い世代にぜひとも情報源の1つとして「ラジオ」を選択肢に入れてもらいたいと思っています。
ラジオは、私たちにとっては「オールドメディア」とも言える存在かもしれません。しかし、若者にとっては、むしろ新鮮な発見が詰まった「新しいメディア」として映る可能性もあるのでは、と思うようになりました。このような視点を持つようになったからこそ、「ラジオはもう古い」と決めつけてしまうのではなく、むしろ新しい価値を見出し、広めていこうという気持ちが強まりました。この「ラジオ・DJ体験教室」もその一環であり、草の根的な活動ではありますが、若い世代にラジオを知ってもらい、日々の生活に取り入れてもらうきっかけを提供したいという願いを込めて続けています。
<ラジオスタッフのアドバイスを受けながら番組づくり>
体験教室で得られる学びと気づき
この取り組みは、単にラジオを紹介するだけではなく、運営側である私たちにも大きな学びを与えてくれます。「今の若者はこんなふうに感じているのか」「小中学生はこんな音楽を聴いているのか」など、普段の仕事だけでは得られない生の情報を知る貴重な機会となっています。毎回、参加者の皆さんや親御さんから得られる感想や意見には、新鮮な驚きがあり、あらためて「やってよかった」と感じる瞬間がたくさんあります。親御さんから寄せられる感謝のメッセージやお礼の言葉も、活動を継続する大きな励みになっています。
実際に、この体験教室の影響でラジオ業界に飛び込んできた人もいます。今、FMヨコハマで一緒に働いている後輩の一人も、かつてこの「ラジオ・DJ体験教室」に参加し、ラジオの楽しさを知って業界を目指してくれました。この活動が未来のラジオを支える若い力を育てているのだと感じ、続ける意義を実感しています。
教室での具体的な活動内容
「ラジオ・DJ体験教室」では、子どもたちをいくつかのグループに分け、それぞれのグループでディスカッションや番組の進行練習を行います。プロのラジオ制作会社スタッフが、話すときの頭の整理の仕方、緊張を和らげるコツ、相手とコミュニケーションをうまく取る方法などを丁寧に教えます。その後、FMヨコハマのDJとともに模擬番組をスタジオで収録し、実際のラジオ放送と同じ手順で進行します。
また、子どもたちには自分の「リクエスト曲」を持ち寄ってもらい、実際に曲をかける経験をしてもらいます。この演出は、FMラジオならではの魅力を体感してもらうための重要な要素であると思っています。さらに、近年は、収録した模擬番組を日曜日の深夜(試験電波送出時間帯)に放送することもあります。このような機会を通じて、子どもたちに「自分が関わったものが本当にラジオで流れる」という特別な体験を味わってもらうことで、ラジオへの興味をさらに深めてもらいたいと思っています。
コロナ禍の影響で対面活動が難しかった時期に知見を得たオンラインシステムを活用し、親御さんがスタジオ内の様子を別室でモニター見学できる仕組みも導入しました。この工夫により、体験をより安全かつ充実したものにすることができました。
<子どもたちの番組収録を見守る保護者>
「話すこと」の大切さを伝える
この体験教室を通じて伝えたいもう一つのメッセージは、「話すこと」の重要性です。現代ではSNSやテキストメッセージが主流となり、文字でのコミュニケーションが重視されています。しかし、「話す」という行為は、今も昔も人間にとって非常に重要なコミュニケーション手段の一つであると断言できます。人生の中で、入学面接、就職試験、大事な仕事のプレゼンテーションなど、人前で「話す」場面は避けて通れません。そのため、この体験教室を通じて「話す力」の大切さ、楽しさ、そしてそのためのコツを感じてもらうきっかけになってもらえれば、と思っています。子どもたちが大人になったときに、「あのときのラジオ・DJ体験教室が役に立ったな」と思い出してくれる瞬間があれば、この活動の価値がさらに広がると思います。
続けることの意味
「ラジオ」というメディアは、変化の激しい情報社会の中で試行錯誤を繰り返しながら、独自の役割を果たし続けることができると信じています。この「ラジオ・DJ体験教室」は、その役割を次の世代に伝え、さらなる可能性を広げるための大切な活動であると考えています。この取り組みを放送ライブラリーと一緒に続けることで、私たち自身も子どもたちとの交流を通じて新しい発見を得ながら、ラジオの未来をともに創り上げていきたいと願っています。この体験教室での活動は、私たちにとっても貴重な学びの場であり、同時に社会に向けたラジオの存在をアピールする場でもあると思っています。そのため、これからもこの取り組みを進化させ、より多くの人々にラジオの魅力を伝えていきたいと考えています。