3,000人を超える犠牲者を出した2001年9月11日の米同時多発テロ事件から20年。今夏のアフガニスタンからの米軍撤退と相まって、米メディアの今年の「9.11報道」は例年以上に熱を帯びた。
ローカル各局は毎年、事件発生当日の午前中に行われる追悼式の様子を生中継している。追悼式は、ハイジャックされた航空機が激突したニューヨークのワールドトレードセンター(WTC)跡地とバージニア州の国防総省、同1機が墜落したペンシルベニア州ピッツバーグ近郊のシャンクスビルで行われ、それぞれ被害者一人一人の名前が読み上げられる。被害者が多かったWTCでは、実に4時間に及ぶ。
今年は各局がこれらの中継に加え、8月末からほぼ毎晩、通常の報道番組を9.11特集に切り替えた。生存者の声を集める番組や、消防士や清掃従事者が何年も経ってがんを発症している現実を取り上げた番組など、テーマには事欠かなかった。
各局制作のドキュメンタリー番組も、それぞれ評価が高い。公共放送PBSの「America After 9/11」は、9.11からの20年を現在の米国政治の二極化に結び付けて検証。ナショナル・ジオグラフィック・チャンネルの「9/11:One Day in America」、ヒストリーチャンネルの「9/11:Four Flights」などは、当日のWTC周辺を市民が撮影したビデオを発掘・入手。テロ当日の混乱やWTC内での消防士らの救助作業の様子を生々しく伝えた。これらはいずれも、テレビ放送した後に、Huluやユーチューブ、局独自の配信アプリで継続配信している。
配信では、Apple+が「9/11:Inside the President's War Room」を制作し、無料配信。ブッシュ元大統領、チェイニー元副大統領など、当時の要人へのインタビューが評価されている。ネットフリックスの「Turning Point:9/11 and the War on Terror」は、9.11の原因をあらゆる分野の専門家が1980年代までさかのぼって解説した。