8月20日中央審査【参加/49社=49本】
審査委員長=西村達郎(演出家、作詞家)
審査員=奥貫 薫(女優)、亀渕昭信(通信文化協会理事)、近藤則子(老テク研究会事務局長)
※下線はグランプリ候補番組
もちろん番組はすべてそうだが、特に「ラジオ生ワイド番組」はパーソナリティの個性の競い合いだと思う。そして本年の「ラジオ生ワイド番組」、最優秀賞はもっとも熱く、その個性を打ち出した番組が選ばれた。
最優秀=エフエム北海道/IMAREAL(=写真) 学生の居場所作りを目的としているこの番組は、パーソナリティの森本優の"魂の思い"が色濃く反映されている。森本はSOSを出している学生を放っておかない。何が何でも助けようとする。森本は巧みな会話で応ずるのではなく、本気のリアルな森本で向き合う。すると学生は心を開く。かなりシンプルな図式がそこにある。わかりやすくて熱い。だから学生にとって森本の番組は大切な居場所となる。若い世代はラジオ番組をスマホで聴く現実があるが、この番組では学校訪問を行いながらradikoの普及を進めているそうだ。それによって新しいリスナーを獲得し、この番組がまた彼らの居場所となっていくのだ。
優秀=ニッポン放送/笑福亭鶴瓶 日曜日のそれ 笑福亭鶴瓶ありきの番組ではあるが、相方を務める上柳昌彦のおしゃべりと瞬時に状況を伝える能力の高さに審査員全員が感心していた。かなり複雑な状況が出現して、リスナーのためにも一度、整理しておきたい場面があった。すると上柳アナがすぐに話の筋をわかりやすくまとめた。鶴瓶も率直に上柳アナのプロの技を評価し、さらに自由に鶴瓶ワールドを展開する。そしてそこには笑いと涙と感動と、また時には奇跡のような物語も生じるのだ。
優秀=静岡放送/鉄崎幹人のWASABI 2020年の夏に放送した「WASABI親子夏休みスペシャル」で「昔話」を特集した番組が今回の参加作品。「昔話」は近年、出版物やテレビ、ラジオ番組、CMなどでも取り上げられているが、今回はさらに新鮮な発見があるのかと聴いていたが、その点は物足りなかった。ただし「浦島太郎」にも出てくる動物のカメの話題に関しては、鳴き声の紹介など興味深く、面白く、鉄崎幹人の話術も光っていた。
優秀=東海ラジオ放送/源石和輝!抽斗!特番 東日本大震災から10年 防災の抽斗! 「2011年3月11日、あなたはどこで何をしていましたか?」をテーマにあらためて災害を自分のこととして捉える機会になることを意図した番組だった。そのなかで審査員全員が感銘を受けたのは、ラジオ福島のパーソナリティ・大和田新の話。震災の時、マイクの前で伝え続けた放送人としての誠実な自己分析は聴く者の心を揺さぶり、衷心に届いた。前半の大和田新のインパクトが大きかったので、後半のゲストの体験談や街頭インタビューはやや影が薄くなってしまった感がある。
優秀=MBSラジオ/ナジャ・グランディーバのレツゴーフライデー なんだかゆるーい番組で、なんだかすんなり聴けた。審査ではともかく四方山話で終始するのは立派だという意見と、固定したファンをひきつけるが、広がりが気になるという意見があった。どちらの見解も制作側としては織り込み済みだとは思うが。番組後半で電車内にいるリスナーに対して番組内から「このラジオ番組を聴いている人は手を上げて」と急きょ、聴取率調査を行った。数人が手を上げたが、その光景を想像するとなんとも楽しくなる。ラジオ番組の聴取スタイルは確実に変化している。
優秀=南海放送/井坂彰のサタデーライブJAにしうわプレゼンツまだまだ終わらないオレたちの西宇和みかんー中晩柑SPー 温州みかんの時期が終わる頃から市場に出てくる中晩柑(ちゅうばんかん)にスポットを当てたこだわりの番組だ。中晩柑に関わるさまざまな人が出演するが、みんな中晩柑愛が熱い。番組はローカル色が強烈なのだが実は他の地域のリスナーも満足できそうな内容だ。地域から全国へというアプローチもありだ。
優秀=九州朝日放送/アサデス。ラジオ(branch) 地元で22店舗展開しているディスカウントストア「ルミエール」を紹介する、これまた超がつくほどローカルな番組内容。最初はテレビ番組の方がこの企画はふさわしいと思って聴いていた。しかしリスナーが日常生活で、ルミエールをどう利用しているかが紹介され始めると、一気に、番組内容はルミエールの店紹介から、店を利用する地元の人々の日常生活の紹介に移った。番組の主役が店ではなくリスナーになったのだ。これぞラジオ番組だと思った。
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