マスクを外せない生活はいつまで続くのか――。私たちがコロナ禍で痛感したのは、感染症の怖さではないでしょうか。難病を抱える連也さんは、生まれてからずっとこの恐怖と闘っているのです。連也さんが発症した難病「高IgD症候群」は、慢性的な炎症に加え、感染症を発端に全身に激しい炎症が起こるもので、患者は国内に数人しかおらず、治療法はまだ見つかっていません。
取材を始めた時に小学5年生だった連也さんは、今年、成人式を迎えました。辛い時には、痛みを紛らわすように絵を描いて思いを表現してきました。終わりのない闘病の20年の間、感染予防の生活を続けてきた連也さんの生き方を追うことで、コロナ禍を生きる私たちが気付かされることや学ぶことがあるのではないかと思い、番組を制作することにしました。
連也さんに「コロナ禍に大切にしていることは?」と聞くと、「人とのつながり、出会うこと」という答えが返ってきました。人とのつながりが問われる日々の中で、私も連也さんの言葉に勇気をもらった一人です。私自身が10年の取材を続ける中で母親になり、改めて連也さんや家族の思いに寄り添いながら、手紙を書くように彼の歩みをつづりました。
希少難病の患者やその家族の置かれた現状は、とても厳しいものです。新型コロナウイルスの収束とともに、病気への理解や新薬の開発が進むことを祈っています。
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