2022年民放連賞審査講評(ラジオ生ワイド番組) パーソナリティの魅力やリスナーとの交流が醍醐味

近藤 則子
2022年民放連賞審査講評(ラジオ生ワイド番組) パーソナリティの魅力やリスナーとの交流が醍醐味

8月19日中央審査【参加/45社=45本】
審査委員長=近藤則子(老テク研究会事務局長)
審査員=青木江梨花(脚本家、日本脚本家連盟理事)、亀渕昭信(通信文化協会理事)、西村達郎(演出家、作詞家)

※下線はグランプリ候補番組


ラジオの生ワイド番組はパーソナリティの魅力とともに、各地の文化やリスナーとの交流が評価のポイントです。今年も全国から、「これぞ生ワイド!」と思わせる素晴らしい番組が集まり、審査員は選考にうれしい悲鳴を上げました。

最優秀=ニッポン放送 /佐久間宣行のオールナイトニッポン0(=写真) 「オールナイトニッポンが夢だった」というパーソナリティの佐久間宣行さんのラジオ愛溢れる番組が最優秀となりました。大きい声と大きな笑い、テンポの良い語りに誰もが魅了されました。高校1年生の娘さんと箱根旅行した家族愛に満ちたエピソードにはほろっとさせられ、「すぐ辞めちゃう人たち」の話には大爆笑。「選曲も若い!」とは最年長審査員の弁です。現代のサブカルチャーに関する豊かな知識と経験がリスナーとの企画会議のようなやりとりを盛り上げます。この番組は佐久間さんの人間的魅力とエンタメ愛、リスナーの番組愛で作り上げる総合芸術です。

優秀=青森放送/GO!GO!らじ丸 ~離れて訪ねて浪岡編~ コロナで対面取材ができない困難さを逆手に取った良い企画です。ラジオカーでリスナーの思い出の場所を訪問するリポーターが目的地の中学校などに向かうのですが、放送中にリスナーからリアルタイムで情報が届いてびっくり。この番組が地元で高い支持を受けていることがよくわかります。軽トラが集まっての「ドライブイン ライブ」で民謡を聴けるなんてすごすぎます。ラジオから流れる歌声にクラクションで拍手! には大拍手です。

優秀=新潟放送/工藤淳之介 3時のカルテット 番組の日替わりパートナーの1人で地元の漫画家兼エッセイストのちゃい文々さんが、乳がんを患い手術を受け、番組に復帰した日の放送。同じ体験をされた多くのリスナーからのたくさんの応援や「声のメッセージ」に心が熱くなります。病のつらさは伝えにくく、周囲もどのような声かけをすればいいのかわからず困るものです。ラジオコミュニティの温かさと程よい距離感が大きな救いになっていました。ちゃいさんの闘病中のエピソードとリスナーの投稿、長渕剛さんの歌がぴったりマッチして「ラジオっていいな」と実感した番組です。

優秀=北日本放送/とれたてワイド朝生 たかが毛、されど毛、みんなで髪の毛の話、せんまい毛!スペシャル 「髪の毛から始まるSDGs」という文言がものすごくキャッチーと言った審査員もいたように、悩み多き薄毛問題をこれほど深く、多角的に取り上げているのは画期的です。抗がん剤の副作用による脱毛の話などは共感したリスナーも多いと思います。表現の難しいデリケートな話にもパーソナリティはとても配慮のある気持ちのいいトークで、長さを忘れて聴き入りました。

優秀=FM802/ROCK KIDS 802―OCHIKEN Goes ON‼― 関西で大人気の音楽中心の生ワイド番組。中高生からのメールとヒット曲、多彩なゲストとのトークもテンポよく、「かっこいいなあ(今はクール?)」とほれぼれしました。パーソナリティの落合健太郎(オチケン)さんの声の魅力もさることながら、若者だけでなく大人が聴いても選曲と構成がすばらしいと感じます。オチケンさんはもちろん、番組スタッフたちも音楽が大好きだからでしょう。リスナー同士の交流もある王道の若者ラジオ番組の最高峰だと思います。

優秀=エフエム愛媛/カモ☆れでぃ★Night! 「学校CMコンテスト」の審査発表スペシャル。高校生たちが60秒で母校をアピールするというもので、参加者たちのレベルの高さに驚きます。仕切り役の中岡良一さん、そしてアシスタント役の古谷那瑠美さん、花野さん3人の応対も丁寧で優しく、CM制作に関することはもちろん、学校生活についての話も引き出して楽しい。コンテストのグランプリを受賞したのは最も小さな内子町の分校で、このCMの効果もあってか廃校を免れたようです。素晴らしいラジオの貢献です。

優秀=琉球放送/ナガハマヒロキの週刊リッスン 地域の魅力を伝えるという点で最も高い評価だった「週刊リッスン」。沖縄の離島でパーソナリティのナガハマヒロキさんと一緒にカフェにいるような気分になれました。5つの離島に暮らす人たちとのトークや島の音楽は、目の前に沖縄の美しい海と空を見せてくれます。島の名所やおいしいもの、サメより怖い春のウミガメの話にはびっくり。「ゴキブリは扶養家族さあ」というおおらかさにほっこりしました。そんな素敵な島の現地特派員の皆さんと一度も会ったことはないというナガハマさんの高いコミュニケーション力に脱帽です。

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