2022年秋のローカルラジオ新番組 ラジコプレミアム100万人を機に広く浸透を

やきそばかおる
2022年秋のローカルラジオ新番組 ラジコプレミアム100万人を機に広く浸透を

今秋の改編でラジオ関係者やラジオファンをとりわけ驚かせたのが、開局63年目を迎えて大きな改編を行った東海ラジオだ。その改編率は59%にも上る。コンセプトは「オトナのミュージックステーション」。これまでのトーク中心のプログラムからエッジの効いたトーク&ミュージックプログラムへと進化するというもの。今春の改編に続いてFMの番組で活躍していたデイル、イレーネといったDJを起用したほか、同局のサイトの雰囲気もガラリと変えてスタイリッシュになった。SNSではこれまで東海ラジオを聴いていた人々から困惑の声が上がっていた一方、引き続き聴いている人や新たに同局を聴き始めた人も多いようで、新しくなった東海ラジオが今後どのような形で人々の生活に浸透していくのか注目だ。 

同局のもうひとつの話題は、さだまさしがパーソナリティを務める深夜番組『さだまさしレコードデビュー50周年記念番組「1時の鬼の魔酔い」』(月、25・00―26・00)が始まったことだ。月曜深夜1時に始まる1時間の生放送である。さだにとって深夜放送は『セイ!ヤング』(文化放送)終了以来28年半ぶりとなる。さだと東海ラジオとの繋がりは長い。さだが所属していたフォーク・デュオ、グレープが1974年にリリースした『精霊流し』を当時『ミッドナイト東海』のパーソナリティを務めていた蟹江篤子が気に入り、何週にもわたって放送することで大ヒットのきっかけをつくったからだ。さだは今年10月にレコードデビュー50周年を迎え、自身と深い縁のある同局から放送することが決まった。初回は恩人のひとり、蟹江篤子もグレープでコンビを組んでいた吉田政美とともに出演した。この番組が始まったことを機にradikoのエリアフリーに加入した人からもお便りが寄せられている。人生の酸いも甘いも味わった大人たちによる深夜の雑談は聴いていて耳に心地いい。ちなみに蟹江がタクマとパーソナリティを務める『かにタク言ったもん勝ち』は今秋60分番組に拡大された。こちらも東海ラジオとともに人生を重ねてきたふたりとリスナーの交流の場となっている。

ほかのラジオ局に注目すると、ここ数年は若手芸人ブームもあり、各地のラジオ局で若手芸人を起用した番組が続々と始まった。そんななかでも関西でベテランの貫禄を見せているのがメッセンジャーだ。MBSラジオ『それゆけ!メッセンジャー』(土、11・30―12・55)、『メッセンジャーあいはらのYouはこれから!』(水、15・00―18・00)ともに好調。昨年ナイターオフの番組として始まった『メッセンジャー黒田のチラシダス』(水、18・00―20・00)もセカンドシーズンがスタートした。『チラシダス』はさまざまなチラシをもとにトークを展開するユニークなコンセプトだ。誕生したばかりの番組だが第59回ギャラクシー賞ラジオ部門で選奨となった。黒田を中心に山本量子、アナウンサーの亀井希生ら出演者全員が博学で、世間ではあまり知られていない逸品にも詳しい。特に黒田はスーパーで売られているものの値段にも敏感である。楽しいエピソードとためになる話のバランスが絶妙だ。聴けば気になるものが増えていく。

そのほか、ユニークな企画の番組が各地で続々と始まった。まずは音で楽しみたい番組から2本を紹介。AIR-G'(FM北海道)『JR貨物presents Sound of Train』は貨物列車の走行音や連結部の音、貨物駅で聞こえる音など、音を楽しむ5分番組だ。10月はタマネギ列車の走行音、11月は帯広編を放送している。放送時間は平日の23時55分から24時まで。空想で鉄道旅行をしながらホッと一息つきたい時間である。

広島FM『Premium Car Sound Gallery supported by Katakami Auto』(金、12・55―13・00)は普段はなかなか聞けない車の音を楽しむことができる。これまでにランボルギーニ・カウンタック5000クアトロバルボーレ、マクラーレン720S、世界限定500台のアルファロメオ GTAmといった希少な車の音に焦点を当てている。ドアを閉めた時の音や、キーを入れてまわす音など、聞くだけでワクワクする。

文学についてユニークな角度から迫るのがFM熊本『アイラヴ漱石先生朗読館』(日、9・30―9・45)。漱石は熊本で暮らしていた時期があり、熊本を舞台にした作品も多く残る。番組では漱石の解説をまとめたガイドブック『アイラヴ漱石先生―漱石探求ガイドブック』から毎回ひとつの作品にスポットを当て、地元の高校生が解説を聞いたり感想を言い合う。 

ユニークなパーソナリティの新番組としては、"カエル"が人生相談にこたえる番組が始まった。FM愛媛『一平くんのゲコゲコ相談室』(月、11・40―11・55)は愛媛FC非公認サポーターのカエルの一平くんが人間から届いた相談に乗る番組。口は少し悪いが困っている人がいると放っておけない一平くんがアドバイスをする。「ただし真面目な相談はお断り」とのこと。身長の伸ばし方やジャンケンの勝ち方から腰痛の治し方まで、あらゆる内容の相談事に対して一平くんはブツブツ言いながらもカエルなりの助言をする。ユーモアがあり聴いているうちに愛おしくなってくるから不思議だ。

北海道のSTVラジオ『すすきのの』(土、22・30―23・00)はパブ&バー「DNAすすきの」を営む坂田広之と芸人の根本悠(ゴールデンルールズ)がパーソナリティを務めるすすきの応援番組。ふたりとも肩の力が良い具合に抜けていて聴くと楽しい気分になる。坂田氏はすすきののタウン情報誌の編集に携わっていたこともあり、すすきのの街を見つめ続ける坂田氏ならではの話に注目。

山梨のYBSラジオの新番組『奏佑のBRASS BATON』(金、18・00―18・30)のパーソナリティの奏佑は山梨県立笛吹高等学校吹奏楽部の音楽監督を務めている。番組は30分を通して明るい雰囲気で、学生へのインタビューも楽しく盛り上げている。ラジオと吹奏楽の相性の良さが感じられる。

ここ数年、特にニッチなテーマの番組を立ち上げているLuckyFM茨城放送では"低山トラベラー"で山旅文筆家の大内征が低い山の魅力をテーマに語る『LUCKY OUTDOOR STYLE~ローカルハイクを楽しもう~』(土、20・00―20・30)がスタート。フラットトラックプロライダーの大森雅俊とモータースポーツが好きな山口あやの番組『わがままバイクライフ』(土、20・30―21・00)では、リード役の山口あやが大森雅俊からとっておきの話をグイグイ引き出す。

CBCラジオでは動画オーディションに合格した3組による番組『ハイアー×ハイアー』(火―木、21・00―21・30)が始まった。火曜はセクシーボイスなラジオDJ・ナレーターとして活躍する八木志芳、水曜は若手お笑いコンビのスナイパーキトー、木曜は専門学校生おくはが担当。なかでも八木志芳はSNSで性の悩みにこたえる音声配信も行っており、ラジオでも本音を交えたトークを展開している。女性のリスナーの参加が増えれば一層深い内容になりそうだ。水曜のスナイパーキトーは名古屋にある太田プロダクションの養成所に通う芸人のタマゴ。トークが面白く、ボケの手数も多い。木曜の「おくは」は声優の勉強をしている。朗らかな声でリスナーの気持ちをほっこりさせている。

大分のOBSラジオでは九州を中心に活躍する「ギャル大臣」が小田崇之アナウンサーと大分の学生とつくる『小田崇之とギャル大臣の土イチ de much-on!』(土、13・00―15・00)がスタート。ギャル大臣はアウトソーシング会社CEO兼、アパレルブランド「Not For Sale」元ディレクター。ITベンチャー企業の営業マンだった一面も持つ。小田アナウンサーは大分大学の学生とつくる『BUNDAIラジオ』(日、16・00―16・30)のパーソナリティも務めており、異なるフィールドで活躍するふたりと地元の学生との今後の展開が楽しみだ。

宮崎のMRTラジオで始まった『#ラジカル』(火、18・15―18・45)はライターであり「スナック入り口」のママでもある田代くるみと沖縄で映画をコンセプトにしたカフェ「リーフノット・コーヒー」を営むとんこつたろうによるカルチャートーク番組。田代氏は宮崎県出身。早稲田大学を卒業後、東京の編集プロダクションで、編集・ライター業に携わっていた。宮崎の魅力を発信したいと地元や九州のいいものを発信・PRする会社を創設。東京と宮崎の二拠点生活を経て現在は宮崎でウェブメディア「ひなた宮崎経済新聞」などで情報を発信している。さらに、スナックの魅力に惹かれたことがきっかけで昨年には宮崎最大の繁華街、通称「ニシタチ」にスナックを紹介するスナック「スナック入り口」をオープン。この店で情報を摑んでから他のスナックを訪れる人も多いそうで、地域の活性化に一役買っている。とんこつ氏も宮崎に住んでいたことがあり、宮崎を鍵にしたふたりのカルチャートークの濃さは絶妙だ。

今夏、radikoのプレミアム会員が100万人を突破したこともあり、さまざまな番組が浸透することを願うばかりだ。


敬称略

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