2023年秋のローカルラジオ新番組 パーソナリティにアナウンサーを起用 ひとりしゃべりや傾聴型など多彩に

やきそばかおる
2023年秋のローカルラジオ新番組 パーソナリティにアナウンサーを起用 ひとりしゃべりや傾聴型など多彩に

ナイターオフの番組が始まって2カ月強。今期はアナウンサーがパーソナリティを務める番組がいくつも始まり、ひとりしゃべり、もしくはゲストを呼んでじっくりと話を聞く番組が増えた。なかでも注目の番組の一部をピックアップして紹介したい。

北海道のHBCラジオ『北海道民いまむかし』(土、19・45―20・00)は帯広出身で、とかち観光大使も務める堀内大輝アナウンサーがゲストを迎えるトーク番組。テーマは北海道の言葉、変わった地名から、おいしい食べ物、夜の楽しみ方まで地元にこだわっている。堀内アナの口調もマイルドで聴き心地が良い。同局の『Music Delivery BAN BAN RADIO!』のDJを務める高島保が出演した回では、ススキノの夜の雰囲気の変遷をレクチャー。ススキノでプロダンサーとして活動していた高島が昭和のススキノの人の流れの変遷、バブル時代のスナック、ディスコ「マハラジャ」オープンの衝撃などススキノの文化を語り、平成生まれの堀内アナは「楽しそう!」と興味津々だった。

宮城のtbcラジオ『みんなのラジオ』(木、18・15―18・45)はリスナーの投稿がメイン。守屋周アナウンサーが投稿しやすいコーナーを多数設けている。「メールの数が最も多い」という愚痴を送るコーナーでは、投稿を紹介するとその用紙(廃棄する予定のものを使用)を破って投稿者をスッキリさせる。番組開始当初に「勢いよく紙を破る音を出すのが難しい」と嘆いていたのが印象的だった。

ラジオ福島では森本庸平アナウンサーと海藤尚美アナウンサーによるトーク番組『森海立話』(日、24・00―24・05)がスタート。5分番組で、番組の説明も自己紹介もなくゲリラ的に放送しているところが面白い。内容は髪型に関することや近所で見つけたチラシの話など、たわいのない雑談ばかり。知らずに聴いた人は放送が終わったあとで「今のはなんだったんだろう」と思うかもしれないが、そこが良い。

大阪のMBSラジオでスタートした『大吉洋平のロンリーサンデイ』(日、19・00―19・55)は日曜の孤独な時間を過ごすリスナーと、38歳でバツイチの大吉アナが共に時間を過ごす。心が沈みがちな日曜の夜に放送しているのがポイントだ。ひとりで楽しく過ごすトピックや、大吉アナウンサーが出会った愛すべき奇人変人を紹介する。大吉アナウンサーはアグレッシブな印象があるが「家族で共有している写真アプリに自分だけ招待されない」「大事な部分に出来物ができて医者に診てもらったら『自分では見えない部分なので奥様に塗り薬を塗ってもらって』と言われたが、奥さんはいない」とロンリーな面をチラリと覗かせる。

同じくMBSラジオでは大吉アナウンサーとも親交のあるミッツ・マングローブが『ミッツ・マングローブのかしこラジオ』(木、18・00―20・00)をスタートさせた。週替わりで同局のアナウンサーをゲストに迎える。マニア的な思考で人をみているミッツ氏はアナウンサーの分析も鋭く、「松井愛アナは"7時"を関西人っぽく"しちぃじ"って言うところが好き!」と言って同局のアナウンサーも驚くほど。

福岡のRKBラジオでスタートした『オーディオのじかん』(土、28・15―28・30)はRKB随一のオーディオマニア、坂田周大アナウンサーが、ある時はひとり語りを、またある時は専門家やオーディオにこだわっている店の店主を招いて話を伺う。時々、初心者リスナーを置いてきぼりにするくらいのマニアックな話になることもあり、それがかえって気持ちいい。

FM FUKUOKAは今春、愛智望美アナウンサーが立ち上げた学生を応援する番組『ナカニワスタジオ』の放送時間をこの秋から拡大して55分番組として放送している(水、21・00〜21・55)。『SCHOOL OF LOCK!』(TOKYO FM)が大好きでラジオ業界を目指した彼女。「今度は私が福岡の中高生に向けた番組を作ってラジオへの恩返しができたら」と企画した。学校を積極的に訪れて学生の声を聞いている。番組を立ち上げるにあたり『SCHOOL OF LOCK!』の元校長でSOL!教育委員会のとーやま委員(グランジの遠山大輔)や『大窪シゲキの9ジラジ』(広島FM)の大窪シゲキ氏、『IMAREAL』(AIR-G')の森本優アナウンサーをはじめ、各地のラジオ関係者から背中を押してもらったそうだ。『SCHOOL OF LOCK!』の直前の時間帯なので同番組のリスナーをもっと巻き込みたいところ。

熊本のRKKラジオでは同局のアナウンサーから3人ずつ週替わりで登場する『SNSじゃものたりない アナぐらむ』(金、20・00―21・00)を放送。それぞれが話したいことを、テーマを持ち寄って進行していく。3人のうち、どんな性格でどのくらいのキャリアのアナウンサーが進行の主導権を握るかがポイント。およそ10歳ずつ離れている男女3人で放送したこともあり、実験的な座組みも行っている。この番組で盛り上がった話を機に新しい番組の企画が生まれることも期待。

鹿児島のMBCラジオでは新人アナウンサー、田神沙羅と小野鼓太郎の『さらこたの「趣味log」』(金、18・50―19・00)が始まった。コンセプトは「鹿児島で遊び、鹿児島で繋がる」。趣味を通じて鹿児島の人々と触れ合う。田神アナは地元出身でミュージカルが大好き。小野アナは東京の葛飾出身だ。通常回ではそれぞれのロケの模様を丁寧に伝えているが、ふたりでトークをする回は田神アナが小野アナをグイグイとリードしている様子が面白い。

このほか、ユニークな企画の新番組を紹介する。
ふくしまFMでは『音で旅する只見線』(日、8・45―8・55)がスタート。2011年、土砂崩れなどで甚大な被害に遭い、22年に再開通したJR只見線。会津若松から只見まで88kmを走る様子を放送している。音を主役にしていて、とにかくシンプル。イヤホンで聴くとより臨場感が出る。鉄道の音をテーマにした番組といえば北海道のAIR-G'が昨年放送した『JR貨物 presents Sound of Train』も音を引き立たせていた。いずれも音を感じながらじっくりと楽しめる番組である。

埼玉のFM NACK5の『SAITAMA Z MAP』(日、18・00―21・00)は埼玉出身の荻野由佳(元NGT48)がZをテーマに、街に関連するエピソードを地図に書き込んでブログに公開する。Z世代の情報と、Z世代が知らない昭和・平成前期の世代の情報でパーソナリティとリスナーが盛り上がるのもポイント。例えばリスナーから届いた「埼玉にドライブインシアターがあった」という情報から、ドライブインシアターを知らない荻野由佳と知っているリスナーが情報を共有するといった展開も。

CBCラジオでは次世代のパーソナリティを育てる『TEEN~高校生イブキの一人喋り~』(日、12・50―13・00)と『トーク甲子園の軌跡』に注目。夏に行われた「トーク甲子園」で優勝し、荒削りながらも聴きごたえのあるトークを披露した高校生イブキくんが日常を語る。親世代からのメッセージのみならず、イブキにとってはおばあちゃんにあたる"人生の大先輩"からのファンレターも届く。イブキが好きな漫画に大人のリスナーから「私も大好きです」と反響があるなど、面白い展開を見せている。また、「トーク甲子園」ファイナリストの高校生「ヤンこは」は『トーク甲子園の軌跡』(日、20・45―21・00)で大会を振り返る。ヤンこはもフリートークがうまく、「トーク甲子園」に出場した高校生の魅力を伝えることにも長けている。

次世代といえば広島のRCCラジオ『メンバーのゆるリズム』(日、14・00―15:00)にも注目。お笑いコンビ「メンバー」は音楽を活用したネタのクオリティが高いことで話題の若手芸人。深夜ノリではなく、日曜の午後にピッタリなトークと音楽企画を展開する。広島の吉本芸人としては初めて大阪のNGK(なんばグランド花月)の舞台への出演も決まり、番組のトークではうれしさを爆発させていた。

最後に、新番組にまつわる話ではないが、沖縄のRBCiラジオの『民謡で今日拝(ちゅう うが)なびら』(月ー金、16・00―16・57)で56年にわたってパーソナリティを務めた上原直彦氏が卒業した。病気療養中で生出演はかなわなかったが、9月29日の放送では事前に録音した「島うたは絶対になくならない。恋人を愛するように愛していけば、番組は続けられる」というメッセージを流した。上原氏の思いは現パーソナリティに託された。

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