防災の日(2023年) ラジオ各局が伝える備えと過去の教訓 関東大震災100年や豪雨災害をテーマに

編集広報部
防災の日(2023年) ラジオ各局が伝える備えと過去の教訓 関東大震災100年や豪雨災害をテーマに

民放ラジオ局は今年も「防災の日」にちなんだ特別番組やイベントなどに取り組んだ。「防災の日」の由来でもある関東大震災100年を受けたものや、近年増加する豪雨災害を考える番組などが見られた。

HBCラジオ(北海道放送)は9月1日、特番『ラジオでつなぐ!言葉のバトン』(12・00―14・45)を組み、道内のコミュニティFMと連動した企画を放送した。HBCは2018年に道内のコミュニティFM22局が加盟する日本コミュニティ放送協会北海道地区協議会と連携協定を結び、地域や気象、災害の情報を相互共有してきた。北海道胆振東部地震から5年、北海道南西沖地震から30年を迎える今年に「いまできること」として特番を企画。防災に特化した番組での連携は初めてだという。

コミュニティFM6局と電話をつなぐ企画を実施。各局に「大地震、津波注意報が発令された場合」「真冬の大雪、停電時」の対応を聞いたほか、災害時の連携に向けて共有が必要な情報などを確認した。また、「AIを活用した多言語での情報発信」(函館市のFMいるか)、「毎月、緊急防災ラジオの定期試験放送を実施」(網走市のFMあばしり)など自社での取り組みなどの紹介があった。

パーソナリティを務めたHBCの山根あゆみ氏(=冒頭写真㊧)は「災害時はHBCとして全道の状況を発信するとともに、各地域の放送局とその周波数を伝え、リスナーがコミュニティFMを通じてより細かな情報を得られるようにしたい」とコメントしている。このほか、胆振東部地震で最大震度7を観測した厚真町から中継し、同町役場の小山敏史さんと丸山泰弘さんに地震発生時と現在の町の様子を聞いた。番組が始まる前から多くのリスナーからメッセージが届き、普段見ないラジオネームからの投稿もあったという。

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<日本コミュニティ放送協会北海道地区協議会の杉澤洋輝会長㊨も出演

熊本では、RKKラジオ(熊本放送)エフエム熊本NHK熊本放送局コミュニティFM4局の計7局が共同制作する特番『防災・命のラジオ』(12・10―13・00〔NHKのみ12・20―〕)を同時生放送した。番組は1997年からスタートし、28回目となる今回は「未来へ語り継ぐ」がテーマ。エフエム熊本編成制作部の伊佐坂功親氏は「番組全体を通じて、過去の災害の記憶を過去から未来へ伝え、日頃の備えを心がけておくことの重要性を訴えた」と振り返る。

ゲストには県防災アドバイザーの荒木逸治氏を迎えた。2016年の熊本地震発生当時、小学校の校長として避難所の運営にあたっていた荒木氏。忘れてはいけないこととして「自分と周囲を大切にすること。それが防災・減災につながる」と話した。

また、各局が県内各地を取材し、防災活動に取り組む人や団体の思いを届けた。RKKは県内南部に位置する球磨村の語り部活動を紹介。2020年7月の豪雨災害で25人が亡くなった同村では被災の記憶や教訓の継承活動を行っており、松谷浩一村長は「語り部活動を続けることは防災につながる」といった思いなどを語った。NHKは熊本地方気象台を、熊本シティエフエム(熊本市)は防災団体を取材し、それぞれの取り組みを伝えた。

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<荒木逸治氏㊧、進行を務めたエフエム熊本の篠塚祥氏>

1989年から防災特番に取り組むSBSラジオ(静岡放送)は8月27日、ラジオ防災スペシャル『正しい情報で適切な行動を 関東大震災から100年』(12・00―13・00)を生放送し、県内コミュニティFM12局にもネットした。今年は「災害時の情報リテラシー」にフォーカス。災害時に広まる不確かな情報に、いかに惑わされないかを考えた。関東大震災の際に流言が引き金となり朝鮮出身者が虐殺されたが、現代でもSNSなどで流言やフェイクが広まっていることが問題となっている。災害時の情報リテラシーを研究する日本大学の中森広道教授と影島亜美アナウンサーが、災害時に適切な行動をとるための情報の取捨選択についてリスナーとともに考えた。

中森教授は、災害時は人々が不安な気持ちになっているため、通常なら疑うことも受け入れてしまうことを説明。この心理が原因で、自然発生的に広まる流言が必ず発生するという。中森教授は「流言はマスコミや自治体などが"打ち消す"ことをしなければ、尾ひれがついて広まっていく」と語った。番組を担当した廣田昭由報道部専任部長は「ラジオに関わる者として、流言やフェイクニュースを打ち消すことを意識して正しい情報を伝えていきたいと思った」と話す。

また、静岡県の伊東市立宇佐美小学校に伝わる、関東大震災当時の小学生が書いた作文集も取り上げた。そこには、児童が見た津波の恐ろしさが記されており、現在も防災教育に役立てられている。校長室から中継を行い、作文集を通じて津波への備えを呼びかけた。

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『正しい情報で適切な行動を 関東大震災から100年』

ラジオ日本は9月2―3日、横浜市と共催で災害時に役立つ体験型イベント「横浜防災フェア2023」を開催した。今回で47回目となる同イベントは、新型コロナの影響で中止や規模縮小が続いたが、4年ぶりに横浜赤レンガ倉庫のイベント広場で行われ、例年を上回る約7万2,000人が来場した。ヘリコプターは当日の火災緊急出動で参加できなかったが水難救助訓練や、消防艇の放水のデモンストレーションのほか、AEDの使用方法などを学ぶブース、防災関連メーカーの展示など、さまざまな角度から来場者に防災を体験してもらった。

3日には『防災トーク2023~関東大震災100年 今私たちにできる事~』の公開収録を実施。報道部の高倉亨記者が進行を務め、ゲストに東京大学地震研究所の青木陽介准教授と福島県南相馬市出身のタレントの橘和奈さんを迎えた。青木准教授は首都直下型地震の危険性と対策を解説した。東日本大震災当時は小学6年生だったという橘さんは、津波に巻き込まれた経験や避難所での生活を振り返り、「東北のためにできることがあれば少しずつ取り組みたい」と語った。収録の模様は7日に放送した。

ほかにも、毎週月曜の『よしもと囲碁将棋バラエティー「イゴナマ!!」』や毎週金曜の『Happy Voice! from YOKOHAMA』の公開収録を実施した。イベント全体について、横浜市の担当者からは内容や集客などを高く評価されているという。滝沢伸幸営業局次長は来年に向けて「防災・減災の重要性を考えてもらうイベントとしてさらにパワーアップできるよう、準備していきたい」と意気込む。

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<『防災トーク2023~』公開収録の模様>

KNBラジオ(北日本放送)エフエム富山県内コミュニティFM5局は9月7日、特番『富山民放ラジオ7局ネット 防災スペシャル2023 豪雨災害はなぜ起きる?』(9・00―10・55)をKNBのスタジオから生放送した。1997年から毎年放送しており、今回で27回目。今年7月に県内で初めて線状降水帯が観測されたことを受け、「豪雨災害」を考えた。進行はKNBの上野透アナウンサーとエフエム富山の水梨子真穂アナ、ゲストには富山地方気象台気象情報官の大江幸治氏を迎えた。

大江氏は雨や雲が発生する仕組み、「1時間で〇mm」という降水量の表現をイメージしやすく丁寧に説明。また、番組では警戒レベルの意味をあらためて発信すべく、「レベル5では安全な避難ができない」「レベル4で確実に避難し、避難先でレベル5を知ることが正解」というメッセージを強調して伝えた。ディレクターを務めた寺崎英幸ラジオ制作担当部次長は番組について「少しでも興味を持ってもらえるよう、線状降水帯の発生メカニズムと避難のタイミングをわかりやすく伝えるよう工夫した」とコメント。

このほか、エフエム富山やエフエムとなみ(砺波市)のスタジオと結び、アナウンサーやパーソナリティが登場したほか、富山シティエフエム(富山市)の川田知恵美氏は県防災危機管理センターから中継リポートを行った。

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<左から大江氏、水梨子アナ、上野アナ>

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