NBCUがこのほど、NBC全米ネットと傘下ローカル局のテレビ放送を、配信部門ピーコックで丸ごとライブ配信すると発表した。全米のNBC系列ローカル局全210局がこの動きに合意。すでに11月半ばから地域によっては先行して開始されている。全米210局が足並みを揃えるのは11月30日(現地時間)からだ。
ピーコックはすでに一部のNBCスポーツの中継とニュース番組をライブ配信しているが、11月末からはNBCネットワーク全体がピーコックで楽しめるようになる。ローカル局については、ユーザーの居住地区の局のみ視聴可能にするという。
とはいえ、NBCのテレビ放送をそのまま視聴できるようになるのは、ピーコックの上位有料プランである、広告なしのプレミアム・プラス(月額9.99ドル)契約者のみ。この場合、オンデマンドは広告なしだが、NBCのライブ配信はテレビ放送そのままなので、当然広告もそのまま配信される。同じ有料プランでも、月額4.99ドルの安価プラン契約者はこの新サービスの対象外となる。ピーコックの有料契約者数は現在約1,500万人。競合他社に大幅に後れをとっているうえに、その内訳は公表されておらず、ほとんどは月額4.99ドルの廉価プランだと言われている。NBCUとしては、これでプレミアム・プラスの契約者増を促したいという考えのようだ。
今回の動きは、パラマウントによるCBSのライブ配信と同様のもの。パラマウントはストリーミングサービス「CBS All Access」の時代から、CBSローカル局のコンテンツを配信アプリで提供していた。パラマウント+でも、2021年後半からプレミアムプラン(月額はピーコックのプレミアム・プラスと同じ9.99ドル)契約者向けにそのサービスを提供している。NBCUは、「NBCのローカル局は、地域社会に不可欠な存在。(配信は)地元との新たな接点となる」などとコメントしている。
今回のNBC局全体のライブ配信開始をめぐり、米メディアはさまざまな見方をしている。その一つは、値上がり続きのvMVPD(ネット経由でテレビコンテンツを同時配信するサービス)にとって、NBCUのピーコック配信は競合する存在となりうるというもの。パラマウント+も含め、テレビ放送が各局の自社アプリで視聴できるとなれば、vMVPDの解約が進むのは必須だろう。なお、NBCUの親会社であるケーブル会社コムキャストは近年、高いコードカット率に悩まされており、テレビ番組を丸ごと配信すれば、さらにコードカットを進める結果になる。そのため、コムキャストが有料テレビ事業を諦めるのか、などの憶測もみられる。