【審査講評】「バラエティ番組」の名にふさわしい力作そろう(2024年民放連賞テレビバラエティ番組)

影山 貴彦
【審査講評】「バラエティ番組」の名にふさわしい力作そろう(2024年民放連賞テレビバラエティ番組)

821日中央審査【参加/103社=103本】
審査委員長=影山貴彦(同志社女子大学教授)
審査員=たかのてるこ(地球の広報・旅人・エッセイスト)、テリー伊藤(演出家)、ラリー遠田(作家、お笑い評論家)

※下線はグランプリ候補番組


2024年から民放連賞・番組部門の「テレビエンターテインメント番組」が、「テレビバラエティ番組」に変わりました。長らくこのジャンルについて議論が重ねられてきたことは、関係者の方々もよくご存じのことだろうと思います。娯楽性が強く、「面白い」番組をしっかりと評価しようという意図が結実した変化であろうと、私自身捉えています。

今回選出された7番組の多くは、その流れをくむかのように「バラエティ番組」の名にふさわしい力作がそろいました。審査を務めたひとりとして、この上なく嬉しく思っています。最優秀賞に輝いた信越放送の『SBCスペシャル 寅や』をはじめとして、各番組の講評を以下につづります。

最優秀=信越放送/SBCスペシャル 寅や(=写真)
ゲストハウス「寅や」のオーナーである女将の素晴らしい人柄が番組全体を引っ張っていました。視聴前は、女将と訪れる客たちの交流を軸に描いている番組かと想像していましたが、母と息子2人、親子の物語がメインとして構成されていたところが素晴らしかったです。豪放磊落に見えて実は繊細な面も持つ女将・則子さんにお会いしたい、「寅や」に行ってみたいという審査員の声も。作り手が労を厭わず「面白さ」を真摯に追求した秀作。おめでとうございます。
 
優秀=さくらんぼテレビジョン/オイシイものドキュメント 密着!山形人情グルメ
PART4
地元の人気番組であることが十分理解できる仕上がり。PART4まで続いているのも頷けます。地域密着型のグルメ番組でありつつ、「山形色」を強く押し出していないのも地元番組らしいところと言えましょう。全国ネットに同系の人気番組があるだけに、若干の既視感が少し残念ではありましたが、店主さんの人選といい、完成度の高さを讃えたいです。
  
優秀=TBSテレビ/世界ふしぎ発見!レギュラー最終回 38年のありがとう!40000時間
から厳選 世界ふしぎ発見!ベストワン映像 一挙大公開スペシャル!
テレビ放送の歴史に刻まれるレジェンドといっても言い過ぎでない番組に対し、審査員一同から高く評価する声が集まりました。また、単なる「総集編」にとどまっていなかったところも評価に値するところです。38年という歴史を鑑み、「功労賞」あるいは「特別賞」を差し上げたいとの意見もありました。
 
優秀=CBCテレビ/ハートフルワールド特別編
丁寧な取材が印象に残った好番組でした。ただ「総集編」ということもあり、もう少しひとつひとつのエピソードを深く味わいたかった思いが少し残ります。ヒコロヒーさんがVTRを見ながらコメントしていた部分が、優しく的確であったという意見が出た一方で、バラエティ番組というより、ドキュメンタリー番組としての要素が勝っていたように感じられるとの審査員のコメントもありました。
 
優秀=関西テレビ放送/知らないのは主役だけ
ジム・キャリー主演のアメリカ映画『トゥルーマン・ショー』を想起させるようなコンセプトで、ドラマとドッキリを融合させた形で、しっかりと成果が出ていたと思いますし、錦鯉の長谷川雅紀さんを始め出演者の「名演」も光りました。ただ「病気」「臓器売買」を絡めたドッキリに、些か後味の悪さが残ってしまいました。その点が少し残念です。
 
優秀=南海放送/海外クルーを呼んでみた。
コンセプトがとても斬新で、強く興味を惹かれました。地元番組らしく愛媛出身の出演者が数多く並んでいるのも好感を持ちました。海外クルーのセレクトもフィンランドとインドという絶妙さ。人物キャラクターも魅力的に映りました。だからこそ、もう少しプロモーションビデオの制作プロセスをしっかり見たかった気がします。
  
優秀=福岡放送/地元検証バラエティ福岡くん。東福岡高校徹底解剖SP
地元密着番組でありながら、他のエリアの視聴者が見ても魅力的な内容に仕上がっています。部活対抗リレーが出色。「東福岡高校」のPRビデオにともすればなりそうなところを回避できたのは、作り手の上手さでしょう。大田こぞうさんのナレーションも光ります。惜しくも最優秀は逃されましたが、十二分に「面白い」番組でした。

熱のこもった審査会を終えた後も、自然発生的に審査員たちで「これからのテレビ」について意見交換が行われました。難しい時代ですが、テレビだからこそ作れる、テレビならではの番組は必ずあるはずです。この度の7本の番組にも、そんなメッセージが込められていたように思います。ありがとうございました。


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