東京・大阪以外の全国37社の民放AMラジオ局が加盟し、共同で番組制作に取り組んでいる地方民間放送共同制作協議会(火曜会)。その加盟局が制作する番組『録音風物詩』のコンクールの最終審査が9月4日に開催された。今回の審査員は、放送作家の石井彰氏、株式会社地球の歩き方・代表取締役社長の新井邦弘氏、ラジオパーソナリティ・マイクパフォーマーのアンジェリーナ1/3氏の3人が務めた(=冒頭写真、左から順)。
昨年の入賞作品の再放送を除いて、2024年8月から2025年7月までに放送された49番組から最優秀賞に輝いたのは、北海道放送の『地下鉄のさえずり』。国内で唯一ゴムタイヤを採用している札幌の地下鉄の音に注目した作品で、札幌オリンピックに向け地下鉄開業に奮闘した職員の声とともに、「鳥のさえずり」のような独特の走行音を届けた。「鳥のさえずり」の正体を解明するために、レールをハンマーで叩いて音を聴かせるというひと手間や、情報量の適切さと構成面でも高く評価された。
優秀賞には、中国放送の『Hello!黄色いビブス~サインは平和への証~』と南日本放送の『どんぐりピアノ~70年目の音色~』が選ばれた。中国放送は、広島の平和記念公園でボランティアガイドとして活動する一人の少年に着目した作品。「英語」で外国人観光客に被爆体験を伝え、平和を訴える少年に心を動かされたコメントが、多く寄せられた。南日本放送は、鹿児島県霧島市の三体小学校にある古いグランドピアノの音色を届けた作品。戦後に地元住民がどんぐりを集め、植林して得た資金で購入した「どんぐりピアノ」の素材力の高さと、児童数5人という小学校に注目する取材力が好評を得た。
総評では、石井氏が「ナレーションがなくとも、登場人物の声と音で十分に番組はつくれる」とし、「町の中には素敵な音がいっぱいあるので、もっと耳を澄ませて街を歩き、作品づくりにトライしてほしい」とコメント。新井氏は、「聴き手が惹きつけられ、ウェブで検索したくなるような情報量のバランスは非常に難しい」と説明し、コンパクトながらもテクニカルに音の情報を組み込んだ北海道放送のように「せっかくの『録音風物誌』なので、主役の音を軸に作品をつくってほしい」と述べた。今回初めて審査員を務めたアンジェリーナ1/3氏は、「各局の作品を聴いていると旅をしている気分になった」と話し、「音はもっと遊べるもので、もっと楽しめるもの。型にはまらず、ただただ音を楽しんで作ってみるのもよいのではないか」と期待を述べた。
入賞作品は、以下の日程のラジオ番組『録音風物誌』で再放送する。
▷北海道放送:10月13日(月)~10月19日(日)
▷中国放送:10月6日(月)~10月12日(日)
▷南日本放送:9月29日(月)~10月5日(日)