東京・大阪以外の全国37社の民放AMラジオ局が加盟し、共同で番組制作に取り組んでいる地方民間放送共同制作協議会(火曜会)。その加盟局が制作する番組『録音風物誌』のコンクールの最終審査が8月29日に開催された。今回の審査員は、放送作家の石井彰氏、㈱地球の歩き方の新井邦弘・社長、お笑い芸人XXCLUB(チョメチョメクラブ)・広告プランナーの大島育宙(やすおき)氏の3人が務めた(=冒頭写真、左から順)。
昨年の入賞作品の再放送を除いて、2023年8月から24年7月までに放送された46番組から最優秀賞に輝いたのは、南日本放送(MBC)の『ここはふるさと~ゴッタンが奏でる島立ちの唄~』。東シナ海にある鹿児島県の甑島(こしきしま)は、島内に高校がないため、中学卒業後は本土に暮らして高校に通うことになる。「島立ち」を控える親子の声などを交えながら、「ゴッタン」という楽器を奏でながら歌う、島立ちの唄を届けた。地域性に加えて、「ゴッタン」についての説明を最小限にして、思わず検索したくなる点や長めの尺をとっても飽きさせない音楽など、完成度の高さが評価された。
優秀賞には、宮崎放送(MRT)の『靴職人は世界旅行に想いを馳せる』と大分放送(OBS)の『明日へのエール・ミュージックサイレン~平和を願う音』が選ばれた。
MRTの作品で描くのは、宮崎市内で靴修理の専門店を営む夫婦。その主人が靴職人の道を選んだ経緯や、82歳になっても仕事を続ける理由、そして靴に託す想いを紹介した。取材対象者の情報とその物語を軸にした構成を評価するコメントが寄せられた。
OBSは、大分市内の老舗デパートの屋上から毎日3回流れる音楽の音色を、それにまつわる個々人のエピソードとともに伝えた。地域性のある音に"耳"を付けた点や、音の聞き手に着目して制作した点が好評を得た。
総評では、石井氏が「ラジオは情報をもとにリスナーが想像力を働かせて、その物語に気持ちが引き寄せられるメディア。大きさや色、どんな漢字を書くのか、どこに町があるのか――最低限の情報は必ず入れてほしい」と指摘した。新井氏は、「人の喋りの魅力とストーリーに没入できるかが重要で、方言のある地方にアドバンテージがある」と説明。録音風物誌は全国で放送されることから「地場の強みをうまく使えるとよい」と語った。大島氏は、「取材対象への愛着と同時に突き放しも持ってほしい」とコメント。リスナーの注意を引くためには「インタビューの内容が弱ければ、ナレーションで補足することや、新しい音を入れるなど、厳しく編集することが求められる」と述べた。
入賞作品は、以下の日程で『録音風物誌』にて再放送する。
▷大分放送:9月23日(月)~29日(日)
▷宮崎放送:9月30日(月)~10月6日(日)
▷南日本放送:10月7日(月)~13日(日)。