放送日誌 2025年7月

編集広報部

放送界の動きを中心に、行政や海外の動向もあわせ、1カ月の動きを日誌形式で記録します。
*2025年7月分を掲載。


【民放連】
7.2 報道委員会が取りまとめた「取材者等の安全を守るための声明」を公表。SNS等において取材者やスタッフ、出演者個人に対する誹謗中傷やプライバシーに関する人権侵害行為が頻発しているだけでなく、取材現場での取材対象者や関係者などの身体的な危害を加えられる事案も発生している。こうした事案への対策として、会員各社が毅然として法的措置を含む組織的な対応を速やかに実行するとともに被害者に対して心のケアを含めた包括的な支援を行い、個人の尊厳を守るためにあらゆる手段を講じる――との内容

7.3 総務省「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」の下部組織「放送・配信コンテンツ産業戦略検討チーム」の取りまとめ案に対する意見を総務省に提出。ローカル局におけるコンテンツ制作の経営基盤強化の視点が必要としたうえで、▶コンテンツ製作の企画・開発への強力かつ使いやすい支援制度の設計▶ローカル局が独自コンテンツの制作に取り組むためのファイナンスモデルの構築▶限られたリソースでも効率的に権利処理に対応できる仕組みの継続検討▶総務省を主体とする国際見本市やイベントの実施、出展する放送事業者への助成▶海外事業者との契約や紛争解決への支援▶総務省によるコンテンツ投資促進税制の主体的な検討などを求めた。

7.16 ラジオ委員会、「自動車におけるラジオのニーズと必要性」を公表。車載型ハイブリッドラジオの国内での普及と自動車のダッシュボードへのIPラジオの実装に向けた課題解決に取り組む一環として、自動車内におけるラジオの利用実態などを把握するための調査を実施し、これに基づき作成した。

7.17 2025年度第2回臨時総会を開催。理事8人・監事1人の辞任に伴う、連盟役員の補充選任を決定。

7.17 2025年度第3回理事会を開催。▶小山理事(札幌テレビ放送社長)、吉次理事(テレビ東京社長)、林理事(東海テレビ放送社長)を副会長に選定▶総務省「デジタル空間における情報流通の諸課題への対処に関する検討会」中間取りまとめ案に対する意見▶改正放送法の施行に伴う省令改正案等に対する意見▶ミラノ・コルティナオリンピックのJC現地制作体制等▶第73回民間放送全国大会(名古屋)のプログラム等――を承認。

7.17 改正放送法の施行に伴う省令改正案等に対する意見を総務省に提出。同法施行規則の一部改正案等において、テレビ放送に関しては、▶ブロードバンド代替等を経営の選択肢に加えることについて基本的に賛成▶地域限定同時配信を「基幹放送と同等の役務を視聴者に提供するもの」と明確に規定したことはきわめて重要――などの考え方を示した。ラジオ放送に関しては、▶さらなる検討や措置が必要であり、ラジオ事業者の意見を汲み上げて制度整備に反映してほしい▶ラジオ中継局の代替的視聴手段としてradiko等のIPユニキャスト配信の追加――を求めた。

7.22 「デジタル空間における情報流通の諸課題への対処に関する検討会」の中間取りまとめ案に対する意見を総務省に提出。デジタル情報空間の広告エコシステムの現在の状況は、民間放送のビジネスモデルを毀損し、公共的な役割を果たすことの妨げになっているケースが多々あることを指摘し、▶今後もプラットフォーム〔PF〕事業者には継続的なヒアリングが必要▶情報流通プラットフォーム対処法に基づき、総務省がPF事業者に対して適切な措置を執ることが必要▶自主的な取り組みが不十分な場合は、実効性のある制度的対応の検討――などを求めた。

7.29 総務省「放送事業者におけるガバナンス確保に関する検討会」第2回会合に堀木卓也専務理事が出席し、人権尊重、コンプライアンス徹底、ガバナンス確保の取り組み状況を説明。

7.29 「民間放送におけるビジネスと人権対応ガイドブック」(2025年6月13日公表)の説明会をウェブ形式で開催。会員各社の役職員から1,000人を超える参加申し込みがあった。人権尊重の取り組み事例をTBSテレビ・南海放送の2社が紹介、同ガイドブックの作成に協力したOURS小磯社会保険労務士法人代表社員の小磯優子氏が活用方法等を講演した。

―― 民放連研究所、「ラジオ番組エンゲージメントと広告効果に関する研究調査報告」を公表。2023年に行った「ラジオの特性・広告効果に関する研究」の結果を受けて、番組を聴いているリスナーに対して調査を行い、番組へのエンゲージメントと広告効果の関係を検証・分析した。

―― 会員社(衛星系2社除く、計205社)の2024年度決算状況をまとめる。地上波の売上高総額は2兆1,833億円で前年比1.9%増、経常利益は1,265億円で前年比11.7%増の増収増益。衛星系は売上高が1,897億円で前年比0.4%増、経常利益が208億円で前年比11.9%増の増収増益となった。地上波の売上高の内訳をみると、ラジオ放送事業収入が1,013億円で前年比0.5%減、テレビ放送事業収入は1兆7,518億円で前年比1.4%増、その他事業収入は5.0%増。

【放送・マスメディア】
7.3 フジテレビジョン、同社およびフジ・メディア・ホールディングス〔FMH〕における再生・改革の取り組みの進捗状況を総務省に報告。その旨を民放連・早河洋会長に同日報告した。

7.6 フジテレビジョン、『検証 フジテレビ問題 ~反省と再生・改革~』を10時~11時45分に放送。同局で発生した人権、コンプライアンスに関する問題への「対応」についてどこで判断を誤り、その一因にもなった組織風土はどのようなものだったのかを証言をもとに検証。また、再生・改革の取り組みの進捗についても現場の取材を通して伝えた。

7.10 フジテレビジョンとFMH、ガバナンス体制・人権尊重・コンプライアンスの強化等への対応策として同局の組織再編を実施。「コーポレート本部」を新設し、「コンテンツ戦略本部」「スタジオ戦略本部」の3本部制に。これまでのアナウンス室を編成・制作部門から独立させてコーポレート本部に「アナウンス局」を設置。

7.11 BPO・放送倫理検証委員会、TBSテレビ『熱狂マニアさん!』(2024年10月19日放送)に対して、「放送倫理上問題あり」との見解を公表。番組と広告の識別に対する認識や検討が甘いなどとし、民放連放送基準第92項(広告の取り扱い)および留意事項に反しているとした。

7.11 オンラインカジノで2024年9月~2025年5月の期間に約1億円をかけたとして、検察庁がフジテレビの元担当部長を常習賭博の疑いで起訴。同被告は先月、警視庁に逮捕されていた。また、同局元アナウンサーもオンラインカジノで640万円かけたとして、賭博の罪で略式起訴された。

7.20 参議院議員選挙の投開票日。民放各社は放送やウェブで積極的に報道。

7.24 第41回ATP賞のグランプリに『NHKスペシャル 法医学者たちの告白』(ドキュメンタリー部門最優秀賞)が決まる。民放からは『プラチナイト木曜ドラマ クラスメイトの女子、全員好きでした』(製作会社:テレパック/放送:読売テレビ放送)が最優秀賞を受賞。

【行政・海外】
<行政等>
7.1 総務省が組織改編を行い、情報流通行政局の地上放送課と衛星・地域放送課を廃止し、「放送業務課」と「放送施設整備促進課」を新設放送業務課に「配信サービス事業室」が置かれ、放送政策課には「新事業領域創造推進室」が置かれた。

<海外>
7.1 米CBSの報道番組『60ミニッツ』の報道内容をめぐりドナルド・トランプ大統領が親会社のパラマウント・グローバルに損害賠償を求めていた訴訟が和解。パラマウントは、トランプ大統領に1,600万㌦(約23億5,000万円)を支払う。

7.24 米ドナルド・トランプ大統領、公共放送局〔PBS、NPR〕への助成金を打ち切る内容を含む「2025年歳出撤回法案(Rescissions Act of 2025)」に署名。米連邦上院議会が同17日に可決し、翌18日に下院で可決されていた。大統領の署名で正式に法律として成立し、2025年10月1日に施行される。

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