放送界の動きを中心に、行政や海外の動向もあわせ、1カ月の動きを日誌形式で記録します。
*2023年5月分を掲載。
【民放連】
5.19 放送基準審議会、「放送人基礎研修(民放連とNHK共催)」をオンライン形式で開催。2日間の同一プログラムを27日までに2回実施。民放とNHKから入社間もない若手社員を中心に第1回は146人、第2回は142人が参加した。民放連、NHK、BPOの担当者が放送倫理、放送の自主・自律の基礎的な講義を行ったほか、フジテレビとテレビ朝日から取材・報道活動とバラエティ番組における留意事項を説明。「報道と人権」をテーマに、2001年に大阪で起きた池田小児童殺傷事件で娘を亡くした遺族が体験談を語った。
5.24 2022年度第1回理事会を開催。主な議題は、▷認定放送持株会社体制への移行に伴う「新潟放送」の入会▷2022年度民放連事業報告・決算▷フルIP化を見据えたカーラジオへの対応--など。
5.29 民放連とNHK、6回目の「視聴覚障害者等向け放送に関する放送事業者と障害者団体の意見交換会」をNHK放送センターで開く。放送局側は▷AIを利用した生字幕システムの段階的な導入▷ドラマなどで解説放送版のキャッチアップ配信の実施▷ニュース・情報番組での手話付与――など字幕・解説・手話の取り組みの最新動向を紹介。障害者団体からはローカル局の取り組み状況を問う質問があった。
【放送・マスメディア】
5.14 ジャニーズ事務所の藤島ジュリー景子社長、公式サイトで「故ジャニー喜多川による性加害問題について当社の見解と対応」を公開し謝罪。
5.16 NHK、15日放送の『ニュースウォッチ9』の新型コロナウイルス禍を振り返る1分間の映像に、新型コロナワクチン接種後に亡くなったことをコロナ感染で亡くなったかのような印象を与える伝え方があったとして同番組内で謝罪。
5.17 日本新聞協会、「生成AIによる報道コンテンツ利用をめぐる見解」を公表。「AIによる報道コンテンツの無断・無秩序な利用が既成事実化すれば、報道機関の経営に大きな打撃を与え、良質なニュースコンテンツを提供し続けることが困難になる」として、法制度面での適切な対応を望んだ。
5.19 G7サミットが広島市で開幕(~21日)。広島の放送各局は自社制作番組と全国ネット番組を通じて、その動向を丹念に伝える(5.20ウクライナのゼレンスキー大統領が会合出席のため来日)。
5.19 日本新聞協会メディア開発委員会、総務省の「公共放送ワーキンググループ(WG)」にNHKのインターネット活用業務の検討の進め方に対する意見を提出。言論の多様性やメディアの多元性への十分な吟味がないまま「本来(必須)業務化」ありきの議論をしていると主張。「NHKのネット業務拡大が情報空間の健全性確保に不可欠」との考え方にも強い違和感があるとした。また、民主主義を維持するためのメディアの多元性の重要性や議論のあり方、公正な競争の確保など10項目の質問を示し、回答を求めた。
5.30 NHKが「インターネット活用業務実施基準」で認められていないBS番組のネット同時配信に向けた設備費用として約9億円を2023年度予算に計上していたことが明らかに。2022年12月に理事会を経ずに稟議のみで決定していた。計上された予算は名目を修正し実施基準に違反しないよう改められた。
5.30 朝日新聞出版が発行する「週刊朝日」(1922年創刊)が同日発行の6月9日で休刊。
── 在京の認定放送持株会社5社の2023年3月期決算が出揃う。総売上高は1兆7,732億7,900万円と、前期(22年3月期)に比べ371億8,200万円(2.1%)増加。TVerをはじめとする動画配信サービス向けの広告やイベント事業などが貢献した一方、地上波テレビ広告の回復は遅れている。
【行政・海外】
<行政等>
5.17 改正著作権法が参院本会議で可決・成立。権利者が不明で利用可否の意思確認ができない場合、文化庁長官が指定する管理団体に補償金を支払うことで著作物を一時的に利用できるようになる。海賊版被害の損害賠償額の算定方式を見直し、増額できることも盛り込まれた(5月26日公布)。
5.19 総務省「デジタル時代の放送制度の在り方に関する検討会」、第18回会合で衛星放送の短期・中期的課題をテーマに意見交換。衛星基幹放送におけるマスメディア集中排除原則の緩和の検討を求める意見が相次ぐ。
5.25 気象庁、「線状降水帯」が発生し大雨災害の危険度が急激に高まったことをいち早く伝えるための予測技術を活用して、従来より最大30分程度前倒しで発表する新たな運用を開始。
5.26 総務省「公共放送ワーキンググループ(WG)」、第8回会合でNHKからインターネット活用業務を必須業務化した場合の考え方や業務範囲についてヒアリングを行う。NHKの井上樹彦副会長は具体的な業務範囲として、①放送の同時配信・見逃し、②報道サイト(「放送」と同一の情報内容の多元提供)、③「放送と同様の効用が、異なる態様」で実現されるもの――と説明。視聴者の負担のあり方については、「公平性」「同等性」を重視するとして、スマートフォンを保有しただけで受信料を求める考えはないとした。構成員からは、▷「放送と同様の効用」の定義があいまい▷理解増進情報と同様に、なし崩し的な拡大の懸念がある▷ネットサービスの利用者に課金するならば料金体系を説明すべき――などの発言があった。
5.26 放送法と電波法の一部改正が参院本会議で可決・成立。複数の放送対象地域の基幹放送事業者が同一の番組を同時に放送することが可能に。複数の特定地上基幹放送事業者が中継局設備を共同利用できるようになる(6月2日公布、1年以内に施行される見込み)。
<海外>
5.2 全米脚本家組合〔WGA〕が15年ぶりのストライキに突入。テレビ局、映画会社、配信プラットフォームの制作現場には早くも影響が及んでいる。労働条件の改善をめぐるWGAと映画テレビ製作者協会〔AMPTP〕の交渉が難航したため。背景にはAI(人工知能)の導入によるライター側の危機感もある。
5.22 米国の投資会社スタンダード・ゼネラルによる、テレビ局保有会社ラグナの買収が白紙に。
5.22 米バイデン大統領、空席だった5人目のFCC(連邦通信委員会)委員に弁護士のアナ・ゴメス氏を指名。正式な就任までは議会での承認手続きが必要で2021年10月に指名されたギジ・ソーン氏は2022年3月に指名を辞退した。
5.23 米フォード・モーター社、2024年型のフォードとリンカーンの電気自動車(EV)すべてにAMラジオチューナーを搭載すると発表。EVのモーターが発する電磁波がAM波を妨害し、雑音を発するとしてテスタなど8社が現行のEV車からAMチューナーを搭載していなかった。これに対して、AMラジオ業界やNAB(全米放送事業者連盟)、行政が災害など緊急対応時の役割から警鐘を鳴らしていた。